表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嗚呼、愛しの北京飯店  作者: 稲田心楽
21/88

3

 

 まずは、唐揚げからと言いたいところだが生唾を飲み込んだ。見た目のラスボス感が半端ない。私は、好きなものは1番最初に手を付けるタイプだ。ショートケーキも苺から食べる男なのに、この唐揚げを前にして怯んでしまった。心の準備が出来ていなかったのと、五つもあるのにもったいないと思ったからだ。



 とりあえず、大好きなスープで口の中を潤そうと思った。それからでも遅くはない。何せ、五つもあるのだから。



 私は、まず千切りキャベツの横に盛られているポテトサラダを口の中に入れた。普通、ポテトサラダからはいかない。いや、今までも副菜から口にした事は記憶にない。それほど圧倒的な存在感の唐揚げである。クラスで一番の可愛い子に話し掛けられず、その子といつも一緒にいた友達Aに近付いた時の感覚に似ている。



『美味い!』



 マカロニサラダの時もそうだったが、ここのサラダ系はとにかくマヨネーズ“ビシャがけ”である。ジャガイモの形もほどよく残っていて、食べ応えのあるポテトサラダだ。きゅうりのアクセント、ロースハムの塩気、全てが絶妙のバランスだ。これだけマヨネーズ“ビシャがけ”なのに、一つ一つが主張しているのは、『どういう裏技ですか?』と聞きたいぐらいだ。



『ん? 何だこれ?』



 ポテトサラダの横に銀紙で巻かれた何かを見つけた。



『こっこれは……』



 中身は塩だった。想像通りだったが、黄金色をしている。私はお箸の先端に少しそれを付けて舐めてみた。



『カッ、カレー味っ!』



 口の中が、カレーのスパイシーな風味に支配された。黄金色をしているそれを見た時、一瞬なんなのか分からなかったが、口に入れた瞬間、いや、口元に持ってきた瞬間にテンションが爆上がりになった。何故なら、それを付けて食べる唐揚げは間違いなく美味確定だからだ。私は、マカロニサラダから食べた事と、銀紙の存在に気付くのが遅かった自分に少しがっかりした。知っていれば、迷いなく唐揚げから食べていたであろう。



 ちなみに、カレーのスパイスに含まれるコリアンダーには食欲を増進し、消化を助ける効果があるらしい。そんなに大飯食らいでない私でも完食出来るかもしれないし、胃の消化を助けるなら薬も必要ないかもしれない。



 私は、岩山の一番上の唐揚げを箸で掴んだ。



『おっ重い』



 見た目通り重量感が半端ない。私は、カレー塩を付けて勢いよく唐揚げを食べた。



『……』



 言葉にならない──上顎を火傷してしまったけど気にしない。熱いのは覚悟の上だった。噛んだ瞬間に肉汁が溢れて吐き出しそうになったが、根性で噛み切った。



『美味いな……。美味すぎるだろ』



 こんがり狐色に揚がっている唐揚げ──驚くべき事は衣が極薄なのだ。そして、ニンニクや生姜の香りがしない。少々の下味と本来の鶏の旨味のみで勝負しているモモ肉の唐揚げである。若い時は、ニンニクや生姜が効いているパンチの効いた唐揚げが好きだったが、今は出来るだけあっさりしている方が好みだ。



『カリカリだし、美味いし、これ以上ないだろう』



 白飯が止まらない。いや、止める気んど毛頭ない。続けざまに千切りキャベツを放り込んだ。



『最高だっ!』



 胡麻ドレがかかっていて、少ししなっとなったところをピンポイントで食べた。美味いに決まっている。食感が変わり、また岩山に挑みたくなる。その無限ループをいつまでも楽しみたいぐらいだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