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それでも、好きだ  作者: 茶化し隊
5/7

安いけど遅い

一部妄想で書いてるので、実際の製造工法とは異なるかもしれません。ご容赦ください。

翌朝、僕はあるひらめきを得た。


(例えばおじさんの体に半田を溶かした電線を埋め込んで作れば安くできる。それを転用して何かの板に半田を溶かして回路を作れば安くならないか?)


これなら裸線でよくなって、高いプラスチックを使わないでもよくなるからコストも下がる。


早速案をおじさんに伝えた。

「、、なるほど。半田なら場所も取らないし、加工もしやすい。何より電導性もあるし安い。だけどどう電線と繋げる?」


悩んだ。直付けだと取れる危険性がある。

うーん、、、


「だったら回路に穴を開けて、電線を埋め込んで半田で接着すればいい」

そう僕は返した。


当時、ほとんどの電化製品は回路主体で、基盤なんていう発想は無かった。それだけにこの意見は画期的だったのだ。


僕とおじさんが、昨夜一つの愛を奏でた。

それが基盤の上でのコストカットにつながる。遂に突破口は開かれたのだ。


だからこの作品は、愛の結晶なんだ。


そう俺は思った。


早速部長に掛け合う。すると意外にも否定的な意見から始まった。


「確かに材料費は安いけども、加工に金がかかりすぎる。何より製造速度が遅くなるじゃないか。」


盲点だった。でもこれ以外に作戦はない。


「、、とりあえず設計図を作って欲しい。話はそれから」


部長の優しい声。しかしその声は新たな問題を告げるようだった。


半田による回路基盤製造は、現状一つしかない。それは手作業だ。


まず板に回路分の凹みと電線接続の穴を彫るのに簡単な回路ででも一二時間はかかる。


その後に、その凹みに半田を流し込まないといけない。


全て手作業なので、合計で4時間かかる。

最低時給は1時間あたり10円。


加工だけで一つ40円かかる。諸々の費用を考慮するとこれでも170円はかかってしまう。企画書で挙げられた値段には届かない。


それに生産速度も遅い。


単純計算で1人1日あたり6台。月計算でも180台。年間で1960台しか生産できない。


東京の人口は100万人いるので、全員に行き渡らせるのに1000年かかる。


無論作る人を百人にすれば10年で普及できるが、それでも遅い。

とりあえず回路図の設計にとりかかる。


と言っても基本は従来の設計を基盤上に移植するだけだ。作業は10日で終わり、外装の設計も終えた。


更にコストを下げて、真空管外装込みで135円にまで圧縮した。

それでも後35円足りない。


製造コストが高くつきすぎたのだ。

製造コストは真空管含めて70円ほど。


できれば自社での製造コストを5円に圧縮したい。だけども、それはとても難しい案だった。


一歩前進した。けど、ゴールはまだまだ先にあった。


そうこうしているうちに久しぶりの休日を迎えた。


今日はおじさんに魚の捌き方を教わった。


「いいか?魚ってのは、骨を取れるように切るんだ。背骨にそってこうきれいに切るんだ。どうだ、魚が真っ二つになってきれいな身が出てきただろ」


なるほど。


そう頷き、自分でも実践をしてみる。

魚の骨の上を刃が縫うように走る。


そこにはきれいな魚の骨が浮き上がっていた。見ててすごく綺麗な捌きだと思ったけど、自分でするとやっぱり感激する。


「覚。うまいじゃないか。やっぱり君は手先が器用だね」


それから暫くたったが、コスト削減への道はまたも行き詰まった。どうしよう。


夜になり、おじさんの布団に潜り込む。


特に何かをするでもなく、愚痴をこぼして回路の話をすると、二人して寝てしまった。

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