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冒険者ギルド直営のお肉屋さん  作者: 神崎ゆめり
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道案内とポトフ

「こっちだよー!」


「次はこっちね〜!」



ひらりひらりと蝶のように舞いながら、道案内をする妖精に続いていく。


一応こちらを気遣ってくれているみたいで、先に進んでも俺達が追いつくまで待ってくれる。それに魔物と遭遇もするし、何より6歳前後の足ではなかなか進めず、妖精が引き返してくるような状態だった。


「君のことは何て呼んだらいいの?」


明らかにこの森にしては格上のヒヒゴリラとの戦闘を終えて、一息つきながら尋ねる。


ヒヒゴリラは食べる部位はなく、しかもお金になるような部位もないという、冒険者泣かしの魔物だ。それでいてそこそこ強く、通常初心者なら確実に負ける部類だ。この規格外な仲間には通用しなかったけど。


それでも他の魔物より格上だったのと、長時間の探索の疲労から激しい戦闘になった。



「私はピリカよー!可愛いでしょ?」


「…そ、そうだね。」


6歳児にお世辞を求めないでほしい。

いや、お世辞でなく初めて見る妖精は可愛らしいんだけど。流石に前世日本人には歯の浮くような褒め言葉は出てこない。


「ところで、精霊のもとへはあとどれくらいで着くの?もしまだ時間がかかるなら、日も暮れてきたし夜の移動は避けたいんだ。」


薄暗い森の中なので分かりにくいが、そろそろ日暮れで辺りはさらに暗くなってきた。


流石に子供達の中で夜目が効く子はいないし、いても危険だ。


「うーん。人間の感覚はわからないのー。でも、このペースだと、着くのはもう一回お日様が上って沈む頃かなー?精霊様は人に見つからないように、もっともーっと森の奥にいるから。」


「ちなみに君が僕たちをダンジョンの出口に案内することは出来ないんだよね?」


リッツの指摘に、今更尋ねるべきことに気づいた。疲れと不安で冷静になれてなかったみたいだ。


「出口は無理よー。今のダンジョンは不安定で、道も変わっちゃったからわかんない。私が精霊様の元に向かえるのは、私が精霊様の眷属だから。」


「ダンジョンに何があったかピリカは知ってるの?」


「わからないー。ピリカが生まれてから、森がこんなことになるの初めて。」


なるほど、これはやっぱり精霊様とやらにまずは会うしかないか。


しばらく歩いて、本格的に陽が沈む前に森の中でも少し開けた場所、しかも小さな川が流れているところを見つけた。


全員が疲れた身体に鞭を打ちながら、俺の指示に従って夜営の準備をする。


本当は明日からが泊まり込みのダンジョン探索だったので、俺の収納やみんなの荷物にも、あるものとないものがある。


みんなの持ち物をひとまず把握し、簡単な調理器具やテント、食料と水、簡単な手当てが出来る薬類は持っていた。その代わりに、寝袋や毛布、タオルやランタン、ろうそくなどは今日買う予定だったのでほとんど持っていなかった。



テントの設置、調理と暖をとるための落ち葉や木の枝集め、飲み水の確保などを手分けしてする。


準備が終わると、俺とリタで夕飯の準備をして、他の3人は武器を洗ったり、周囲に魔物避けの罠を仕掛けてもらう。


まだ春先だから夜は冷え込む。冬の女神の影響で雪深い影響もあって、夜はがくんと気温が下がってきた。


疲れと空腹から、手軽に栄養も暖もとれるメニューということで、具沢山のポトフを作る。


コンソメの素なんて便利なものはないので、旨味が出るように、今日狩ったグリーンピジョンという緑色の鳩擬きで出汁をとる。野菜も切れ端は出汁の中に入れて旨味成分になってもらい、食べる部分は一口大に切っていく。


人参、玉ねぎ、じゃがいも、キノコを切り分ける。キノコについては、森で採取した様々な種類を切り分ける。もちろん毒がないことは確認済みだ。


出汁をとるために使っていた鶏ガラや野菜の端切れは除いて、鶏肉はたべれる部位は一口大に切っていく。ついでに太めのソーセージも切り分ける。材料を鍋に入れてしばらく煮込めば完成だ。


流石に野外でパンを焼く技術は無いので、せめてもの炭水化物としてジャガイモで作ったチーズおやきを添える。



みんなで、いただきますをして夕食をとる。


ポトフの味が冷えた身体に染みて、ホッと一息つく。



「シスター達、今頃みんな心配してるでござるな。」


ポトフを食べながらコジローが呟く。


「ダノンおじさん達が気づいて、冒険者ギルドも動いてるかもね。」


「これだけ歩いていて誰にも会わないし、人の気配がないから捜索するにしても難航するだろうな。」


「1日早めて予定外の夜営することになるとはなぁ。みんなと一緒で良かったよ。俺1人なら魔物にやられてる。」


最初は過剰戦力かと思ったが、この状況だと頼もしい限りだ。


「さっさと食べたら明日に備えて早く寝よう。あ、でも交代で見張りも必要か。」



「何か来たら知らせるだけならピリカがやろうか?」


特に食事を必要としないらしいピリカがらリタの膝の上で答える。


「妖精は睡眠も必要ないの?」


「たまーにお昼寝するくらいしか寝たことないよ?だから任せて!」


妖精を信頼すべきかはわからないけど、悪い子には見えないし、みんな疲れているのでピリカの言葉に甘えることにした。


皿や調理器具を洗って、川の水で身体も清めたら、みんなでテントの中に横になる。


みんなのもこもこシリーズの着ぐるみと、大人用の毛布が1枚あるのでみんなで身を寄せ合って毛布に入る。全員がこどもなので、毛布は縦横逆で横一列に並べば全員が寝れた。


相談した結果、この中で寝起きが悪く、夜の襲撃に一番弱いだろうリッツを真ん中に、左からラスター、リタ、リッツ、コジロー、俺の順で寝る。


寒さが残る中、全員で身を寄せ合って眠りについた。

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