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嗚呼、愛しの北京飯店  作者: 稲田心楽
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5

 

 店先にこれ見よがしにあの雑誌に紹介されたであるとか、あの番組のグルメ取材を受けたであるとかの看板を見かける事があるが、あれはあれで良い。だが、一切そういうのは無しでというのもクールでカッコいいなと思う。個人の価値観ではあるが、私はどちらかというと、後者のお店に一票である。



「私も同じかな。関係者じゃないから勝手なものよね」


「そうだね。一人でも多く来てもらいたいから、自分がその立場だったら宣伝するかも」


「それはしてもらわないと。生活かかってるんだから」



 彼女の言う通り、本当に勝手なものである。だが、これほどお洒落で美味しい店なら宣伝はいらない気もする。



「ザーサイ食べてみて」


「うん」



 ザーサイ──からし菜の一種で、高菜の仲間である。茎の部分がコブのように膨らんでいるのが特徴で、もともと中国の四川省で栽培が始まったとされている。



「うっ美味いっ! ラー油がピリッと効いてるよね」


「お酒のあてにも最高だよね」



 実はあまり馴染みがない。というか、食べた記憶がないのだ。もちろん、存在は知っているのだが、なかなか単品で注文することもないし、北京飯店のメニューにはなかったはずだ。



「北京飯店にはザーサイなかったよ」


「うそっ! あそこ何でもあるイメージだけど」


「厚揚げってあったよ」


「なにそれ? 意味分かんない」


「いや、書いてあったよ。“厚揚げ”って」



 厚揚げが200円と表記されていた事を思い出した。厚揚げとは、おでんとかの具材のものなのだろうか──。前から気になっていたが、どんどん想像力が膨らんでいった。



「月曜日に厚揚げを注文してみるよ」


「お昼ご飯に厚揚げだけ?」


「いや、この間たまたま他の常連さんが食べていたのがあって」


「何?」


「味噌チャーシュー麺」


「あそこの味噌チャーシュー麺美味しいそうね。またチャーシューが山盛りなんじゃない?」


「多分。麺が見えないぐらいじゃないかな」



 値段等も確認済みだ。味噌チャーシュー麺は780円だった。



「確認したから間違いないと思うんだ。780円だったよ」


「安っ! 安すぎない?」



 確かに安い。チャーシュー麺は高い。さらに、味噌は割高のイメージがある。私はタブレットで上海楼の味噌チャーシューがいくらかを確認した。



「1000円か」


「それぐらいするわよね。ラーメン専門店だと、1200円ぐらいする所もざらよね」



 北京飯店の値段設定は、相変わらずぶっ壊れていると言っていい。ただ、ここのコスパだって全然引けを取らないし、高級感も味わえる。



「今は中華丼を楽しむよ」


「そうよね。この炒飯もパラパラしていて凄く美味しいわ」


「お待たせしました。よだれ鶏です」



 話しに夢中になりすぎていて、よだれ鶏を注文していたことをすっかり忘れてしまっていた。

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