兄弟対決
結婚式当日、事件は起こる。
何故か、カインは最前線よりの帰還が遅れ、式の当日早朝に王都へ着く予定となる。
しかし、早朝に着くはずが昼前の到着となる。
ありえない事だ。
そして、式は本来の予定通り行われる。
神の祝福を受け、式が一段落し、レグルスが出席者に挨拶を行おうとした時、カインが現れる。
魔王の加護を受けた、英雄の後継者が。
本来の戦いならば、レグルスがカインに負ける事はありえない事だろう。
しかし、一刀のもとにレグルスはカインに敗れる。
二人の英雄の後継者はその後の行動は早かった。
ブラメスはその場から、妻の太陽の巫女と共に素早く屋敷へ戻り、必要最低限の荷物と、母を連れて出奔した。
カインは式会場にいた王をはじめ、有力者を捕らえ自分が王となる事を宣言。
大国の中枢を抑えたものの、「父殺し」の汚名と王にならなかった父の高潔さと比較され、必要以上の抵抗にあい、完全に支配するにはかなりの時間を要する事になる。
また、同じ理由からブラメス一行がカインに捕まる事もなかったのである。
カインは、英雄の本当の後継者の名に恥じず、5年で大国を以前とほぼ同様の勢力とし帝国を宣言。
ブラメスは、地下活動をし、カイン打倒の準備を行う。
この間、月の女神と太陽神には信者から名前を与えられる。
月の女神には「ルナ」
太陽神には「ソル」
そして、レグルスには偉大な功績を称えてこう呼ばれる。
「レグルス・ファーン・ルナ・ビンセント」
大陸の半分の勢力の大国というが、レグルスの時代といささか勢力図が異なる。
何故ならレグルスは神々の勢力を取り込み、魔王達の勢力を討伐し版図を広げたが、その後は魔王たちもそれぞれ協力し、王国に敵対していた。
その為、一気に大陸全土制服とはならなかったのである。
カインの守護となる魔王の勢力はそれなりに大きいものではあったが、その司る性質の為残りの大陸半分とまではいかない。
また、他の魔王もその勢力下に降る事を良しとせず、カインに天下を簡単には取らせなかった。
元々の王国の勢力も完全に帝国の傘下にはならず、カインの実力があって以前の王国以上の勢力となっているのである。
そして、カインの守護魔王も名前を帝国より与えられる。
邪神「エルゾ」と。
神々と魔王たちの名前を得るゲームに勝利者がそれぞれ出た。
しかし、英雄の後継者たちの戦いが終わるわけではない。
カインは勢力を広げる過程で神剣「ロベイオン」を手にする。
青白きその剣は力強さの象徴であり、まさに、カインの帝国の象徴となる。
ブラメスがカインを打倒するためには、ロベイオンに代わる象徴を手に入れねばならない。
英雄の家督を継いだ後継者、妻である太陽の巫女「ファネル・リーン」、母である英雄の妻、魔女「ベネッサ」の率いる反乱軍。
と、いえばこれ以上ない名声はあるが、いかんせん、力不足は否めない。
ブラメスは大陸全土を探索し、聖剣「プルーア」を手中にすることに成功。
赤き聖剣は細身ではあるが、その神秘さは神剣に勝るとも劣らない。
帝国と真正面から戦うには無理がある。
ゲリラ戦で戦いが長期化すれば、勝ったとしても他の勢力からの侵攻は免れない。
向こうは帝王だが、こちらはただの一騎士だ。
テロ行為と変わらないが、どうせ100%の勝率が得られないのであれば勝負に出てみるか。
大陸全土を旅した経験がブラメスに一騎打ちをする覚悟を決めたといえる。
それが皮肉な結果につながることなど、この時点で誰も思わない。
加護を与えるものが「名」を持ったこと。
神剣と聖剣の本当の力。
英雄の後継者たる二人の実力がその力をどこまで引き出せるのか。
今、戦いがはじまる。
終わりへの戦いが。