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永遠にリスポーンする恋物語  作者: いのりさん
第二章 名無し編 ~最強執事だ~
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十話目 【その男、竜帝につき】

「すっかり定位置になったね」

「……はっ、師匠!おはようございます」


 いつも組手で使っている大学の敷地内の芝生。マイクはそこで眠っていた。

 尊敬する師の声で慌てて起きあがる。

 今日は珍しくマイクが早くに登校していた。


「えっと……、どちら様で」


 マイクは二人の後ろを見た。

 今日はフリュウとマティルダの他に付き添いがいた。

 その付き添いとはもちろんあの人である。


「紹介するね、この女性がレイティアだ。

 一応俺より強いから、口には気を付けるように」

「もうっ、私はか弱い乙女ですっ」


 レイティアは不満ありげに口を尖らせる。この世界でも、男は強く女は淑やかというのがいいとされている。強い女性というのは男に劣等感を感じさせてしまい、男受けはよくないのだ。


「へっ、師匠よりですか、マイク・アダムズです。よろしくお願いします!」


 マイクは緊張した面持ちで深々と一礼した。

 レイティアが名無しだと気づいたようだが、実力主義なマイクは気にしないようだ。


「マイクくんね、フリュウくんから話は聞いてるよ、すごい才能を持った生徒だって」

「え、はい!ありがとうございます!」


 カチコチとした動きで深々と礼をした。


「……じゃあマイク、始めようか」

「はい!」


 マイクは尊敬するフリュウにどう思われているのか心配だった、よく思われていると分かり、やる気に満ちた目をして彼に挑んだ。


「へぇ、なかなか強いねぇ」

「そうですか?レイティアが接近戦がまったくダメなだけですよ」

「厳しいねマティルダ、もしかして嫉妬してる?」

「そんなんじゃありません!」


 二人の組手を女性二人が観戦している。

 組手と言っても剣術も魔術もありだ。

 マイクは自己強化をガン積みしてフリュウに襲いかかるが、風水流で全て流されている。

 フリュウは名のっていないだけで、剣術も帝級レベルだ、そのレベルの風水流はどんな攻撃も流してしまう。


「フリュウくんとやってあれだけ耐えれたのは大金星じゃない?」

「ちょっと体制を崩されただけで防御ができないなんて、まだまだです」


 マティルダはマイクには辛口なのだ、名無しと対立しているというのが大きな原因で、あまりよく思ってない。

 レイティアからしたら二人の動きを再現できる気がしない、マイクもそれほど高いレベルにいた。

 フリュウは今日の訓練でマイクに一度だけ本気を出した。

 マイクはすごい距離飛ばされ、気を失った。




 ~~



「暇だな」

「暇ですね」

「暇ね」


 三人は芝生で寝転んでいる。日向ぼっこだ。

 午前中はマイクの特訓についあい、食事をとった。午後はマイクが授業にでるため、フリュウ達はすることがないのだ。


「ほんとに今日やるのか?」

「延期になるかもしれないわね」

「じゃあもう一回添い寝しよ……」

「じゃあ俺も一眠りするよ」


 マティルダがフリュウの体に寄り添って眠ってしまった。

 愛らしい娘に癒されながらフリュウも目をつぶった。


「いいんですか?怪我人でても」

「ちょっとくらい貴族にも痛い目見せればいいんだよ」




 ~~



 校舎では不思議なことが起きていた。

 とある共通点を持った生徒達が急いで校門の前に集結した。


「私達は、このような待遇に納得していない!」

「名無しの同士達よ!立ち上がる時だ!この腐った差別を根絶やしにしよう!」

「生徒会を呼んでこい!お前ら雑魚は話にならん!」


 校門に集結した生徒の共通点は名無し、そして復讐者アヴェンジャーズのメンバーだ。

 彼らは魔術を待機状態にして威嚇している。

 校門を占拠したのは生徒を帰さないため、もちろん他にも出口はあるが、これは貴族達への挑発だった。ここで別の出口を使って帰ることは逃げるのと同じ、名無し達を見下している貴族達にはそれはできない。

