朝食ステーキとコカトリス討伐
肉要素が少なくて申し訳ありません。
もう少しで肉ゲット!と、迷いの森編が終わります。
さて出発!といきたいところだが、景気付けとしても、戦いに行くためのコンディションとしても、朝食を食べてからの出発となる。
兎の獣人の2人も、野菜を好むそうだが肉も食べれるとのこので、俺特製の朝食を振る舞うことにした。
この森にあるマルローさんとマリルちゃんの家には食糧が豊富にあるとのことだが、距離があるので世界樹の周りの食べれるものと、持ってきたソーセージの残りを使うことにした。
食べれるものはマルローさん達が詳しいので、数分で肉以外の食材も揃った。
採ってきた芋らしきもの(コータは知らないが、世界樹の養分で育った黄金芋という幻の食材)
も皮を剥いて一口大に切る。
時間が惜しいので、魔力タンクであるリッツに芋を蒸しあげてもらい、潰した芋に生でも食べれる野菜達を細かく刻んで混ぜ合わせ、ハーブやナッツを混ぜてポテトサラダを作った。
あとは、朝からいきなりステーキを用意する。
なんてボリューミーな!と日本人なら思うだろうが、セレブなんかは朝からステーキを食べるとも聞くので決しておかしな行為ではない。まぁ贅沢なことには変わらないのだが、孤児院育ちでステーキはご馳走にあたるので、みんなの士気をあげるにもステーキは手軽に調理もできて持ってこいなのだ。
道中に魔物をたくさん倒し、特に肉になるものは残さず収納してきたので、種類が豊富だ。本来なら食べ比べをしたいところだが、時間もないので俺のチョイスで、グレートモーモーの肉で全員分のステーキを焼いた。
がっつり食べたいラスターとコジローには、ボリューミーで高級なサーロインを、俺とリッツ、マルローさんには赤身の美味しいランプ肉を、リタとマリルちゃんには比較的あっさりとしているがステーキには美味しいフィレ肉をそれぞれ用意した。
世界樹の側の岩から取れるという岩塩も見つけたので、それを削って味付けをしたシンプルだが最高のステーキだ。
「生臭くなくて、柔らかい。肉がこんなに美味しいなんて!」
「とろけるでござるよ!!」
マルローさんやマリルちゃん含めて、全員が目を輝かせながらステーキを頬張る。
美味い肉は心も満たしてくれるからな。それに前世では鉄板焼の資格も持っていた俺の手にかかれば、どんな肉でも最高の焼き加減で提供できる。
豪華な朝食を堪能すると、いよいよコカトリスの元へ向かう。マリルちゃんは危険なので、世界樹の精霊と留守番だ。
森がおかしくなっていて既にボスでなくても、この森にずっと生きてきたマルローさんは『迷い』の効果を物ともせずに進んで行く。さらに、豪華な朝食のおかげか、道中の魔物との戦闘でもすこぶる調子がいい。
30分程進んだ先に、開けているが周囲よりも暗い場所へとたどり着いた。
全長が5〜6メートルほどで、頭から胴体がニワトリ、下半身は蛇の形をして、鳥の足が生えたコカトリスが立っていた。
すぐさま、戦闘体制に入る。
前衛がラスターとマルローさん、中衛が俺とコジロー、後衛をリッツとリタでコカトリスへ攻撃を仕掛ける。
ラスターは右から剣を、マルローさんは左から斧を振るう。その攻撃を察知したのか、コカトリスは蛇の尻尾をふるい、2人に攻撃を加える。
「エアークッション!」
弾かれた2人を俺が魔法で衝撃を緩和する。
身軽なコジローが跳躍して、コカトリスの頭上に迫り、クナイを投げる。
コカトリスの鶏冠へとクナイが刺さるが、コカトリスを刺激しただけで、致命傷には至らない。
怒りの声を上げてコカトリスがコジローに液体のようなものを吐きかける。
「わわっ。如意棒風車!」
瞬時に如意棒を取り出して、棒の中心を支点にぐるぐる回すことで、コカトリスが吐きかけてきた毒を回避する。
その隙に、持ち直したラスターとマルローさんがコカトリスに斬りかかる。俺やリタが魔法で3人を補助をして、コカトリスに小さな傷を増やしていく。
「みんな、できたよ。」
リッツの声が響き、接近戦をしていた3人や俺とリタも一目散にコカトリスから離れる。
リッツの杖が金色の光を帯びている。
「サンダーストーム!」
杖先をコカトリスに向けると、いく筋もの稲妻がコカトリスへと迸る。そしてコカトリスの鶏冠にあるクナイへと稲妻が集結する。
グギャーーーーー!!!
