アルプス
羊たちがこちらを見ている
対岸
羊たちの群れ
曇天の雲間からさしこむ光
やがて青空より降り立つ草原の羊飼い
広大なアルプス
雪解けまだ白く
ひろがる風景
彩る光
小川の やすらぎ
憩いの せせらぎ
切り取られた時間
羊飼いの背後
晴天ひろがる輪
その端っこで
まだ密かに雷鳴とどろく静かな暗雲
体に秘めて
羊飼いがこちらを見ている
広大なアルプス
緑
ふきわたる風
一瞬の寒さの内に太陽があたためる
羊たちがこちらを見ている
微動だにしない
いつしかその静寂に飛び込んでしまおうかと
指先
震える
のばす
鏡面にはじかれる
簡単に行かせてくれない
足もとの水が靴にしみこむ
引き返して
暗黒の雲の海へ
飛び込まねばならない
いずれまた来ると
虹かかる微笑み
羊飼いのくちびる
あまりにも美しく
透きとおる太陽の光
振り返ると
暗闇たちこめる雲海
身を投じて
堕ちる星
いつかの星
誰かの流星
羊たちと
羊飼いが
今日も見上げる
アルプスの空