 正面から勝負を挑んだ名無し達に、貴族は正面から戦いを挑むしかなかった。


「生徒会の連中を叩けばいいんだろ?」

「はい、お願いします」

「報酬ぶんの働きはしてやる、だが、お前らが言っていた帝級のやつはどこにいる」


 名無し達の中で一際目立つ、生徒ではない男がいた。

 ヘイランと話をしている、深紅の髪の毛を後ろで束ねた長髪に赤い尾をもつ男。

 名をザイフリート・ドラゴンロード。知る人ぞ知る有名人だ。


「生徒会が来たら、ついてくると思いますよ」

「ほう」

「それまでは、邪魔する貴族を蹴散らしてください」

「了解だ、雇い主(マスター)


 貴族達は罵声を浴びせながら、集まった名無し達に向けて魔術を発動させた。

 色とりどりの色に輝く貴族達、属性をバラけさせることで対応されにくい。

 本来なら名無し達は貴族の数に任せた魔術を相殺しきれずに倒れる、最悪死亡する恐れがあった。

 たがここにはザイフリートがいた。

 界神第7位ザイフリート・ドラゴンロード、竜帝だ。


「ふんっ」


 ザイフリートが右手に持った槍を横に薙いだ。

 魔術で強化された槍からは衝撃波と共に竜属性の波動が発動された。

 竜属性には魔術を破壊する能力をもつ。

 貴族達が発動させた魔術は名無し達にとどく前に空中で四散した。


「なら、その帝級がくるまで遊んでやるか」

「お願いしますね、くれぐれも殺さないように、殺しては私達の立場が悪くなる」

「ふっ、殺さなくても立場が悪いことには変わらねぇと思うが」

「ギリギリなんですから、これ以上悪くはできない」

「報酬はたっぷり貰ってるからな、任せときな」


 ザイフリートは狂暴な笑みを浮かべると、加速魔術を自身にかけた。


「ぎゃあぁぁぁ!」


 貴族の一人が餌食になった。

 この世界の一般的な剣士の遥か上をいくスピードで突っ込んでくるザイフリートをとめることはできず、左肩に槍を受けて倒れた。


「てめっ!」

「この野郎!」


 餌食となった男子生徒の友人だろうか、近くにいた生徒二人が魔術を向けた。

 だがそれは失敗だ、この距離で魔術師が剣士に勝つことはできない。

 この距離では魔術より剣のほうが速い。


「ヒィッ……」

「逃げろぉぉ!」


 悲鳴は周りからだ。

 ザイフリートの振り回した槍が生徒二人を吹き飛ばした。殺さないように刃ではなく柄の部分で力任せに吹き飛ばしたのだ。


「どうする雇い主(マスター)

