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冒険者ギルド直営のお肉屋さん  作者: 神崎ゆめり
11/22

ハンバーグとポテトサラダ

それでは今日から早速働いて貰おうということで、仕込みをするとこになった。


3人の給金については、この後マーティンとギルドマスターで話し合うそうだ。


本来なら5歳児に任せる内容じゃないが、孤児院メンバーはマーティンの天才っぷりを知ってるし、ギルドマスターもマーティンの話っぷりから、本人達がいなくても問題ないと判断したようだ。



シシリーには仕込みの時間中に、安宿から荷物を引き上げて貰い、ひとまず生活に必要なものを買い出して貰う。


他の2人には、調理場でから揚げとナゲットの作り方を教える。ついでにダノンおじさんが作り置きするメニューも伝えて、基本的には酒場に出す食べ物は2人に任せることにした。


材料については、メインである肉類はダノンおじさんとその日の仕入れを見て調整し、肉以外についてはダノンおじさん経由か、元々手を回していたのかマーティンに頼めば届けてくれる仕組みになった。


俺はマーティンの出来っぷりに、いつかこの街はマーティンに乗っ取られるのではと慄いた。


から揚げとナゲット作りは順調だった。もともとが器用な異国出身のチャンは、俺の伝えた注意点に気をつけながらもひたすらにから揚げとナゲットのタネを量産した。


流石に5歳児に揚げ物は危ないと判断したので、揚げるのはケイトの仕事だ。


「これは騎士学院の食堂でも出したら流行るだろうな。濃い味付けにしたら、東の国で主食の米に良く合いそうだ。」


流石は料理を専門にしているだけある。騎士学院には世界中から留学も兼ねて生徒が集まるので、ホームシックにならないように外国の料理も扱うという。


トカーナは西側に位置する国だけど、東の方では米が主食の国もあるので食堂で取り扱っているとのこと。


昼間はから揚げドックとか作ったけど、やっぱから揚げには米だよなぁ。流通はしているみたいだから、値段だけ確認して給料が出たら買えないかケイトに確認しよう。


「このから揚げとナゲットだけど、俺が食堂のメニュー候補として出しても問題ないかな?アレンジしていろいろと作ってみたいんだ。」


ケイトの目がキラキラと輝いている。美味しい料理を作るときのケイトは、同性なのにドキッとする。味見でから揚げを食べる仕草もなぜかセクシーだ。解せん。


「僕は別にレシピを独占する気はないから問題ないよ。むしろ、鶏肉で出来る美味しいレシピとして広めて欲しいくらいだ。」


美味しい料理のレシピが広まれば、そのレシピに必要な鶏肉が売れるって寸法だ。



その後は今後の酒場のメニュー改革について話しながら、とりあえず今日提供するメニューの下準備をした。


新作を出す場合はオズワルドさんに試食して貰って許可を貰うこと、メインはお酒と肉なので当面はつまみ系のメニューを充実させることになった。


一部のメニューは俺とダノンおじさん預かりとなった。数日この酒場や肉屋のメニューを見て、試したいことが山ほどあるからだ。その為の仕込みは明日、ダノンおじさんとやる約束を取り付けて、あとは今日から働く皆んなに任せることにした。


酒場を出る頃にはシシリーも帰ってきていて、オズワルドさんが指定した服に着替えてきたところだった。


「シシリーさん、俺も帰りま…。」


「おお。やはり女子には可愛い服が似合うのう。」


「は、恥ずかしいです。オズワルドさん、履き慣れていないのでスラックスではダメですか?」


そこにはミニスカのメイドコスプレをしたシシリーがいた。美女が可愛い格好というギャップに、肉オタクである俺すら萌えてしまう。


もともと冒険者をやっていただけあって、スラリとした綺麗な脚にミニスカートとニーハイが、いわゆる絶対領域を作っている。大きく開いた胸元からは、冒険者服からは分からなかった程よい大きさの胸がのぞいている。


「眼福かな。眼福かな。」


これ、絶対爺さんの趣味だろ。

このまま店に立たせたら危険なんじゃ…。


それでも俺には、酒場の店主兼元Sランク冒険者に勝てそうな上手い口はない。


「オズワルドさん、そろそろこっちは準備出来そうですよ。」


調理場からケイトが顔を出した。

オズワルドさんに声をかけると、視線がシシリーへ向かう。そしてそのまま硬直した。見られたシシリーも顔を真っ赤に染めている。


おそらく数秒だったんだろうが、俺には長い時間経過したように感じた。



漸く事態を飲み込めたのか、ギギギとケイトがオズワルドさんに向かった。


「即効別の服を用意してください。何なら俺が用意します。」


「似合っとるし可愛いから、今のままでええじゃろう。」


「…確かに可愛い、というか可愛い過ぎるから、酔った輩に必ず絡まれます。俺が心配で料理が手につかなくなります。」


「えー。」


「えー、じゃねぇぞ爺さん。早く代わりの服出しやがれ。」


ちょ、ケイト兄さん、普段の穏やかな口調が荒いですよ?しかも相手は店主で強い冒険者ですよ?



