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第13話



 気絶するサミーニャは部屋の中央に放置されている。抵抗しても簡単に捕らえられる自信があるのか、特に拘束などはされていない。

 三人の男は入り口付近にいる。一応、室外の警戒をしている様だ。


 スキンヘッドの男と優男が話をしている。

「しっかし、あの連れは顔が整い過ぎて気持ちが悪かったな。あれが噂に聞く魔導人形(ドール)ってヤツか?」

「いや、鑑定結果は人間だったよ。しかも能無し(レア)

「あの見た目でレアか!だから黒魔女に目を付けられっちまったのか」

「男娼館に売れば相当になったと思うんだけどさ」

「黒魔女を敵に回したら俺らがどうなるかわかんねーから」

「アッシュの言う通りリリーは危険すぎるからね。本当に惜しいけどね」


「──なあデニス、あれも本当にレアなのか?」

 頬に傷のある男が難しい顔をしながら優男に問う。視線の先にはサミーニャが居る。

「ジェイはオレの鑑定スキルが信用出来ないのかい?」

「別にそこは今さら疑ってはいないが」

「あの子を視るとミーニャ、女、18歳、人間、しか出ないのさ。スキルが出ないって事は能無し(レア)だろう?」

「確かにそうなんだが、どうも引っ掛かる」

「出た。ジェイの第六感。まぁ、今回も考え過ぎだよ」

「俺の神幸運があっから何かあっても大丈夫だろ。心配するだけ損だ、損」

「はぁ。それもそうか」

「そうそう。それにレアでこの容姿なら相当高く売れるでしょ」

「へへっ。その前に楽しまねーと。これが合法ロリってやつだろ?」

「合法って、それは前世の話だろう?ここは15歳で成人なんだからあの子は自分に責任を持たなきゃいけない大人だよ」

「ホントこの世界にきてからそこら辺の考えが変わっちまったよな」

「なぁデニス。こいつは一応売り物なんだから、この前みたいにいきなり壊すなよ」

「わかってる。できるだけ壊さないように楽しむよ」


「ウーン、、、」


 男が黒い相談をしていると、サミーニャが身動ぎをした。


「お!起きたみたいだ」


 優男と頬に傷のある男がサミーニャに寄っていく。スキンヘッドの男はそのまま室外の警戒を続ける。


「おい、起きろ」


「・・・誰だお前ら」


 サミーニャは目をパチパチと瞬き、目の前にいた優男を見た。


「誰だっていいだろう?そんなことより、お兄さんとイイコトしようか」


 優男がニヤニヤとサミーニャに更に寄る。


「はぁあ!?俺に近づくんじゃねぇ!」


 サミーニャ渾身の蹴りが男の脛に運よく当たる。しかし、蹴ったサミーニャも痛みに蹲る。脛同士がぶつかってしまったらしい。


「~~ッ!ジェイ、アッシュも」


「ああ」「へいへい」


 優男の合図で頬に傷のある男がサミーニャの足を、スキンヘッドの男が腕を床に抑えつけた。彼女は身動きひとつ取れない。優男はニヤニヤと見下ろす。


「これで抵抗はできないよね?さっきのは本当に痛かったよ?」


 優男はナイフを取り出し脅す。

 サミーニャは現状を打破しようと思考を巡らせる。


 何か、何かないか・・・あ、魔法!あーでも使い方わかんねぇや。そもそも魔力ってどこからもってくんだ?あ、そっか。えーっと・・・

 くそっ!魔力を集める?のは難しい。そもそも俺は戦闘向きじゃねぇんだよっ!