程なくして、コカトリス討伐はなし得た。
弱点であり、討伐の証である鶏冠と尾羽は回収し、俺はコカトリスを解体していた。
コカトリスを倒したので、ダンジョン管理の権限はとどめを刺したリッツに渡っている。マルローさんに力の制御を教わり、なんとか森の状態を元に戻せてきている。
「魔石が2つある?」
本来なら1つしかないはずの魔石が、コカトリスの体内から2つ出てきた。
1つは薄緑色の魔石、もう1つは血のように紅い魔石だった。
「…コカトリス自身とは異なる力が混じったことで、凶暴化していたのか。」
紅い魔石の方が、故意にコカトリスに埋め込まれたものだと、マルローさんが分析する。
解体も後処理も終わったので、世界樹へと帰る。
ボスの力があれば、迷わずにこの森のどこへでも行けるそうだ。
「おかえりなさい!」
「ただいま、マリル。」
笑顔で精霊様と迎えるマリルちゃんに、リッツが駆け寄って答える。
「それは父親である僕の役目だろう!?」
リッツに先を越されたマルローさんが項垂れている。ブツブツと、マリルはまだ嫁にはやらん…と呟いていた。
迷いの森の危機が過ぎ去って、ダンジョンの今後について話をすることになった。
「ダンジョンについては、もともと私とマリルだけになった時点で、終わらせてもらうつもりでいたんだ。世界樹の精霊様には申し訳ないが、マリルで純粋な我々の一族の血は途絶えてしまうからね。」
そう言って、リッツから取り返したマリルちゃんを膝の上に乗せて撫でるマルローさん。悔しげに眺めるリッツ。
「私も彼らの負担になりたくはないですし、またこの様なことが起きてしまっても困ります。ダンジョンは終わらせようと思っています。」
当事者の2人の意見を尊重することにして、問題は今後のことだった。
「マリルの為にも、私は街へ出ようと思っています。世界樹の側を離れるのは、故郷を離れるようで大変寂しいですが、いつまでも閉じこもっていてはマリルの為にならないでしょう。」
マルローさん達は街に出るということなので、トカーナの街まで一緒に移動することにした。
「私はこの場所で、また明日も明後日も在り続けます。皆さん、また近くに来られたら寄ってくださいね。」
精霊や妖精達の力で、心が悪しき人には見つからないように結界を張るとのことだった。
俺たちは俺たちで冒険者ギルドに話をしておくことにした。世界樹に手を出されると困るので。
世界樹の精霊と別れてマルローさん達の家に寄って、必要な荷物はリッツが収容することで、引っ越しの準備が完了した。マルローさん達は名残惜しそうではあるが、毅然と家を後にした。
迷いの森の出口が近づいて、リッツがマルローさんの指示に従い、ダンジョン契約の終了の呪文を唱える。
「我、リッツ・クロード・アルテミスの名において、迷いの森の契約を打ち切る。」
真名を名乗り、ダンジョン終了がここに成った。特にガラガラとダンジョンが壊れるわけでもない。迷いの森は、迷いの森効果がなくなり、ただの森となった。
その直後、複数の足音が森に雪崩れ込む。
「コータァァ!」
野太く、ダノンおじさんの声が響き渡った。
それからトカーナの精鋭達に保護された俺たちは、ギルドの馬車でトカーナへと移動した。
道中に起きたことを、ダノンおじさんと驚くことに一緒に来ていた冒険者ギルドのギルドマスターに話した。実際にコカトリスの尾羽や俺たちが持ち得ない世界樹の葉を見せたり、世界でも珍しい兎の獣人であるマルローさんとマリルちゃんを目の当たりにして、話を信じてくれたようだ。
世界樹については、冒険者ギルドから国にも話を通してくれるらしく、決して悪用したりせず、保護する方向で動いてくれることになった。
もう1つの相談事項として、この騒動のきっかけになった、コカトリスに埋め込まれた魔石だ。こちらも冒険者ギルドで預かって、類似の事件等がないか調べてくれるという。
こうして、俺たちが巻き込まれてた事件は謎を残しつつも解決し、迷いの森という、ひとつのダンジョンが終焉を迎えたのだった。




