コカトリス肉とレシピたち
トカーナに戻る頃には、冬の名残もすっかり無くなり、辺り一面は春の景色に様変わりしていた。
花がほころび、人々が賑わい、魔物も活発になったり、どこかそわそわと浮き足立つ気分になる。
街に戻った俺たちは、すぐに孤児院に戻った。戻るなり顔を真っ青にしていたシスターを見て、中身がおっさんな俺もグッときてしまった。俺たちの親はこの人なのだと。
全員同じ気持ちでシスターに抱きつき、心配していたチビ達も群がって孤児院は一時混乱を極めた。
落ち着いたところで、マルローさんとマリルちゃんもここに住ませたいことを伝えた。はっきり言ってこれだけの子供がいたら力仕事も必要になる。今まで近所の人の好意に頼っていたけど、マルローさんがいれば働き手も増えるし、孤児院の経営的にもマイナスよりプラスだろう。
マルローさんも働く時にマリルちゃんを1人することに不安があったみたいだし、ずっと森で友達もいなかったので、ぜひ孤児院に来たいとのことで意見が一致した。
当面は2人は客間で過ごして貰うことになった。最近孤児院の裏手が空き地になり、孤児院の土地として拡張することも決まったので、そちらに2人の居住スペースや新しい部屋を作る予定だ。
その日はダンジョンでの出来事を話したり、マルローさん達の話を聞いたりして1日が終わった。
孤児院の煎餅布団でも、自分の寝床は快適だとしみじみ感じて眠りに落ちた。
「コカトリスの肉とはまた変わったもんを手に入れてきたな。」
翌日、肉屋に出勤して早々にダンジョンで手に入れた肉達をダノンおじさんとケイトに見せていた。シシリーは店内の掃除中だ。
「せっかくこれだけの量があるんだ。店に出す分と酒場で出すのと、さっさと処理するぞ。」
ダノンさんの指示で解体を始める。
昨日の今日で出掛ける気はわかなかったので、今日は肉屋と酒場の手伝いに専念することにした。
コカトリスは肉質からしても上質な鶏肉だ。旨味がギュッと詰まっているが、あっさりしながらもジューシーさのある味で、どんな料理でも美味しくなるような肉だ。
肉屋には、街の奥さん達が調理しやすい、もも肉、ささ身、胸肉を中心に並べて、本日の目玉商品として売り出すことにした。
もちろん他の魔物の肉もあるので、同様に並べていく。
酒場の方には、あまり量が多くない部位や、調理が難しい部位を出すことにした。
今日のメインは手羽先の唐揚げ、コカトリスのしっぽ焼き(試食をしたらぽんじりみたいだったので塩焼きにしている)、鶏レバーパテの前菜…などなどだ。
チャンも手伝いにやってきたので、肉屋の営業が始まる。春になって旅人も増えてきたからか、冒険者ギルドに面する通りにも人の往来が多くなった。
そんな中で、前世の肉屋で培った奥様対処術をフルに活かして接客をする。
「滅多にないお肉だけど、どう調理したらいいか困っちゃうわ。」
目玉商品であるコカトリスに食いつく人は多いが、調理する自信がない人が大半を占めている。
「珍しいけど、どんな料理でも美味しくなるのがコカトリスの肉のいいところですよ。」
それから、特に秘匿してるわけじゃないので、鶏肉レシピも会話とともに広めていく。唐揚げ、ロースト、蒸し鶏など説明して相手に理解してもらう。
特に唐揚げについては、酒場と共同で量産していたので、レシピついでに試食を提供したら喜ばれて、売り上げもグッと伸びた。