「ふぉふぉ。なぁに冗談じゃよ。ここはそういう店じゃないからのう。」


そう言って代わりの服を直ぐに出してきた。念のためにシシリーが広げてみると、膝が余裕で隠れる丈のワンピースで、上がアイボリーのブラウス、下が茶色のスカートになっている切替型だ。そこに黒でふりふりしているが、ポケットが付いたエプロンを腰から巻くようになっている。


普通の制服に安堵したところで、シシリーは再度着替えに、俺は孤児院へと帰宅した。





孤児院に帰った俺は、早速マーティンの好物を夕飯のメニューとして作り出す。から揚げとナゲットを作る傍、ダノンおじさんに確認してミノタウロスは牛肉のような肉であることがわかった。


引き締まっている分、旨味が凝縮されている肉質だそうで、今夜のメニューにもピッタリだろう。


まずは肉屋で粗挽きしてきた挽肉を取り出す。腸詰めを作るために、挽肉をつくる機械があるのはありがたかった。


玉ねぎをみじん切りにして、フライパンにバターを入れて玉ねぎを炒める。


しんなりしてきたら火を止めて粗熱をとる。その間に付け合わせの野菜を切ってく。



挽肉に炒めた玉ねぎ、パン粉、卵、ナツメグ、塩、胡椒を加える。これを手で粘りが出るまで混ぜていく。


少しだけ手に油を乗せて伸ばす。その手でタネを整形する。小判型にしたら、真ん中を指で少しだけ凹ませる。


油を敷いて熱したフライパンに、タネを置いていく。焼き色がついたら、ひっくり返して弱火で蓋をして置いておく。


その合間にジャガイモやニンジンを茹でる。


火の通り具合を確認したら、強火にかけて赤ワインを少しかける。アルコール分が飛んだら、皿へと取り出す。


それを繰り返して孤児院のみんなに行き渡る分作っていく。


合間に茹でたジャガイモを潰し、ニンジンを刻み、きゅうりも細かく刻む。ダノンおじさんから貰ったロースハムの切れ端もさらに細かくして、材料を全て混ぜ合わせる。


特製のマヨネーズと塩、胡椒で味を整えればポテトサラダの完成だ。


フライパンで焼き終わった後の肉汁を使って、ソースを作る。湯むきしたトマトを潰しながら加える。そこに赤ワイン、塩、胡椒、マスタードを加える。


ウスターソースがあればよかったんだが、無いので少しの砂糖と炒めた玉ねぎで甘みと旨味を加える。


ソースができたら焼いたタネにかけていく。そしてその上に、固いチーズをおろし器で擦ったチーズをかけていく。


あとは朝の残りのパンも添えて、晩御飯であり、マーティンの大好物なチーズハンバーグの完成だ。



本当はチーズINハンバーグにしたかったところ、いい感じにとろけてくれるチーズに出会えず、俺が編み出したのがこのチーズハンバーグだ。


前世よりもハードのチーズの物価がこちらでは安いので、惜しげも無く使っている。


俺が作り終わる頃には、待ち構えるように子供達が席についていた。


「自分の分は自分で取りに来いよー。」


「「「はーい!」」」


元気よく皆んな自分の分を確保して席に戻る。

ちょうど、ギルドマスターと話をつけたマーティンがチャンと一緒に帰ってきた。


「おかえり2人とも。2人で最後だから席についてくれ。」


「ただいま。お、ちゃんと約束守ってるじゃないか。美味そう。」


マーティンは夕飯を見て満足なようだ。

ちなみに今日はマーティンにお礼があるからと、マーティンだけ大きめのハンバーグにしてある。


それもあってか、マーティンはかなりご機嫌なようだ。


「では、手を合わせてください。」


「「「いただきます。」」」


シスターの掛け声で、挨拶をする。


早速パクリとハンバーグを口の中に入れる。肉汁がじゅわぁと広がり、トマトのソースが味を引き締め、チーズが豊かな香りを加えている。


パンをちぎってソースにつけて食べる。ソース自体にも肉の旨味が加わっているので、これだけでもかなり美味しい。


ポテトサラダも食べていく。優しい味に少し歯ごたえのあるきゅうりとニンジン、塩気のあるロースハム、ホクホクのじゃがいもがマヨネーズと絡まって絶妙だ。



ハンバーグは孤児院の人気メニュー筆頭だ。いつもは誕生日のリクエストに多いが、今回は特別だ。こちらの世界でも牛肉にあたる肉が最も高値がつく。そういう意味でも特別なメニューだ。


