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永遠にリスポーンする恋物語  作者: いのりさん
第二章 名無し編 ~最強執事だ~
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十六話目 【名無しの二枚岩】

 貴族殺人事件の一報は瞬く間に国全体に広まった。

 次の日、フリュウは喫茶店に誘われた。


「……フリュウくん、ごめん」

「……気にするなよヘイラン、お前がやったんじゃないんだろ」

「でも」

「なら謝るな」


 喫茶店に一人の男子生徒が入ってきた。

 これでフリュウの前には名無しの生徒がヘイランあわせて四人、全員復讐者(アヴェンジャーズ)のメンバーだったらしい。


「……やっと揃ったね、えっと彼らは私の仲間みたいなもんだよ」

「俺はヒュース、フリュウこないだの演説から会いたかった」

「ガイレンだ、よろしくな二人とも

「ノアっていいます……」


 強気そうな燈髪のヒュース。

 大柄な色黒男のガイレン。

 髪の毛も肌も全て色白の気弱そうなノアって感じだ。

 ものすごい個性的メンバーだ。


「こちらこそよろしく」

「マティルダです」


 可能な限り友好的な笑顔で二人とも挨拶をするが、フリュウは口下手でちょっと微笑んだ程度になっている。

 そのかわりマティルダは少女特有の悩殺スマイルを披露している。フリュウのかわりと言わんばかりに印象を良くしている。


「フリュウくんには皆感謝してます」

「ふふふ、それはどうも」


 ノアが真っ白な髪を揺らして頭を下げた。

 それに答えるようにフリュウも軽く下げる。


「でも……、また迷惑かけるかもなんですけど、話聞いてくれますか?」

「殺人の件か?」


 フリュウの言葉に四人全員がどうじにビクッと体を震わせる。図星らしい。


「フリュウさんは昨日の夜現場に行きましたもんね」


 マティルダが含みのある笑みをしてフリュウを見た。


「あー、ごめんねマティルダ」


 フリュウは結局朝まで帰ってこなかった、添い寝の途中で出ていってしまったことを謝罪する。


「それでどこまで分かったんですか」

「ああ、幻魔術が使われたことだけだが、時期的に名無しの暴動だろ?」

「……すいません」

「だから謝るなって」


 まるで自分のことのようにヘイランが頭を下げてくる。

 名無しの同士を集める場をつくってしまったのは彼女だ。だからこそ悔やんでいた。


 その他にも、破られたゲートはアスト騎士団の管理下のものだった、取り逃がした侵入者は30人以上は確実、そして少なくともアスト王国内に門の管理騎士団の情報を持っているスパイがいるということが分かっていた。

 もしウルク騎士団の門の情報もバレているのならこの学校も危ない。

 ウルク騎士団の門とこの学校はすぐ近くだ、正門からではなく裏口からすぐに入ることができる。


「それでな、フリュウ」

「ああ」

「名無し達が、貴族殺しに入った」

「まじかよ……」


 ヒュースの言葉はフリュウを呆れさせるには充分すぎた。


「ルドベキア教徒が名無しに多いのは知ってるだろ」

「ああ、平等を掲げてるからな」


 ルドベキア教の平等主義は名無しの心をガッチリと掴んでいる。

 名無しの8割ほどはルドベキア教徒だ。


「けどルドベキア教ってわりと黒い噂聞くぞ?」

「そこなんだ。ルドベキア教の本拠地のスーリヤは位置的に魔界に近い」

「魔界からの差し金も考えられるわけか」

「ああ」


 人の欲望の隙を狙って操る、許せないことだ。

 それ以外にもフリュウは魔界とはいろいろ因縁があった。


「話を聞かせてくれてありがとう、今日は帰るよ」

「へ?まだ朝」


 ノアが口を挟んだ時。


「……!」


 炎が飛んできた。


「あぶねっ」


 フリュウが左腕でノアを庇う。

 左腕に炎が当たることはなく、拒絶されて消えた。


 喫茶店に男が四人入ってきた、いずれも魔術を待機状態にして威嚇している。


「大人しくしてろよ、死にたくなければな」


 魔術を待機状態にしている時点で、人数有利は覆っている。

 喫茶店の中にいるのはフリュウ達を含めて12人、待機させている魔術はどれも中級以上の範囲攻撃だとすると防御魔術を発動する前に殺される、もしくは被弾して乱されるからだ。


「この学校の生徒は全員脅威になりうる、だから殺せと言われているんでな、大人しくしてれば苦しまずにすむ」


 作戦は完璧だった、周囲にきづかれず、まずは一階の喫茶店の少人数から殺していく。

 だが、その作戦も彼の前には関係ない。

 圧倒的な力は、どんな逆境でも覆してしまう。


「ちょ、フリュウくん」

「フリュウさん、待って」


 フリュウは帰ろうとするのを諦めてない、マティルダも彼についていく。


「ん?なんだ、お前から死にたいのか」

「いや、邪魔だからどいてくれない?」


 この発言は挑発以外の何者にもならない。

 男の顔が歪んでいく。


「なめやがって、死ねや」


 発動した魔術は 血の猟犬(ブラッドハウンド) 、誘導弾と呼ばれる中級魔術だ。

 このような複数戦闘においては最適の魔術だ。

 だが、男が見たのは魔術の直撃を受けても倒れない少年の姿。


「……何がおきた」

「ギリギリで衝撃反転の魔術を使ってるのか?」

「でも魔術を発動する兆候はなかったよ」


 喫茶店の中にいるの生徒達にざわめきが起きる。

 この騒ぎは侵入者の焦りを誘った。


「黙れ!」


 他の三人からも血の猟犬(ブラッドハウンド)が放たれる。

 だが全てフリュウの横を通った瞬間に爆発した。


「ぐぅ、ふざけるな!」


 魔術が効かないと判断した侵入者は用意していたナイフで斬りかかる。

 だがこれは更なる悲劇を呼ぶ行動だ。


「正解だよ、この距離なら剣のほうが強い」


 フリュウは斬りかかるナイフを避けて、その腕を切り落とすと、続けざまに後ろにいた魔術三人を凍らせていく。


「ヘイラン達」


 喫茶店の中の時間がフリュウの一声で動き出した。


「……な、何」

「謝るくらいなら、協力して」

「え?」


 フリュウの言ってることが理解できないようだ。

 四人はフリュウのもとに駆け寄ってくる。


「ふふふ、名無しの仲間の暴走をとめるんだよ」


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