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冒険者ギルド直営のお肉屋さん  作者: 神崎ゆめり
19/22

森ゴリラとラスター

久々の更新です。なるべく間を空けないように頑張ります!

「お兄さーん!起きて!起きて!」


耳元で甲高い声が囁く。


寝起きはいい方なので、すぐに目覚めて状況を把握する。


いつの間にやら、暖をとるためにリタを抱きしめて寝てたみたいだ。腕の中ですーすーと寝息が聞こえる。


リタの向こうでは、リッツが何故か上下逆になっていて、コジローの左右から脚が見える。コータも大きく口を開けて寝ていて、まだ俺以外は夢の中だ。


「あ、他の皆んなは起こさなくても大丈夫だと思う!たぶんお兄さん1人で倒せるよ!」


どうやら外に魔物がいるらしい。手遅れになると困るので、素早く起きて靴を履く。


「らすたー?」


振り返ると目をこすりながらリタがこちらを見ている。


「悪ぃ、起こしちまった。外に何かいるみたいだ。確認してくる。」


「んー。ひとりでへいき?」


まだ眠いのか、舌足らずな口調で確認してくる。


「ピリカは大丈夫だって。念の為に結界みたいなの張れるか?」


「んー。はれる。ばりあー。」


ファンっと一瞬だけ音がする。

その音を聞いてから、テントの外へ飛び出す。



「何がどれくらい来てんだ?」


俺の肩に掴まるピリカに尋ねる。


「気配しかわからないけど、お兄さんと同じくらいの大きさで10くらいの数だよ。」


「…それ、俺だけで大丈夫なのか?相手の強さとかわかんねぇんだろ?」


「大丈夫だよー!お兄さん強いし!」


へらっと笑う妖精に、呆れた視線を向けるけど、嘘はついてなさそうなので周囲に気を配る。


1人じゃ無理なら、テントに戻って他の奴らを叩き起こしたらいいか。リタの結界があるから時間は稼げるだろうし。


左には川が流れている。少し開けた先や右、テントの後方は全て森だ。川がある分、空が少しだけ見えて、大きな月がいくつか覗いている。


「ウーホー、ホホホホホ。」

「「「ウーホー、ホホホホホ。」」」


「来たよ!森ゴリラ…だけど、なんか違う?」


ピリカが疑問に思う通り、森ゴリラだとしてもおかしい。森ゴリラは、苔のような深い緑色のゴリラで、ゴリラ系の魔物の中では小柄で温厚な性格で有名だ。もともとこの森にも生息しているので、行き道でコータから教わった。脅威度は最低ランクで、力こそ強いが速くはないので初心者でも倒せる魔物だ。


「全員が武器みたいなのを待ってやがる。」


まるで高ランクや魔物のように、知能をつけたみたいに、鋭い石を木の棒につけた槍のような武器を持っている。そして、先頭の一匹に続いて、まるで隊列を組むように近づいてくる。


距離にして10メートル程に近づいたところで、森ゴリラ達が足を止める。流石に味方には見えないので、愛剣を構えて森ゴリラを見据える。


「ウホー!!!!」


先頭の一匹が吠えると同時に、前列と後列に分かれていたうちの、先頭を除く前列のゴリラが襲ってくる。


「速ぇ!」


左右から襲ってくる森ゴリラの攻撃は、話に聞いていた内容と違って鋭く速い。武器がある時点で話と違うんだけど。


避けるつもりが避けきれず、剣で槍をいなす。狙い澄ますかのように、その隙に他の2匹が攻撃を仕掛けてくる。


「チッ、数が多いな。いくぞ!」


確かに攻撃は、森ゴリラ(・・・・)にしては速い。そして、駆け出し冒険者には速い攻撃だが、リタやコジローよりは断然遅い。


時間にして約5分。

残すは、ボスらしき先頭にいた森ゴリラのみ。


数が多いので、流石に息があがる。呼吸を整えながら。ボスゴリラを睨みつける。


「残るはお前だけだぞー!!!」


肩でピリカが叫ぶ。倒したのは俺だぞ?


「…ボス。コワレル。モリ。コワス。」


森ゴリラが人の言葉を喋った?


「どういう意味だ?」


ボスが壊れて、森を壊す…?



ヒュンッ。


ガッ!!!



ボスゴリラの言葉に動揺したところを突いて、槍の攻撃を仕掛けてくる。あの言葉は陽動か?



