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大分県〜宮崎県 宗太郎峠の幽霊

  宗太郎峠には、女性の霊が出ると言う。


その女性を乗せると必ず、事故に合うらしい。


原因は不明。


 僕は、そんな事はつゆ知らず、10号線を使って臼杵〜佐伯を通り宗太郎峠を越える…はずだったのが。


「あたた…」


急にエンジンがストール、つまりはエンスト。


「何でだ?」


原因不明、最悪の状況…


青看板には、「宮崎30km」の表記。


「マジかよ…」


運が悪いことに登り坂。


おまけに車は通らない。


この峠に入り、エンストしてから3時間経過したが車は1台も通らない。


「うーん、これは本当に困ったぞ…」


どうしようかと思い携帯を開くが圏外…時間は11時59分。


あと、1分で12時だ。


ちょうど良いところに大きな木があり、そこで、お昼でも食べようかと途方に暮れていると


パカラ、パカラ、パカラ、


「?」


よく分からない音が聞こえてくる。


何だろう、この音は?


聞いたことあるような…


「蹄の音!?」


驚き、音が聞こえてくる方向をみると…


馬が目の前に迫っていた。


「!!?」


あまりの衝撃に声が出ない。


「おい、そこの者!」


「は、はい、何でしょうか!?」


呂律がうまく回らない。


「ここらへんで、女を見なかったか?」


「女?」


「うむ、お殿様の妾になるはずが逃げ出したので探しておるのだ」


女? お殿様? 妾?


何を言って…ああ、僕がまた、面倒なことに巻き込まれたのか。


「見ませんでしたよ」


「そうか」


それだけ言うと、馬に乗ったお侍さんは何処かへ走り去って言った。


「な、何とか逃げ切れたわ…」


声とともに近くの草むらから女が出てきた。


着物姿の。


「なるほどね…」


「ひ!?アンタも追っ手なの!?」


「違います」


そら、びっくりするわな命からが逃げ延びたと思ったらいるんだもん。


とりあえずは、落ち着かせるのが先決か。


「コーヒーがいい?ココア?」


コッヘルに水を入れ、バーナーに掛け、お湯を沸かす。


「こーひー?ここあ?」


予想通りの反応


ここは、有無を言わずココアを入れる。


僕は、ココアに拘りがあり、


飲むときは、必ずバンホーテンのミルクココアと決めている。


「はい」


「あ、ありがとう」


コーヒーに拘る人は大勢いるがココアに拘る人はそんなにいない。


まあ、特に拘るとこもないしね。


「あ、甘い…」


彼女はそう言ってちびちびとココアを飲み始めた。


そして、ポツポツと語り始めた。


「私は、妾になるのが嫌だった、けど、家はお金なかったから妾に出された」


「……」


「最初は、嫌だった。」


「必死で我慢しようとした、けど、無理だった」


「それで、気付いたら逃げていたと?」


「そう言うこと」


なるほど、あるあるか…?


現代日本では、あり得ないが貧民諸国では普通にあると言うし、昔の日本でもあったんだろう」


「私は、この山の外を見て見たい」


「はい?」


「私は、この山、いえ、この村の外に出たことがないの!連れて行って!!」


やれやれ、面倒臭いことになった。


俺は、腰を上げジェベルに荷物をパッキングする。


「ちょ、ちょっと」


ジェベルに、またがりキックを踏み込み思いっきり踏み降ろした。


ドルル…トトトトトト。


一発でかかった…


安定したアイドリングがこだまする、これなら大丈夫だ。


「乗れよ」


「へ?」


「山の外、見たいんだろ?送ってやるよ」


彼女を乗せてジェベルは走り出した。


原付二種と言えど、二人乗りで十分なパワーはある。


てか、いつの間に未舗装路になったんだ?


上ってきた時はコンクリだったぞ。


デコボコしてる道をゆっくり走り続ける。


本当は、ヘルメットがいる所だが、この際仕方ないだろう。


リアシートでは


「風が気持ちいいー!」


とか、言ってはしゃいでる。


「あまり、はしゃぐなy…」


言いかけたところで、茶色の物体がこちらに向かってくるのが見えた。


「いたぞー!」


先ほどの、お侍さんだ。


馬に乗って追いかけてくる、さっきより増えて3人になってる。


「早く逃げて!!」


「言われなくてもわかってますよ」


僕は、ジェベルのアクセルを開ける。


ジェベルは、グングン、速度を上げていく。


メーターは60キロを指していた。


「ちょ、ちょっとこの先」



彼女が指差した先には…道が無かった。


「追い詰めたぞー!!」


「チッ」


軽い舌打ちをする。


「もう、道がないんだけどー!?」


仕方がない、一か八かかけるか。



対岸は、ちょうど下側。


距離は15メートルないか?


良し、飛ぼう、逃げるにはそれしかない…サスペンション確実に壊れるけど。


ジェベルのギアを落とし回転を上げる。


さらに、バイクは加速する。


70、80、90、100…


そろそろ、エンジンが限界だ、振動もかなり強い。


「いっけえええええええ」


僕は、思いっきりかつできる限りハンドルを引いた。


飛んだ________。


飛び出してすぐに、着地体制をとる。


ドン!


強い衝撃と共に着地に成功。


何とか、コケることなく止まることができた。


「う、うわああああああ」


声が聞こえて後ろを振り向くと、追いかけてきていたお侍さんたちが谷に向かって落ちて言った…


後ろに乗っていた彼女はと言うと…


気絶していた。


バイクから降ろし、近くにあった木に彼女の体を預けさせる。


彼女の寝顔は美しかった、気絶しているが、とても嬉しそうだった。


あれ?


木に預けた、彼女の姿がなかった。


あたりを見渡すと、路面は舗装され、道にはガードレール。


そして…後ろにはお昼ご飯を食べようとした、大きな木があった。


「…間違いない、同じ場所だ」


携帯で時間を確認する。


時刻は12時だった。


つまり、約1分ほどしか経ってない。


周りから見ると、携帯で弄ってる人にしか見えないだろう。


びゅうっと強い風が吹き、後ろを振り向くと___。


そこには、彼女が笑っている気がした。





















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