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嗚呼、愛しの北京飯店  作者: 稲田心楽
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2

 

 気のせいだろうか──昨日の今日だが、テツ君の立ち振る舞いが板に付いているように見えた。そう、まるで上海楼の若大将のように。



「お客さん、実は新メニューがありましてね。さっきちょっと作ったんですが、味見してみます?」



 テツ君が誰かと話しをしている。私以外にお客さんはいないはずなのに──。



「味見しません?」


「えっ? 私ですか?」


「はい。どうですか?」



 まさか自分に話し掛けてくれているとは露程ほども思っていなかったから、とても驚いたと同時に、心の中で大きな花火が上がるほど嬉しかった。



「実はこれ何ですけどね」



 小さな丸型のカフェバスケットが前に置かれた。



「フライドポテト?」


「そうです。居酒屋っぽいですけど。ちょっとこだわってまして」




 きたあかりのフライドポテト──テツ君曰く、油で揚げずに中華鍋でカリッと焼く感じで作るらしい。私もフライドポテトが好きで、冷凍のポテトを家でたまに揚げたりする時があるが、まず油で揚げるという作業自体がなんとなく億劫で出来れば避けたい。まわりに油が飛び散ったりして掃除も大変だし、油の処理も気を使う。とくに夏場などは、調理中に気分が悪くなったりもしばしば。揚げたては美味しいし、塩加減も自分で調節できて最高だけれど、食べたくなったら、ついつい某ハンバーガーチェーン店のフライドポテトを買ったりする。



「自宅でも出来そうですか?」


「簡単ですよ。後でレシピ渡しますよ」


「あっ、ありがとうございます」


「いえいえ。それは少し前なんで冷めてますけど」


「美味しそうです。遠慮なく頂きます」



 白い天ぷら敷紙に上に、こんがりきつね色のきたあかりが五つ盛られている。みじん切りのパセリがふりかけられており、茶色一色のそれに良いアクセントとなっていた。



 私は添えられていた爪楊枝を突き刺して食べた。



『何じゃこれっ! めちゃくちゃ美味い!」



 確かに冷めていたが、そんな事は全く気にならないぐらい美味い。じゃがいもを食べている感が半端ない。皮付きであるのも関係しているのか、大地の味わいがダイレクトに五臓六腑に染み渡る気がした。



『止まらない……』



 あっという間に平らげてしまった。本当に秒だった。これをフライパンだけで作れるとか驚きでしかない。私は新しく壁に貼られている黄色い紙に目がいった。



『……めちゃくちゃやで』



 昨日見たお笑いの番組の影響だろうか──心の中で思い切りツッコミを入れていた。しかも関西弁で。黄色い紙には“きたあかりフライドポテト”と記されていて、値段が180円だった。



『180円とか……。100円台のメニュー初めて見た』



 今まで食べたフライドポテトは一体何だったんだと思うほどなのに、180円とか流石にあり得ない。北京飯店の事だから、注文したらこの量で済む訳がない。おそらく山盛りで出してくるはずだ。



 私は思った──もうハンバーガーショップに行く必要もなくなったと。食べたくなったら、北京飯店に来るか、自宅で作ればいいのだから。












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