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嗚呼、愛しの北京飯店  作者: 稲田心楽
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 汗が滲む中、牛丼と卵とじスープを堪能している。牛肉の薄切り肉の量がまたおかしい。いや、狂っていると言ってほうがいいのか──。牛丼というからには牛肉が主役でなければならないが、そうではないお店も沢山ある。他の食材で量増ししているところなんてザラである。北京飯店の牛丼も野菜は入っているが、申し訳ない程度である。



 あくまでも主役は牛肉──『どうもすいません』と謝りたくなるほどの量で、いつも思う事ではあるが、卵とじスープ付きで750円で大丈夫なのかと言いたくなる。さらに、あまり肉の良し悪しは分からない私でも、肉の柔らかさと甘みのある脂身は良い肉だと分かるぐらいだ。実際は、そうでもない肉に一仕事、二仕事加えてあるのかもしれない。いずれにしろ、この牛丼はここでしか味わえない最高のものだろう。



「はいよ。橋本さんね。いつもありがとう。今度からね、宅配サービスに委託する事になっちゃって」



 出前の電話を大将が応対している。



「そうなんだよ。うちのテツもそろそろ厨房任そうと思ってね。だから、いつもより早くお届けできるかもしれないよ」



 それはもう確実にそうだろう。今までは二人で全てこなしていた訳だから。テツ君も料理に集中できるだろうし、これから様々なシュチュエーションに対応する為の修業もしないといけないだろう。



 私の自炊レベルの話しではあるが、例えば卵焼き一つとってみてもそうだが、毎回同じ味に仕上げる難しさ、所謂、“再現性”というやつがプロの技だと勝手に思っている。味が薄かったり、濃かったりして全然安定しないのがやはり素人なんだろうなと。そう言えば、母が作ってくれたカレーの味はいつも同じように感じていたが、母の家事はある意味プロレベルであったいう事なんだろうか──。



 私はネギまみれのスープも最後の一滴まで飲み干した。1000円ぐらい払いたいほどの満足度である。単品の卵スープの値段は350円だから、スープ付きの牛丼750円というのは本当にお徳というか、ぶっ壊れている。



 お腹も満腹になったし、次回もテツ君の料理を食べられると考えただけで楽しみで仕方ない。明日もまた同じ時間に来店予定だ。明日は、忘れていたけども絶対に注文しないといけないほど王道のアレを食べたいと思う──。

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