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そう言えば、“冷麺”と言ったご婦人は何処となく関西の方っぽく見える。まず、着ているシャツがド派手である事。もの凄くリアルなシマウマがプリントされている。小さなロゴ程度のものではなく、一面がシマウマのシャツだ。最初に来店された方も派手と言えばそうだが、また違ったものを感じた。偏見かもしれないが、関西の方は派手なイメージがある。この間、TVのご当地自慢番組でもこういったド派手なシャツを関西のご婦人が着ていた。全ての人がそうではないだろうが、あの方はおそらく関西の方だろう。そして、シマウマの目があまりにリアルで怖すぎる件は、今夜彼女に報告しようと思っている。
「今年は帰れるの?」
「今のままじゃ分からないわ」
「奈良まで遠いわよね。お盆のお墓参り」
「そうなのよ。去年は帰れなかったから。毎年8月に帰っていたから」
私の予感は的中した。どうやら奈良の出身みたいだ。関西には行った事はないが、奈良の大仏様には一度お参りしたいと思っている。コロナが終息したら、彼女を誘って行きたい。
「はいよ、冷やし中華ね」
「相変わらず具沢山ね。お店は汚いけど」
「うちは女性ターゲットじゃないんでね」
ここからでは、お二方に出された冷やし中華は見えない。同じものを注文したから、直ぐにその全貌は明らかになるが、気になって覗き込んでしまいそうになった。
「はいよ! 冷やし中華ね」
すぐさま目の前に冷やし中華が出された。所謂普通の冷やし中華を想像しないようにしていたが、私のそれを遥かに超えた冷やし中華だ。まず、バラエティーに富んだ具の数々。海老、錦糸卵、ロースハム、胡瓜、トマト、鳥のささみ、そして、この黄色というか黄金色の物体はクラゲだろう。それらが高々と盛り付けられており、絶妙のバランスで支え合っているように見えた。そして、その下に黄色のちぢれ麺が見える。
「お好みでどうぞ」
「すいません。ありがとうございます」
テツ君がマヨネーズと辛子が入った小皿を持ってきてくれた。
「胡椒の隣がすりごまになってますんで、お好みでおかけください」
「はっはい。ありがとうございます」
まさにフル装備の冷やし中華である。今の今まですりごまがある事に気づかなかった。私は、それを上からふりかけた。
「冷麺はね、こうして食べるのよ」
「いや、私もそん感じで食べるわよ。同じじゃない」
私は箸で海老を掴んだが、お二方の会話を聞いて海老を戻した。冷やし中華の食べ方なんてあるんだろうか──。私は、そっとバレない様に、どうやって食べているのか覗き込んだ。
『……』
普通に食べていた。いや、よく分からない。見る限りだと、ごくごく普通に食べていた。具材を食べて、麺をすする。その繰り返しのように見えた。とりあえず、他人の食べ方など気にせず、もう一度海老から食べる事にした。
『美味いっ!』
お皿の淵まで溢れていた深い飴色のタレに浸して海老を食べた。プリプリの食感がたまらない。もう一度海老を箸で掴み、小皿のマヨネーズをつけて食べた。
『美味いに決まっているだろ』
マヨネーズと海老は本当に合う。どんな風にして使うマヨネーズかは分からないが、食べたいように食べる──それでいいのである。




