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嗚呼、愛しの北京飯店  作者: 稲田心楽
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2

 

「好評ならメニューに加えようかと大将もおっしゃってまして」


「とり天、実は聞いた事はあるけど馴染みがなくて」


「確かに。最近、うどん、蕎麦屋さんでは見かける事多いです。味見してみます?」


「いいんですかっ!」


「いいですよ。ご意見聞きたいし」



 とり天──唐揚げとの決定的な違いは衣である。卵、冷水、薄力粉、片栗粉を入れて衣を作る。片栗粉を入れる事でサクサクとした食感になるらしい。



 私はテツ君の調理する姿を見ながら、以前の北京飯店との違いを探していた。大きく変わった所は見受けられない。電話注文がタブレットに変わったのと、デリバリー専用の容器が大量に積み上げられている事ぐらいか──。



 容器も様々な大きさがあった。当然、ご飯もの、麺類、一品類で容器も違う。さらに、メインになりつつあるざる蕎麦も、つゆの容器が別途必要だ。中華屋の出前のメインがざる蕎麦なんて、全国でもそうないだろう。いや、一件もないかもしれない。それだけでも忙しいはずなのに、とり天までメニューに加えようとしている。これは大将が蕎麦屋を出して、テツ君がこの北京飯店の大将になる日もそんな遠い未来ではないかもしれない。



「すいません。とり天です」


「ありがとうございます」


 餃子のタレを入れるお皿にゴロンとしたとり天が一つ盛られていた。



「ちょっとすいませんね」



 テツ君は、上から茶色の液体をかけてくれた。



「ざる蕎麦のつゆです。お召し上がりください」



 見るからに熱そうだ。唐揚げのようにこんがりきつね色ではない。天ぷらの色というか、白っぽい感じだ。私は熱々なのは分かっているが、拳半個ぐらいの大きさのとり天を口の中に放り込んだ。



「あっ熱っ! でも、美味い!」



 しょうががほんのり効いていて、麺つゆとの相性も抜群である。表面もカリッと仕上がっていて、高級な天ぷらを食べているようだ。



「どうですか?」


「最高です。唐揚げとはまた別物だけど、しょうがが効いていて何個でも食べらそうです」


「良かったです。とり天単品でお店にも出そうかと」


「それは楽しみです。どれぐらいのお値段で?」



 テツ君が少し言いにくそうにしているように見えた。



「大将が値段を決めるんですが、一つ60円ぐらいですかね」



 また馬鹿げた値段をぶちまけている。60円って、私が子供の頃のコロッケの値段ではないか。今でも、何処かの下町ではそれぐらいの値段で売られているか、あるいはもっと安いかもしれないが、昭和の値段設定である事は間違いない。素人だが、細部にまで仕事が施されているように感じるこのとり天が駄菓子価格とは──。



「キリが悪いから、大将だと50円にするかもですが」


「いや、ちょっと安過ぎかと……」



 このとり天、五つ食べられる自信がない。それぐらいの大きさだ。仮に、五つ注文で250円という事になる。とり天定食としてメニュー入れたら、ワンコイン設定にするかもしれない。


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