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永遠にリスポーンする恋物語  作者: いのりさん
第二章 名無し編 ~最強執事だ~
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十七話目 【神が宿る少女】

「うわ、ひっでえな」


 フリュウは辺りを見渡して素直な感想を口にした。


「フリュウくん、侵入者はグルグル巻きにしといたよ」

「助かるよ」


 ヘイラン含む四人が到着した。

 学校に侵入したのはこの四人だけのようだ、安心して学校の敷地から国を見渡すと所々から黒い煙が上がっている。

 フリュウの悪い勘は当たった。

 アスト騎士団だけじゃなくウルク騎士団も侵入者を許してしまったようだ。


「師匠!」

「お、やっときたか」


 マイクが急いでフリュウ達のもとへ走ってくる。

 よっぽど長く走ってきたのか、肩で息をしてから落ち着いた。


「ヘイランか、んでそこのは」


 マイクは横目で知らない三人を見た。


「私の同士みたいなもんだよ」


 ヘイランは三人を庇うような位置に移動した。


「さて揃ったし、じゃあヘイラン、分かることは全部話して欲しい」

「……たぶんだけど、侵入者はルドベキア教徒の人、スーリヤからの名無しの援軍ってとこだと思う」


 申し訳なさそうにうつむきながら彼女は知っている情報を話した。

 実際名無しを団結させてしまったのは彼女なのだからその感情は仕方ない。


「それで私たちのするべきことなんだけど……、騎士団に任せて避難するか、参戦するか」

「俺は出るぜ」

「俺もだ」


 ヒュースとガイレンが答えた。


「……とりあえずマイクは家に向かったほうがいい、家族が心配だ」


 彼らの目的の1つに貴族殺しが入ってるのは聞いた、生徒を魔術の飛び交う町に帰らせるなど絶対やってはならないが、家族をむざむざと殺されてしまうようなら可能な限りのことをやって死んだほうが苦しくない、フリュウの人生がそうさせた。


「……分かりました」


 マイクがフリュウの意図に気づいた。正確に気づいたわけではないが、師匠は俺のことを考えての行動なんだ、と直感的に理解した。


「俺もついていくよ」

「なら私も」


 フリュウとマティルダからの同行の意、それがマイクにはとてもありがたかった。


「フリュウくん、私達もいくよ、これ以上迷惑はかけれない」

「……私も出ます」


 ヘイランを含む四人がうなずいた。


「俺じゃなくマイクに言えよ」

「はははっ」


 マイクは軽く微笑んだ。


「……ありがとう」


 だが知り合いを戦場につれていく、その意味を理解して気を引きしめると、真剣な顔をして言う。


「待ちなさい!」


 校門へ走ろうとした彼らを止める声。


「会長……」

「あなた達の身を危険にさらすわけにはいきません!はやく校舎へ戻りなさい」


 生徒会長としての責任、それだけではないようだ。多少だがフリュウへの嫌悪感もあるようだ。


「カレン会長だっけ、今は非常時だ、学校のルールなんて守ってる暇はないんだよ」

「部外者は黙ってなさい、ここにいるのが今は安全ではないですか」

「安全ねぇ、騎士団を突破する連中を学生が倒せるとでも?ここは相手に危険視されている、安全とは言いがたいね」

「皆で集まって守りあうのがこの状況での最善策です!」


 カレンの言ってることは正しい。だがフリュウからしたら正しいだけで感情が入ってないものだった。


「最善策は人によって変わる、安全でも杭が残る選択をお前はするんだな」

「何……」

「俺達は行かせてもらう、ルールブックで凝り固まった頭じゃ理解できねえよ」


 フリュウは走り出した、仲間も後に続く。


「……っ」


 カレンはその後ろ姿をただ見てるだけだった。




 ~~



 門前住宅エリア。


「……ここの住民の避難は終わってるようです」

「なら暴れてもいいんだよな」

「家を壊すなよ、お前は加減が下手だからな」


 7人は路地裏で状況を確認していた。

 住民の避難は終わってる、ルドベキア教徒のフード達は騎士団を警戒してここに残っているようだ。

 ここはウルク騎士団が近い、騎士団の集結を邪魔するのが目的だろう。


 ノアの得意魔術(得異と書いたほうが正しい)は透視、 創生者の目(クリエイトサイト) は彼女の固有魔術。魔力の流れを見ることができ、魔力のないものを透過して確認できる目を持っていた。

