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嗚呼、愛しの北京飯店  作者: 稲田心楽
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4

 

「昨日も酢の物作ったよ」


「どんなの?」


「きゅうりとワカメとかまぼこ」


「かまぼこ? 珍しいわね」



 本当は竹輪で作りたかったが、かまぼこが余っていたから使ってみた。



「竹輪もかまぼこも大差ないわ。ピクルスもそうだけど、お酢にハマってる感じね」


「口の中がサッパリするじゃない?」


「うん。それがいいの?」


「リセットされるような気がして。食欲も湧く感じがして」



 お酢には食欲を増進する作用がある。酸味が、味覚、嗅覚を刺激して、食欲をコントロールしている脳の摂食中枢に働きかれるようだ。そして、胃液の分泌を促し消化酵素の働きも活発にすると言われている。食欲がない時は、お酢を使った料理で食欲を増し、消化吸収も良くなるので最適と言える。あと、体重のコントロールを正常に保ち、体内の老廃物や有毒物質を取り除くのを助けると言われている。



「私も作るわ。良い事尽くしだもん」


「君の作る酢の物がいい。自分で作ると美味しいんだけど、美味しくないというか」


「分かるわ。今度、交換しましょうよ」


「酢の物トレード?」


「そうそう。面白そうだし」


「そうだね。それいいかも」


「お待たせしました。冷やし坦々麺と、竹そうめん胡麻ダレつゆです」



 お酢料理で盛り上がっていると、お待ちかねのメインディッシュが目の前に置かれた。彼女の前には冷やし坦々麺、私の前には竹そうめん胡麻ダレつゆである。



 冷やし坦々麺──キンキンに冷えた卵麺の上に、ひき肉味噌と白髪ネギ、茹でたチンゲンサイ、そして、辣油の赤がとても良い色合いで食欲をそそる一品。何故か、溶き卵のスープが添えられている。



 竹そうめん胡麻ダレつゆ──割った青竹を器がわりにして、クラッシュした氷が散りばめられている。その上にとても美しい絹のようなそうめんが一口サイズに丸めて盛られている。つゆの器もこれまた竹を使っていて、白いつゆの上に円を描くように辣油がかかっている。薬味は、万能ネギ、オニオンチップ、ミョウガ、錦糸卵である。これまた熱々の溶き卵スープが添えられている。



「見た目からして凄いわね」


「うん。もはや和の極みじゃない?」


「ほんと。良い旅館の夕食みたい」


「それも、凄く美味しいそうだよね」


「うん、食べる前からよだれが出ちゃうわ」



 彼女も同じ疑問を抱いたかどうかが知りたくて聞いてみた。



「あのさ、これってサービス?」


「私も思った。注文したかなって」



 どうやら、彼女も同じ事を思っていた。単品で注文したにしては小さい気がするこのスープ──サービスにしては、超嬉しいサイズである。



「サービスだと思うけど、これも美味しそうね」


「こんなふわふわの溶き卵って見た事がないよ」



 私は、溶き卵のスープから食べた。



「美味いっ! 何て優しい味だ」


「ほんとだ。溶き卵が口の中で溶けたわ」



 散りばめられた三つ葉が良いアクセントなっている。



「飲む茶碗蒸しみたいだ」


「あなた、まさにそれよ。飲む茶碗蒸しだわ」



 ここは中華料理を出す店である。そのはずなんだけれど、ハイクオリティな和のテイストに完全に舌を支配されてしまった。

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