ガッガッガッ


俺の剣と槍が何度もぶつかる。


今までの森ゴリラよりも、速いし技がある。元々の腕力は向こうが上だから、長期戦はまずい。俺の腕がやられる。


「しっ!」


森ゴリラが槍を少しだけ大きく振りかぶった隙に、間合いを詰める。槍はリーチが長いので、ここまで踏み込めば槍で攻撃は出来ない。


ザッ


森ゴリラの身体を斬りつける。

表面は硬いので、そのまま振りかぶって身体に剣を突き刺す。


「ぐあっ!」


ドシンという音を立てて、ボスゴリラは倒れた。

俺は俺で、最後にボスゴリラが槍を持った手とは逆の手で放ったパンチを横腹にもろに受けた。その衝撃で、森側に吹っ飛ばされて木に身体を打ち付ける。


「大丈夫!?生きてる!?」


「って…」


やばい。痛みで身体が熱い。ピリカの声に返事を返すことすら出来ない。


殴られた腹が尋常じゃなく痛くて、息をすることすら痛みを伴う。確実に骨はやられてる。


相手は人間じゃなくて、魔物だ。一振りのパンチが人にはない殺傷能力を持っている。槍って武器に惑わされて、森ゴリラの1番の武器に意識を向けてなかった。完全に油断した。


少しすると、パタパタと足音が近づいてきて側で止まる。


「肋骨の骨折。庇ったのか左腕も骨折。内臓の損傷。肺や心臓への影響はなし。かなり重症じゃない。バカ!」


そう言って、俺の折れてる左腕を叩くリタ。


「っ!!!!」


声にならない痛みに悶える。重症な人間にトドメ刺すか!?


「…親愛なる女神様。どうかご加護とご慈悲を。エクストラヒール。」


じんわりと身体が温かなもので包まれる感覚。しばらくすると、痛みがなくなり呼吸が楽になる。


恐る恐る左腕や身体を動かす。痛くない。


「リタ悪い。ありがとう。」


身体を起こしながら礼を言うと、リタの身体が倒れてきたので咄嗟に受け止める。


「リタ!?おい大丈夫か?」


「…魔力切れ。眠い。」


流石に重傷者を全快させる魔法は、いくらリタでも無茶だったみたいだ。使えるだけすげぇし、助けて貰った身からしたら感謝しかない。


「すぅ。すぅ。」


そのまま眠ったのか、寝息が聞こえてくる。

そっとリタを抱き上げると、重い足取りでテントへ向かう。リタを寝かせると、森ゴリラとの戦闘で汚れた服や身体を冷たい川で洗って、服はテントにかけて干しておく。


再びテントに戻ると、冷えた身体をもこもこシリーズの中に収めて、毛布の中に入る。リタの方へ擦り寄って、そのまま抱きしめて暖をとると、気を失うようにして眠りに落ちた。魔法で傷は癒せても、疲労までは回復しないんだと思いながら。







「な、なんじゃこりゃー!!!」


朝、珍しくラスターよりも早く目が覚めてテントの外へ出ると、朝日を浴びて森ゴリラの亡骸が散在していた。


寝ている間に何があった!?てか槍が転がってるぞ!?


見た限りでは全て切られて死んでいるようなので、犯人はラスターだと、名探偵コータはたどり着く。流石に数が数なのと、見逃せない個体が1匹いるのでテントに戻ってラスターを起こそうとする。


「待ってまってー!!!大変だったんだから起こすのは可哀想だよ!」


ピリカがどこからか現れて、テントの入り口でバツマークを描いて飛び回る。そういえば夜の見張りはピリカに頼んでいたし、口振りからしてもこの状況を知ってそうだ。



ピリカから話を聞いて、ほっとする気持ちと呆れた気持ちが混ざって溜息がでる。


あれだけの数の森ゴリラをラスターが倒せたことは不思議には思わない。それくらいにラスターの腕は認めている。


ただ、一頭の特別な森ゴリラ…森キングゴリラがそこに居なければだ。森キングゴリラの討伐推奨ランクは冒険者Aランク。群れで現れた場合はA Aランクまでその脅威は跳ね上がる。


幸いにも他は森ゴリラにちょっと武器がついた程度だったが、明らかにボスな森キングゴリラはそのままの脅威度だろう。現にピリカの話だと、ラスターは倒せたけど死にかけたらしいし、その結果、治癒したリタも魔力切れになってしまった。

倒せたことを喜んでいいのか、無茶するなと言うべきなのか悩ましい。



その後も、リッツやコジローが起きてきてもラスターやリタは目を覚まさず、結局出発したのは昼近くだった。


出発の遅れを取り戻すべく、早足で森を進むこと半日。日が沈む前に、俺たちは目的地らしき場所へとたどり着いた。


泉の中から大木が生えている。


まさにそんな光景で、遠くから見えなかったことが不思議なくらいに大きな木が、澄んだ泉に根を下ろして堂々と立っていた。


「着いたよ〜!ここが世界樹の泉!ただいま〜!!!」


幻想的な雰囲気に似合わないテンションでピリカが到着と帰宅の挨拶をする。



「おかえりなさいピリカ〜。そしていらっしゃい!子供たち!」


そう明るく迎えてくれた声の主を探すと、大木から横向きに美女の上半身が生えていた。

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