 魔力を練った特殊な壁を用意しなければ彼女の目から逃れられない。

 ノアの能力を知っているヒュースとガイレンは戦闘準備に入る。


「先天性の魔術、もしかしてノアはアルビノか?」

「え、うん……」

「アルビノには神が宿るって本当なんだな……」

「神って、そんな大袈裟な能力じゃないよ」

「いや、戦闘において情報量の差は勝敗に直結するからな、そんな謙遜するな」

「そう、かな」


 アルビノ個体とは突然変異などによって身体の色素がなくなった個体のことだ。真っ白な皮膚はとても美しく幻想的で神が宿ると言われるほどだ。


 ノアは自分の固有魔術を強みと思っていなかった、慣れない笑顔を返した。真っ白な彼女の笑みは神秘的に輝いている。


「私が鎧を纏って先にいきます、魔術支援をしてください」

「マティルダちゃん子供は危険だよ」

「ほら、ヘイラン頼んだ」


 マティルダが飛び出そうとするのを静止するヒュースとガイレン。

 仕方ないと言えば仕方ない。


「いや、マティルダさんお願いします」

「マイク先輩まずいっすよ子供は……」

「そうだ、さすがにそれは」


 マイクも子供扱いされて不満そうなマティルダに加勢する、だが二人は退かない、歳上としての責任がそうさせる。


「私、一応炎帝ですから!」

「へ」

「は」


 驚くのも無理はない。

 ヒュースとガイレンだけじゃなく、ノアとヘイランも唖然としている。


「まじですかフリュウさん」

「まじだ、マティルダ頼む」

「任せてください!」


 愛するフリュウに頼まれヤル気全開のマティルダ、今にも飛び出しそうだ。


「ちょっと待って、今イメージ送るから」


 ノアが長い術式を展開した。


「ヘイラン」

「どうしたのフリュウくん」

「いい仲間がいるな」

「でしょー、ノアに言ってやってよ、ノアったら全然自信つかなくてさ」


 自分の見ている景色をイメージとして他者と共有する魔術、 以心伝心テレパシー を発動した。

 この場にいる全員に侵入者の人数と位置の情報が流れ込んでくる。


「よっし、マイクはサポートお願い」

「マティルダさんは必要ないでしょうけどね」

「マティルダは左を頼む、俺は右をやる」


 マティルダが炎帝の鎧を纏った。

 フリュウは自己強化を積んだ。


「はぁっ!」


 路地裏から跳びだしたフリュウは地面の一蹴りで20m以上離れたルドベキア教徒のフードの男の目の前まで移動した。


「……!?」


 突然目の前に着地した甚平の少年に頭が回っていない。


「ぎゃあぁぁぁ!」


 男の悲鳴が響いた。

 フリュウの日輪丸はまったく抵抗を感じることなく男の腕を切り落とし、そのまま彼の意識を拒絶した。


「……!あいつを殺れ!」


 仲間が崩れ落ちるのが見えた。近くのルドベキア教徒は三人、全員が一斉に魔術を展開した。

 剣士と闘うのに充分な距離をとっていた、本来ならフリュウは蜂の巣にされるところだ。

 フード達の身体が赤い光を一瞬帯びる。

 だが魔術が発動することはなかった。


「炎竜撃!」


 フリュウの背後から極太の火柱が放たれた。

 フード達は炎に巻かれて絶命しただろう。

 ドガーンと大きな音を上げてフード達の命と共に住宅が破壊された。


「マティルダ……」

「あ……、すいません」


 炎帝の鎧を纏ったマティルダが両手を前に突き出している。

 そのままの姿勢で青ざめた顔で謝罪した。

 マティルダにも言いたいことはあった、「フリュウさん早く行きすぎです!」とか「あなたは死なないわ、私が守るもの」とかだ。だが家を壊した罪悪感で吹っ飛んでしまった。


「がぁー、出番なかったぜ」

「気にするなよ」

「ははは、すごいねマティルダちゃん」

「いいなぁ、私も戦闘用の魔術欲しかったよ」


 呆れながらもマティルダを褒める四人。

 誰でも子供には甘いのだ。


「……ありがとう」


 照れながらも笑みを返した。


「ノア、次の目標を頼む」

「分かったよ」


 フリュウの声に答えてノアは目を閉じて透視を始める。


「ウルク騎士団の本部かな、制圧されてるね」

「おっし行くぜ!」

「おっしゃぁぁぁ」


 ヒュースは熱い声、ガイレンは太い声をあげて走り出す。目的地ウルク騎士団本部へ突進していく。


「……一応敵にここら一帯を制圧されてるんだけどなぁ、分かってるのか?」

「連れ戻しますか?」

「あー大丈夫だよ、アイツら頑丈だから」


 ヘイランはあの二人を信頼しているらしい、何ともない顔で二人を送り出した。


「フリュウさん」

「ん、どうした」

「俺はアダムズ家に行きます」


 真剣な顔でフリュウを正面から見る。


「まだダメだ」

「どうしてですか!」

「危険すぎる、敵は騎士団を制圧した、つまり武器は充分に補充されているわけだ」

「しかしっ……」


 マイクの真っ直ぐな目を見ていられなくてフリュウはため息をついた。


「分かったが、俺が行くまでは逃がすことに専念しろ」

「はい!」

「それで挟撃して東側を殲滅する」

「分かりました!」


 マイクは真っ直ぐ家に向かった。


「……免疫つけないとなぁ」


 真っ直ぐな視線への免疫がない自分に呆れながらウルク騎士団の奪還へ向かった。

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