 サミーニャは心の中で悪態をつきながらもどうにか魔力を集めていく。


「そんなに眉間に皺を寄せたらかわいい顔が台無しだよ?」


 優男は笑いながらサミーニャの頬をペチペチと叩いた。そして空いてる方の手は逆の頬に伸ばす。自然と覗き込むような体勢になる。


「あ、少しでも動くとそのかわいい顔に傷が付くから気を付けてね。まぁ、恐くて震えが止まら・・・震えてない?」


 サミーニャが恐怖に戦き震えていると思っていた優男は怪訝な顔をする。

 次の瞬間、サミーニャから膨大な魔力が吹き出した。男共はその流れに煽られ、壁まで吹き飛ばされる。

 サミーニャの頬には一筋の傷が出来ていた。


「ガハッ。お、おまえ、レア、じゃない、のかっ!」


 頬に傷のある男は壁に押し付けられながらも問う。サミーニャはニヤリとした笑みを口元に湛えながらそれに答えた。


「あぁ、如何にも俺は(レア)だ。それに、今に来るぞ。(レア)中の死神(レア)が」


 その時、入り口の扉が壊れる勢いで開かれた。デスランが息も絶え絶えに走り込む。


「ミーニャ、無事か!?」


「ったく、来るのが遅ぇよ」


「俺も変な奴に捕まっててって、怪我をしてるじゃないか!!」


 デスランは室内の状況把握もそこそこに、サミーニャの左頬の傷に目を止めた。


「え、あ、こんくらい戻れば一瞬で治るから気にすんな」


「気にするだろ!ミーニャを傷付けられるのは俺だけの特権なんだ!!」


 デスランは全身から殺気を放ち、全ての表情が抜け落ちた顔で磔にされている男共を睨め付ける。


「──殺す」


「ちょ!やめい!!」


 デスランは亜空間から大きな鎌を取り出した。サミーニャが慌てて止める。


「何故止める?」


「お前が殺すなんつったら洒落になんねぇだろ!」


「冗談じゃない。俺は本気だ」


「だとしても!こいつらが死ぬのは今日この時じゃねぇだろ!頭を冷やせ!!」


 サミーニャはデスランにしがみつき、彼の行動を封じた。男共に掛けていた魔力による圧を解除する。


「てめぇら、ここで死にたくなけりゃ、さっさと逃げやがれ!」


 デスランの殺気に当てられた男共はへっぴり腰になりつつも一目散に逃げていった。


 サミーニャから解放されたデスランは鎌を仕舞うとクルリと身体の向きを変えた。そして無言のジト目で彼女を見る。


「なんだよ。俺のせいでスランに罰が下るのがイヤだったんだ」


 サミーニャはそう言うと俯き、己の服をぎゅっと掴む。そんな彼女の言動にデスランは天を仰いだ。


「俺はミーニャの為なら罰を受けても良いと思った」


「それでも!それでもスランと離れるのはイヤだ!忙しくて会えないのと罰を受けてて会えないのは全然違う!」


「・・・ハァ。お前はどうしてそんな可愛い事を言うんだ」


 デスランは怒りを心の底にグッと押し込め、サミーニャの存在を確かめる様にギュッと抱き締める。そして少し体を離すとそっと傷付いた頬を撫でた。


「それ、痛くないか?可哀想に」


「っつ、触んな」


 サミーニャは痛みに顔を顰め、デスランを睨む。


「そうだ。傷は舐めれば治るんだったな」


「え?ちょっ、やめっ、イッ!!」


 デスランはニヤリと笑うと頬の傷をペロリと舐めた。サミーニャは痛みに思わず顔を背ける。


「フフッ。そうだミーニャ、こっちを向いてくれ」


「や、やだよ!」


「そうか。なら、強制的に向かせるまでだ」


 デスランは逃がさないとばかりに彼女の顎に手を掛けた。そして熱を帯びた目で見詰める。


「放せっ!顔(ちけ)ぇよっ!」


「なぁ、このままキスしていいか」


「は?何言ってんの?」


「今なら気絶せずに(普通に)出来るだろ?死神じゃ無い俺相手なら」


「え?死神じゃないスラン?

 はっ!!ちょ、ちょっと待て!心の準備がっ!!」


「もう待たない。ずっと他の神様(やつら)みたいに普通のキスがしたかったんだ。──やっと報われる」


「ま、まて!まてまてまて!うにゃー!!!」


 デスランは愛してると呟き、色気もへったくれもない声をあげるサミーニャの唇を奪った。



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