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嗚呼、愛しの北京飯店  作者: 稲田心楽
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黄金タッグ 餃子と炒飯

 

 土曜日と日曜日は、彼女も私も休日で毎週土曜日に必ず会っている。このひとときが私にとって、私の人生にとって、かけがえのない時間となっている。



 何か特別な事をしている訳ではない──特別な日は特別な事をしようとするが、ただ普通に会って、買い物したり、ご飯食べたり、おしゃべりしたりと、ごくごく普通の時間を過ごしている。とても穏やかで、このままずっとこんな風に過ごせたらと会う度に思う。



「お腹空いたね」


「うん。それじゃ北京飯店に行きますか」


「あなたのお気に入りのお店ね。どんなところだろう」


「初見だと、ちょっと引くかもしれないけど」


「そうなの? どんなだろう」



 彼女は一体どんな想像をしているのだろうか──何処にでもある町中華なのだが、あの外見は女性からすると、きっと悪評だろう。だが、店内はとても清潔で、女性が気にするであろうトイレも綺麗だ。何だったら、トイレが一番綺麗で、不自然に感じるぐらいだ。トイレの綺麗なお店って、男性の私からしてもまた来てみたいと思える。飲食系で働いた経験はないが、きっとそういうマニュアルが存在するに違いない。



「人は見かけによらないみたいなお店だよ」


「あなたみたいに?」


「どういう意味だよ」



 助手席で笑う彼女の横顔はとてもチャーミングで、とても美しい。



「最初、何て声掛けてきたか覚えてる?」



 鮮明に覚えているが、何かしゃくだから忘れたフリをした。



「最初? 忘れたかな」


「忘れたんだ。結構インパクトあったんだけど」



 彼女は少し残念そうな顔をして下を向いた。



「いやいや、あれだろ? 1500円ぐらいのお会計で、20000円だしてさ」


「覚えてるじゃん」


「すいません。見惚れてしまってだっけ?」


「そうそう。何で忘れたフリしたの?」


「何かそんな気分だった」


「意地悪したくなったんだ」



 彼女が働いていたコンビニには、毎朝コーヒーと菓子パンを買うのに必ず寄っていた。レジを打つ彼女を初めて見た時は、何か雷にでも打たれたような衝撃を受けたのを覚えている。女神と言えば大袈裟かもしれないが、私にとっては言い過ぎではないぐらいだ。



「軽い人だなって思ったわ」


「そうなんだ。初耳なんだけど」


「見惚れてしまってとか普通言わなくない?」


「心の声だよ。ついポロッと出てしまった」



 肩まで伸びた黒髪からいつもの彼女の香りが漂う。どういうタイプかと言えば、所謂『美魔女』と言われる方々に属するだろう。特にセクシーな格好をしている訳でもない。今日も白のパーカーに、スキニータイプのデニムである。それなのに、この尋常じゃないほどの色気はなんなのか──。



「中華屋さんってあまり行かない。最後に言ったのがいつだったか分からないぐらい」


「子供の頃に行った事あるだろ?」


「うん。子供の頃、近くにあったわ。家族で月に一回は行ってた記憶がある」



 やはり、どの人にも町中華の思い出はあるようだ。子供の頃によく行った駄菓子屋のような感覚なのかもしれない。



「車さ、いつもピカピカだよね」


「君に会う時は必ず洗車してるんだよ」


「そうなの? 何か嬉しい。私、この車好きなんだ。小さくて可愛いから」


「気に入ってもらえて嬉しいよ」



 私の愛車は、白のミニバン。軽自動車で、今年初めての車検が12月にある。あと、9ヶ月ぐらいあるが、車検の費用も余分に貯金しておかなければならない。



「着いたよ」


「えっ? ここ?」


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