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冒険者ギルド直営のお肉屋さん  作者: 神崎ゆめり
14/22

聖なる夜と豪華な朝食

「布団はあっても、毛布まではないか。」


マーティンからの紹介で働くことになった酒場の2階。俺ことケイトは、同じく酒場に住むことになったシシリーと、突然の寒波対策の為に毛布を探していた。


もともと宿屋をやる予定があったとのことで、整えれば使えるベットはあるが、毛布はないみたいだ。


俺が前に住んでいた寮は、家具寝具備え付けだったので毛布の待ち合わせはない。


「コートでも着て寝込むしかないか。」



流石に酒場の手伝いを始めて2日目、慣れないことが続いて疲労が溜まる。


とりあえずの気力を振り絞って、引っ越しの荷物から服を出して着替える。ちょうど着替え終わったタイミングで控えめなノックが聞こえた。


返事をすると、孤児院にいた時と変わらずに無防備な格好で入ってくるシシリー。


寝間着のワンピースは膝丈で、綺麗な素足が見えている。いつも三つ編みにしている髪の毛は降ろされている。流石に風呂はないが、シャワーは付いているので俺の後に浴びてきたみたいだ。石鹸とシシリー自身の甘い香りがふんわりと漂う。


「毛布見つかった?」


「いや、見つかんなかったよ。厚着して寝るしかないな。」


そういうと寒そうなシシリーは、俺の部屋のベットに腰掛けて、考え込む。


「どうかしたか?」


「…また買ったらいいかと思って、冬物の着替えとかコートとか売っちゃったんだよね。安宿に泊まるから最低限の荷物にしようと思って。」


それでそんな寒そうな格好なのか。


「俺の冬物のセーターとかで良ければ貸すぞ?」


「セーターでも寒そうだよね…そうだ。」



何かを思い付いたらしいシシリーは、ベットのそばに立つ俺を見上げる。



必然的に上目遣いになって俺に告げた。


「寒いし、一緒に寝よう?」





物心ついたときには、俺の側にいた誰よりも可愛い女の子。優しくて大人しい性格だけど、剣の腕はめっぽう強い。


俺の初恋であり、人生の大半片想いし続けて、昨日突然の再会を果たした。この2.3年はシシリーが冒険者として旅に出て、次に会う見通しも立たなくて後悔ばかりする日々。


次に会った時には想いを告げようと、万年ヘタレの称号を返上する気で過ごしてきた。


久しぶりに会ったシシリーは、可愛さよりも綺麗さに磨きがかかり、この街どころか国中探してもなかなか出会えないような美女になっていた。



なんとか言い訳をしつつ、一緒に働くついでに同じ屋根の下で再び暮らすことになったが、想いを告げる機会が掴めない。しかし、今がチャンスじゃないだろうか。


元々孤児院で兄妹同然に育ってきたので、断るのも変だと言い訳して同じベットに入る。


子供の時にも、寒いからくっついて寝たいと言って抱き合いながら寝たことも日常的にあった。



けど、この歳になるとちょっと意味合い変わらないか?すげーシシリーいい匂いするんだけど。


昔の癖で暖かいからとベスポジな感じで抱きしめちゃったけど、俺がデカくなったから腕にすっぽり収まるし、何より柔らかい。


混乱して硬くなる俺に反して、身体の力を抜くシシリー。


「なんかこうしてると懐かしいね。こうやって寝るの好きだったんだ。」


腕の中でそんなことを言われた日には、俺の理性が重傷を負った。なんだこの可愛くて愛しい生き物は。


俺が悶々と様々な欲望と戦っているうちに、静かに寝息が聞こえてくる。顔を覗き込むと、あどけない顔で眠る美女。こうしてると年齢相応に見える。


「…寝れねぇ。」


かなり仕事で疲れてはいるが、眠れそうにない。そして、折角の告白の機会も逃したみたいだ。


これから幾らでもチャンスはあるよな?今度こそは居なくならないように繋ぎとめよう。


少しだけ抱きしめる腕に力を入れて、抱き寄せる。子供の頃と同じように、そのまま唇を重ねた。


外はしんしんと雪が降り続いていた。








「ぐぉーーーーーー!」


「うるさーい!!」


寝床は用意すると言われたので、現在俺はダノンおじさんの住居にいる。寝床といっても、俺用のベットがあるわけでもなく、俺はダノンおじさんのベットに一緒に寝ていた。


何が悲しくて、髭もじゃのおっさんと一緒に寝なきゃいけないんだ。



しかも、寝相は悪い、いびきは物凄く煩いわで、一向に寝れる気がしない。


こんなおっさんと寝るくらいなら、シシリーに頼んで一緒に寝させて貰えばよかった。もちろん俺は子供だから下心はないぞ。あの着痩せしている大きな胸に抱きしめられたいなんて思ってないからな。




そんな風に聖なる夜は過ぎて行った。




朝起きると、夜中吹雪いていた雪はやんでいた。外は春の景色から一転して、白と銀色に包まれていた。吹雪が止むと、冬の女神が満足したということで、あとは春が戻ってくる。


今年は短く終わったな。



「おはよー。ケイト。」


「早いなコータ。初めての外泊で寝れなかったのか?」


欠伸をしている俺を見て、ケイトが尋ねる。言われてみると、これが初めての外泊になる。


「…ダノンおじさんのいびきがうるさ過ぎて寝れなかった。そういうケイトも早いね?」


俺が尋ねると、複雑そうな顔をするケイト。


「シシリーと何かあったの?」


「何でわかるんだ?」



基本なんでも器用にこなすケイトがまごついている時は、大抵がシシリー絡みだ。


「顔にシシリーが大好きって書いてるからね。」


その後、根掘り葉掘り聞いてみると、それはまぁヘタレな話が帰ってきた。


「で、結局は一晩中一緒に寝てたけど、何もしなかった訳?」


「何もというか…寝てるシシリーにキスはしたけど、それ以上は何も。」


「寝てるシシリーにキスなんて子供の時からしてたんでしょ?普通はもっと大人なことするんじゃないの?相変わらずだね。」


ケイトの相変わらずのヘタレっぷりと、ダノンおじさんと一緒に寝てた俺と真逆の環境に、強烈な怒りを覚える。思わず強い口調でケイトを責める。


苦笑いしながら、本気で落ち込み始めたケイト。自業自得なので、俺は慰めないぞ。




みんなが起きてきたところで、寝れなかったケイトの手の込んだ朝ごはんを食べる。腸詰めと春キャベツのスープ、ハムと野菜と卵のオープンサンド、デザートには果物がたくさん入ったヨーグルトカクテルまである。



「じゃあ今日は、冬の女神と春の女神に感謝して。いただきます。」



この世界はまだまだ不思議がいっぱいだ。ひとまずは前世流に。メリークリスマス。



今年も美味しい肉がいっぱい食べられますように。

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