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冒険者ギルド直営のお肉屋さん  作者: 神崎ゆめり
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燻製と装備

「そういや、坊主は今日から迷いの森に籠るのか?この調子じゃ、まだ外は寒いから凍死するぞ?」


朝食を食べながらダノンおじさんが尋ねる。


「今日は別の任務に行くムドーさん達にダンジョン近くまで送って貰って、日帰りにするつもり。晴れてるから明日には雪も溶けるだろうし。」


その辺りは帰り際にみんなで相談した。さすがに冬に野宿は初心者にはハードルが高い。



「…聖夜の後は魔物がうろつく。冬の装備がねぇんなら、爺さんの荷物でも借りてけ。ガキなら小人族の装備も入るだろ。」


「勝手に人のものを借りてけないよ。しかも装備なら壊したりするかもしれないし。」



「もう使うもんも少ないし持ってってくれるなら助かるのぉ。」


ちょうどいいタイミングで酒場の戸をくぐったオズワルドさんから返事があった。



「いいんですか?」


恐る恐る尋ねる俺。


「この酒場にあるもんなら持ってってよいぞ。流石にお気に入りは家にあるからのぉ。」


「やった!ラスター達も喜ぶよ。みんなお金はないから装備が不安だったんだ。」



不安も解消されたことだし、朝食をさっと食べて、ダノンおじさんと肉の仕込みに向かった。





「燃やす木の種類によって、煙の匂いが変わるんだ。だから、いろいろと試してそれぞれの肉に合うものを見つけないと。」


寒い作業小屋の中で、俺とダノンおじさんは燻製を試していた。ひとまずはこの時期に良く取れる木材のチップを燃やして燻す。


まずは試験段階なので、ベーコン、ささみ、腸詰めの燻製を試作する。


ベーコン用の肉は、ダノンおじさんが作っている塩漬け肉を一部貰う。腸詰めも、ダノンおじさん特製のハーブの効いたものと、ハーブを控えめにしたものの2種類を用意した。ササミはトッシン鳥のあまりを使う。



肉達はそれぞれ塩漬けされているものを、水で洗い流し、しっかり水気を取り除いて乾燥させてある。



倉庫には棚のような木箱の燻製器があった。


まずは試験的にやるので、棚の段になる部分に網を数枚貼って、肉汁が多く出るベーコンを下段に置いて、燻製するものを乗せていく。


本来なら食材別に燻すんだけど、今回は試験なので種類を多く作ることに重点を置いた。



木のチップに火をつけて温度を調節する。ここが今回一番大切なところだ。このためにダノンおじさんに取り寄せてもらった温度計と睨めっこしながら、約70度を保つように火加減と温度を調節する。



この作業が気が抜けなくて大変だった。リッツと相談して温度調節出来る燻製器でも作ろうと決意した。


朝早く起きはしたけど、俺も今日はダンジョンがあるので、後はダノンおじさんと興味津々のケイトに任せることにした。


2.3時間燻したら、冷まして置いておけば完成だ。


夜には試食出来るだろう。




孤児院からラスター達が到着すると、酒場の物置小屋に案内された。



そこからオズワルドさんがさまざまな装備を取り出す。


「そこの騎士見習いの坊やにはこれがいいじゃろ。ケルベロスのマントに黒竜のショートソードじゃ。どちらも大人になっても使えるからの。」


そう言ってラスターには黒地に紅の糸で作られたマントと、刀身が黒く光り輝く短剣…俺たち子供からしたら普通の長さの剣が渡された。


「魔術師見習いの坊やにはこれじゃの。精霊のローブに世界樹の杖じゃ。」


リッツに渡されたのは紺色に七色の糸で刺繍がされたローブと、見るからに年代物の木で出来て、柄の部分には白いハスの花のような花があしらわれた杖だ。


杖は小人用ではないらしく、リッツの背丈よりも大きいが不思議と重くはないようだ。



「そこの小さき坊やにはこれがいいじゃろ。猿王の毛皮鎧に竜王の棍じゃ。」


コジローには黒に近い茶色の毛皮の装備に、赤色に金縁の棍が渡された。持ち主の意思に従って大きさや長さが変えられるらしい。どこかの物語の棍棒みたいだな。


「そこの女子(おなご)にはこれじゃの。妖狐の外套に妖精のブーツじゃ。」


リタに渡されたのは、白銀のふわふわな手触りにフード部分には狐耳がついた外套と、ぱっと見は普通の茶色いブーツだ。なんでも軽くて丈夫で疲れにくいとのこと。


体力的に一番心配だったのはリタなので、このブーツはありがたい。



「最後は坊主じゃが、特徴がなくて困るのう。」


悪かったな、他の子供達がハイスペックで。


「お主はこれじゃの。旅人の帽子と毛皮のマントじゃ。」


「なんか俺だけ普通過ぎないか?」


「これも一級品じゃぞ。」


とりあえず貰えるなら貰っとくけどさ。



「ありがとう、爺さん。」



「ふぉふぉふぉ。お主らの活躍を期待しとるぞ。」



「あ、そろそろ待ち合わせの時間だ!みんな行くぞ!本当にありがとう!」


そう言って俺たちはムドーさん達との待ち合わせに向かった。



「伝説級の武器やら防具が捌けて肩の荷がおりたわい。これでギルドにも煩く言われんで済むのう。」









馬車は物凄いスピードで道を駆けている。馬車を引いているのは馬ではなく魔物だ。



アスブレットを車とするなら、魔物の引く馬車は新幹線といったところだろう。乗り心地は断然向こうが上だけど。



魔物の馬車に揺られていると、すぐに迷いの森に到着した。


ムドーさん達はこれから少し遠くの場所まで遠征になる。


「気をつけてください。任務の成功お祈りしてます。」



「そっちこそ油断して魔物に喰われるなよ?」



そうしてムドーさん達を見送って、俺たち…孤児院の精鋭達は迷いの森に足を踏み入れた。

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