リモート飲み2
「マジか。よかったな」
「お前のおかげだよ。あの時にロードバイクの話しをしてくれてさ」
久々に離婚した彼とリモート飲みをしている。たまにSNSのDMで連絡を取り合っていたが、こうして顔を見て話すのは、1回目のリモート飲み以来だ。
「今の時代はいいよな。俺達の若い時代じゃあり得ない」
「先ずスマホがなかったよな。ガラケーでメールぐらいか」
あれからロードバイクを買って、休みの日は走りに行っているらしい。SNS等で、同じ趣味の人々が集まるページを見つけて、この間オフ会に参加したらしい。
「まぁ、リモートでのオフ会だったけどさ。これがまた楽しいのよ」
「同じ趣味だしな。話しも合うだろう」
「そうそう。お前もどうだ?」
「ロードバイクか?」
「一緒に遠出しようぜ。いい汗かけるしな」
確か、15万円ほどかかると言っていた事を思い出した。ロードスーツやヘルメット、その他小物を入れたらかなりの額になるだろうし、そもそも盛り上がっている彼には申し訳ないが、全く興味がない。いい汗も仕事で沢山かいているし必要ない。
「興味ない」
「はっきり言っちゃった。気持ち良いぐらい」
「少しだけ興味の持てる事を見つけたんだ」
「何? 野球?」
「何で野球なんだよ」
「お前、野球好きじゃん」
「好きだけど、違うよ」
そう言えば、野球が好きだった事を思い出した。最近、プロ野球もほとんど見ていない。好きだった事を思い出すようでは、好きではなかったという事なのかもしれない。
「その少しだけ興味あるって何だよ?」
「……料理」
「料理? 料理って、あの?」
「あのって何だよ。ほんのちょっとだけどな」
私は自分で漬け込んだザワークラウトの瓶を見せた。
「何それ?」
「ザワークラウトだよ。知らないのか?」
「知る訳ないだろう。サワークリームオニオンのポテチは好きだけどな」
画面の向こうで、彼はサワークリームオニオン味のポテチを食べていた。
ザワークラウト──ドイツの漬物らしい。日本では『酢キャベツ』と表記される事もある。セロリのピクルスを教えてもらったが、キャベツが余っていたので、セロリの代用として作った。したがって、本場のそれではなく、所謂『なんちゃってザワークラウト』である。
「お前、らっきょうとか好きだろ?」
「好きだよ。カレー屋に行った時、サービスのらっきょうを半分以上食べた事ある」
「各テーブルに置いてある?」
「全部食えるぜ。遠慮しただけだ」
「それなら、こいつは最高だと思うよ」
「その、サワークリーム?」
「ザワークラウトな」
北京飯店のテツ君からもらったレシピ通りに作ったら、本当に美味しく出来た。テツ君曰く、瓶の除菌を忘れずにという事だった。よく分からかったが、言われた通りにした。
「話しを聞いてると、面倒くさい感じだな。とりあえず、瓶とかないし」
「いや、買えよ。そこそこ密閉出来るタイプのな」
「何処に売ってんだ?」
「ネットとか、雑貨屋にあるよ」
「お前、作ってくれよ。家に持ってきてくれ」
何故だか無性に食べてもらいたくなった。美味しいと言ってくれるかは分からないが──。
「近いうちに持っていくよ」
「マジか。冗談のつもりだったんだが」
とりあえず、あと瓶を二つ購入しよう。彼女にも是非食べてもらいたいから。




