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それはさておき、上海楼伝言ゲームの件、今日は無理としても先延ばしにしていつか大将に伝える事が出来るのだろうか──。この先、フレンドリーに話している絵が全く浮かばない。いつもの悪い癖が発動してしまって情けない話しである。とにかく考え過ぎてしまう事が私の悪い癖。例えば、上海楼の話しを何気に出来たとして、大将は『この野郎、割と浮気者だな』とか、『他所の店の話しなんかするんじゃないよ』と思われるんじゃないかと心配になる。もちろん、大将はそんな器の小さな人ではない事は知っているんだけれど、ネガティブな思考をどうしても拭い去る事が出来ない。彼女と一緒に行って彼女に言ってもらおうかと考えたが、それはそれで頼りない男を露呈してしまう事になり、ただでさえ高くない株なのに一気に暴落の可能性大である。
『考えるのはよそう……』
午後からもこの灼熱の太陽の下、仕事が山積みである。パワーを付けないと乗り切る事が出来ない。今は、味噌バターチャーシューの事だけを考えよう。
「味噌にバターか……』
もちろん、存在は知っていた。だが、想像出来ない。ジャンクなイメージだけど、美味いから定番としてメニューにある訳で。じゃがバターなら食べた事はあるが、味噌汁にバターを入れた事はない。
明太子スパゲティーは好きだけれど、明太子バタースパゲティーはあまり好きではない。そう考えると、味噌チャーシューにしておくべきだったか──。
「はいよ。味噌チャーシューね」
カウンターの前から味噌チャーシュー麺を受け取った。いつものラーメン鉢だが、とてつもなく重く感じた。
「後ろすいません。バターです」
「あっ、ありがとうございます」
テツ君がバターを別で持ってきてくれた。丁度、バターをキャンセルしようと思っていたところだ。
「あっあの……」
「はいよ」
「なっ何でもないです」
バターが乗っている餃子ダレのお皿をテツ君に渡そうとしたが何も言えなかった。いよいよ、本格的にやばい状態である。告白するタイミングを先延ばしにしすぎて、とうとう卒業式まで何も言えなかった恋のような感覚だろうか──。いや、そんな良いものではない。何故なら、あの頃よりも十分す過ぎるほど大人なのだから。
私は立ち込める湯気が凄まじいラーメン鉢の具材をチェックした。主役である厚切りのチャーシューが六枚、ラーメン鉢の淵からはみ出している。このチャーシュー(煮豚)にもそれぞれ個性があって、お店によって全然違う。細かい部位であるとか、調理法などは全く分からないが、この北京飯店のチャーシューは重そうなのだが、食べてみるとそうでもない。ガラスの四十代の私でも全く胃もたれなどしない。むしろ、チャーシューだけを注文したいぐらいの代物だ。だが、このチャーシューは単品だと結構高い。北京飯店のチャーシュー盛りはなんと900円である。ちなみに、上海楼のチャーシュー盛りは1000円だった。これにライスを付けると1000円越えである。北京飯店で1000円超えはほとんどない。単品では一品もないから、チャーシュー盛りがこの店では一番高いメニューである。
ちなみに、北京飯店全メニューの中で一番高額なのは、『北京セット』1200円だ。いつかそれを食べたいと思っている。