今日はミノタウロスと出会えてよかった。

ゆくゆくは自分でも狩れるようにしないとな。





食後は年長組で、酒場とダンジョンの話をした。


「もともとケイトは、いろんな料理を作れるようになって、たくさんの人に食べて貰いたいから食堂で働いている。将来的には、ケイトの意思が固まったら独立して、冒険者ギルドの酒場で昼営業も開始すれば、収入的にも悪くはならない。」


マーティンがお茶を飲みながら語る。


「ひとまず必要なのは人手で、かつ将来もケイトと共に酒場を切り盛り出来る人材が欲しかったんだ。シシリーに会ったのは本当に偶然で、俺が言うのもなんだけど運命じゃないかって思うよ。あの2人は。」


シシリー以上の適任はいないということで、今日のような組み合わせになったそうだ。


シシリーは昼から夜まで働いてもらうことになり、昼はダノンおじさんの手伝い、夜は酒場の給仕で、給金も夜遅くまで働くからと値上げまでして貰ったそうだ。


チャンについては、本当にスポットの手伝いなのでお小遣い程度の稼ぎになる。それでも、自分の稼ぎには変わらないのでチャンは嬉しそうだ。



酒場の話が終わると、ダンジョンの話になる。ダンジョンに行かない年長組には既に伝えられている。


「明日まではムドーさん達がいるから、全員の力を見た上でフォーメーションとか、ダンジョンの注意事項とか話しておきたいって。あと、必要なら装備も見てくれるみたいだから、朝から冒険者ギルドで待ち合わせようと思ってるんだ。」


「もともと明日は開けとくように言われてたから大丈夫だ。」


全員がラスターの言葉に頷く。


「そういえばラスターはアスブレッドは扱える?近いって言っても結構距離があるから、アスブレッドに乗って行きたいんだ。俺は今日乗れるようになった。」


「あぁ。騎士学院では必須だから、乗ったまま戦うことも出来る。」


流石騎士だな。心強い。


「問題は5人だから、どうするかだな。流石に3人乗りは俺たちが小柄でも辛いかな。」


やっぱり誰かに明日アスブレッドに乗れるようになってもらうか。


「明日もアスブレッドは借りるんだよね?俺に案があるから、明日試させてくれないかな。」


リッツが案があると言い出した。

正直、リッツの案は碌なことがないから避けたい。けど、リッツ、リタ、コジローの3人は正直乗馬は難しいかもしれない。


リッツとリタは運動神経がそこまでよくないし、コジローは何故か動物に好かれない。


「明日やってみるけど、無理だと思ったら潔くお前がアスブレッドに乗るんならいいぞ。」


「たぶん大丈夫だよー。」


その笑顔が心配なんだよ。



「明日出かける前に、みんなの防具や武器をメモさせてくれ。ムドーさん達に渡せるようにしたいんだ。」


「別に今でもいいんじゃねぇか?」


確かにそうだな。


「じゃあラスターからで。持ってる武器と必要なものがあれば言ってくれ。」


「俺は武器も防具もひと通り揃ってる。武器は両手剣だ。騎士学院で1人ずつに支給される剣だ。防具は鎧一式持ってるけど、重いから胸当てと練習用の皮のグリーブを持ってこうと思ってる。」


ラスターは一式持っていると。


「僕は護身用のひのきぼうを持ってるよ。あとは来年入学用の制服が魔法耐性のあるローブだからそれが防具になるかな。」


リッツは物理攻撃に備えた防具は必要かもしれないな。


「拙者は何も持ってないです!」


うん。コジローは潔くてよろしい。


「…私は武器は使ったことないから。ない。防具は、神官服がローブって聞いた。」


リタは武器を持たせるかどうかも要相談だな。神官服は正直わからない。必要なら明日防具屋でローブの能力とか調べられないかな?


「わかった。みんなありがとう。明日は念のため今言ったものは持ってきてくれ。」


「「「「わかった(ん)」」」」



明日はみんなの実力を見るのか。実際みんなの本気ってあんまり見たことないから楽しみだ。



にやけながら眠った俺は知らなかった。

この孤児院の、この世代の子供たちが規格外過ぎることを。

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