「……前進しましょう」


 名無し達は校舎に戻った生徒達を追って前進した。

 差別をなくすために。




 ~~



「……!」


 レイティアは見た。

 一瞬だけですぐに消えてしまったが、あれは確かにドス黒いオーラだった。

 ドス黒いオーラ、竜属性の光だ。

 血のような特殊なこの世界における警戒色、見間違えるはずがない。


「フリュウくん、起きて」

「ん……、どうした」


 フリュウは寝ぼけ眼で見たレイティアの顔があまりにも真剣だったから、一瞬で目が覚めた。


「竜人族がきてるみたい、生徒達が殺されちゃうよ」

「はっ、マジかよ……。復讐者アヴェンジャーズ本気マジになったなぁ」


 竜人族は人族の倍ほどの身体能力を持っている、士族と共に恐れられている種族だ。


「レイティア、マティルダを起こしてからついてきて」

「分かったわ」

「怪我人は30人くらいで頼むぜ」


 フリュウは黒い翼を背中にはやして、急いで校舎へ向かった。




 ~~



「おい、お前か」

「ん?」


 校舎へ向かってゆっくりと歩いていくザイフリートを呼び止める者達がいた。


「お前か生徒達に暴力を振るったという男は」

「そうなるな」

「部屋でゆっくり話を聞こうか、あとそこの生徒達もな」


 生徒会と教師達だ。生徒会は腕自慢の生徒ばかりの6人だ。教師は腕に自身のある者達、ざっと20人といったところか。

 全員何かの分野で上級をもつ実力者だ、アスト王国の中でも実力はトップレベルの猛者だった。


雇い主(マスター)、やるか?」

「はい、三人では少なすぎる」

「だよなぁ!」


 ザイフリートは気合いの入った声と共に槍を横に薙いだ、すると瞬く間に身体中からオーラが流れ出てくる。

 竜人族だけが持つ特性、竜闘気だ。

 竜闘気は物理攻撃を受け止め、竜属性を持って魔術を破壊する。竜人族の強さの1つだ。

 ぶっちゃけ拒絶の下位能力である。


「滅竜爪!」


 衝撃波が巻き起こった。

 意識を刈り取るだけの力を持った衝撃波は、一撃で上級の猛者の数を半分にまで減らした。


「さぁて、生け贄になってくれや」


 薙ぎ払われた槍はとある男子生徒の前で止まった。


「ぐっ……」


 マイクである。

 マイクは右肘を曲げ、身体の横でかまえてそれを受け止めていた。

 手を強く握り、奥歯を噛みしめ、身体中の血管を浮き出させて渾身の力で竜帝の一撃を受け止めている。


「お……、やるなぁ」

「師匠と比べたら……、全然軽い!」

「お前の師匠が帝級か、お前は後回しだ」


 ザイフリートはマイクを離れ、残った半数に槍を向けた。

 全て一撃で、急所を避けているため死んではいない。

 瞬く間に残っているのはマイクだけになってしまった。


「……まじかよ」

「さぁてと、校舎のほうも潰しにいくか」

「待てお前、何が目的だ」


 マイクは睨み付けて立ちふさがった。


「目的か、俺は金稼ぎだが、雇い主(マスター)は違うようだ。名無しへの対応の改善だったか」

「くっ……、こんなやり方で!改善を求められて!了解がとれると思っているのか!」


 マイクは名無し達を睨み付けた。

 その質問に答えるようにヘイランは前に出た。


「ここで変える必要はないわ、ここで起きたことは国全体に届く、私達のこの暴動は国全体に広がって、いずれ改善される」

「ふざけるな!暴力で成り立った正義は崩れる!」

「なら貴族がその例よ、権力を振りかざすだけの貴族にそのまま言い返すわ」


 マイクとヘイランの間に火花が散るようだ。


「らしいぜ、まだ止まれねぇ」

「くっ……」


 マイクの意識を刈り取るために、槍が突き出される。

 彼は反射的に目をつぶった。

 だが、不自然なまでに何も感じない時間が過ぎていく。


「……?」


 マイクは目をゆっくりと開いた。

 そこには彼を守るように薄い氷の壁がたっている。

 槍は氷に阻まれ、ギチギチと音をたてている。


「師匠!」


 反射的に声をあげた。

 姿が見えたわけではない、だがこんなことできるのは彼が知っている中では一人しかいなかった。


「えっと、怪我人は28人か、いい感じだな」

「ほう、やっときたか」

「……!界神第7位ザイフリート・ドラゴンロード」

「へぇ、俺のこと知ってんのか」


 フリュウは驚愕の声をあげた、こんな大物がなぜここにいるのか理解できなかった。

 界神とはこの世界の強者9人のことを指す。

 界神5位までは神達が占領しており、6位から9位までが一応だが人となっている。

 つまりザイフリートは人ランキング2位なわけだ。


「知ってるとも、2位の人だろ」

「ふっ、2位だからって……あんまなめるなよ」


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