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嗚呼、愛しの北京飯店  作者: 稲田心楽
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ハンバーグの魅力

 

 休日なんてものはあっという間に過ぎ去る。今日からまた一週間が始まる訳だが、デリバリーシステムを導入した北京飯店がどんな感じになっているのか楽しみで、それほど憂鬱な月曜日でもない。あれから、彼女とデザートのケーキを食べて、土曜日の昼までまったりと過ごした。また、上海楼にも顔を出そうという話しになり、今週末に食べに行く事になった。北京飯店の近況も教えてくれと若き大将からも言われていたし、あそこの中華も堪能したい──。



 午前の仕事を汗だくになりながらも無事に終えて、北京飯店に向かった。



『ん? これは……』



 入り口の扉に赤いステッカーが貼ってある。おそらく、宅配サービス会社のものだろう。



「いらっしゃい!」



 今日も一番乗りだ──厨房には赤いバンダナを巻いたテツ君が、タブレットを眺めていた。



「すいません。何しましょ?」



 私はいつものように、何を注文するか決まっているのにメニュー表を手に取って迷っているフリをした。最近、この流れに全く意味がないと感じはじめていて、やめようと思っていたが、いつもの癖でメニュー表を取ってしまった。



 今日はずっと気になっていた“あれ”を注文しようと決めていた。



「ハンバーグ定食お願いします」


「はいよ。ハンバーグですね。チーズと目玉焼き、その両方がありますが?」



 メニュー表には書かれていない。想定外の事で戸惑ってしまった。



「両方でも値段は同じですけど」



 値段が同じである事をサラッと言っているが、異常な事である。普通は100円増しとかそんな感じじゃないだろうか──。



「それじゃ、両方で」


「はいよっ! ハンバーグですっ!」


「はいよ」



 奥から大将の声が聞こえた。おそらく、ざる蕎麦の段取りに追われているんだろう。テツ君はタブレットを専用の台に置いて調理を始めていた。そう言えば、電話が鳴らない。おそらく、このタブレットで全てを行うんだろう。まだまだ若いテツ君なら朝飯前だろうが、大将にはちょっとハードルが高い気がした。



「大将! 前川さん、ざる三人前す」


「はいよ。サービスでとり天付けといてくれ。三人前だから、六つぐらいでいいだろう」


「はいよ」



 “とり天”というワードが出た。私はすかさずメニュー表で確認したが何処にも見当たらない。また、新たなメニューだろうか──。私は思い切ってテツ君に聞いてみた。



「とり天って?」


「大将のアイデアなんです。普通の天ぷらは材料を新たに仕入れないといけないから、テストとして鶏を使おうと」


「中華屋さんだから鶏は絶対あるもんね」


「うちの鶏は結構こだわってまして」



 北京飯店の鶏は“朝引き鶏”と言って、早朝に処理をする鶏を使用しているとの事。一般的に流通している鶏肉が全て朝引きで処理されているとは限らないらしい。鶏は他の肉類と比べて水分が多いらしく、痛むのも早いそうだ。だからこそ、朝引きにこだわっているとテツ君は話してくれた。



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