九話目 【甘い時間は根回しの後で】
通称、神の家。
食卓は暖かい雰囲気に包まれている。
「ははは、それで氷付けにして帰ってきたの?」
「ふふふ、無礼な人達には容赦しないからね」
レイティアはいつもより機嫌がいい。理由はフリュウからの「お願い」だ。
想い人に頼み事をされて気分が良くなるのは人も神も変わらない。
うっとりした顔をしながらアップルティーを飲みほす。
なぜ酒じゃないかって、フリュウが酒がダメだからだ。コップ一杯で酔うくらい。
酔った気分をフリュウだけ楽しめない、フリュウloveな三人はそれをできるはずないわけだ。
そういうわけで食卓にアルコール類が並ぶことは滅多にない。
「でもねえ、帝級魔術師に振り回される一般人、かわいそうだねぇ」
「「「……」」」
「仕方ないことだろ?どの世界も強い者に振り回されるのが民衆だよ」
ワイングラスの中のアップルティーをぐるぐると回して雰囲気を出すレイティア。
満足そうな顔をして抹茶アイスを頬張るフリュウ。
フリュウを除く三人は同時に同じことを思った。「世界線を変えられるお前がそれを言うのか」と。
「クーデターは明日、その情報が嘘にならなければだけどね」
「フリュウくんが絶対零度使ったせいで延期になるかもだけど?」
「とりあえず、備えておくべきだろ」
席順的にフリュウとレイティアは向かい合わせだ。他の人が会話に入りにくい。
マティルダとミコトはムラマサに助けを求めるように視線を注ぐ。
食卓は長方形の机。フリュウとマティルダが隣りでレイティアとミコトと向かい合わせ、横の辺にムラマサだ。もう1つの辺にはたまに遊びに来る運命神の席となっている。
「ちょっとお二人さん」
ムラマサが助け船を出す。
「ん、どうかした?」
「何よムラマサ」
「いや、ミコトが話に入りたいって」
「なっ!?ななな何言ってるの!」
期待通りの助け船ではなく、突破口を開いただけだった。
巫女服をヒラヒラさせてワタワタと手を不規則に動かして焦るミコト。
「えっ、えっとですね、フリュウさん今日は何回マティルダに抱きつかれたんですか!」
結局ミコトは頭から湯気を出してオーバーヒートしてしまった。
プシューと顔を真っ赤にしてうつむく。
「ことあるごとに抱きつかれるから10回くらいじゃないかな」
この一言でミコトは完全に復活した。
復活した上でジト目になる、器用なやつだ。
「へぇ、マティルダはいいご身分ですねぇ」
「ほんとよね、娘っていいなぁ」
「ぅぅ……」
マティルダに二人の嫉妬の眼差しが突き刺さる。
しかしマティルダには切り札があるのだ。
「フリュウさん、二人に虐められそうです」
「はぁ、ダメだぞマティルダは子供なんだから」
二人は「中身は子供じゃないんですよ!」と叫びたいが、世界線を越えてきた者はそれを匂わすような事をしてはならない。話しても信じてもらえるとは思えないが。
「……はぁ、それでレイティアにはクーデターの時に一緒に学校へ行ってほしいんだ」
「私は構わないけど、報酬は高くつくよー」
冗談半分で笑っている。冗談半分、つまり半分は本気だ。
「ならミコト頼むわ」
「はい!任せてください!」
「え、ちょっと待ってズルいズルい!」
やったぜ。と言わんばかりにミコトは自信満々で自身のない胸を叩いた。
たまらずレイティアは抗議の声を上げる。
「だって報酬高いって……、レイティアのことだからすっごい宝石を要求してきそうだし……」
「フリュウくんは私のことなんだと思ってるのよ」
「宝石収集家?」
レイティアは間違いなく宝石収集家だ。
宝石はコレクションではなく武器である。魔石と呼ばれる宝石は魔力を付与することで様々な効果を発揮する。レイティアの基本的な戦闘スタイルだった。
「とりあえず聞いてみてよ……」
「悪いなミコト、レイティアの答えを聞いてから考えるよ」
「はい……」
フリュウとて男だ、女性二人を同時に悲しませてしまって何とも思わないような酷い性格はしていない。
「報酬は何がほしい?前払いでもいいよ」
もう悲しませないように優しく微笑んで話しかける。この家における悩殺スマイルだ。
「え、じゃあフリュウくんの心を」
レイティア渾身の上目使いもフリュウには効果がない。
「ミコト、明日は頼んだ」
「待って待って、違うからぁ」
~~
アスト王国、アストラル城。
「邪魔しまーす」
「お邪魔します」
ここに無礼な侵入者が二人。
もちろんフリュウとマティルダの親子である。
城に侵入したのだから、当然のように騎士が群がってきた。
「貴様!何者だ!」
お揃いの装備をした騎士が鋭い声で熱く言い放つ。
アスト王国は平和な国ランキング1位だ、久しぶりの侵入者でやる気になっていた。
「こんなことなら認識拒絶しとくべきだったな」
「……なんでしてないんですかぁ」
しかし侵入者二人は熱くなったりはしない。むしろ余裕の声だ。
「レイティアがよく服を盗みに行ってるから平気かなって」
「神って皆どこか抜けてますね……」
衝撃のカミングアウトにも動じない、もうマティルダは馴れた。
「貴様ら!名を名乗れ!」
「フリュウ」
「マティルダです」
素直に名乗られて調子が狂ったのは騎士のほうだった。
「……この城に侵入して!ただですむと思うなよ!」
「あー、大丈夫、アストラル王に用があるだけだからさ」
騎士を無視して歩き出す二人。
騎士達は攻撃を開始した。
「とまれ!」
パキィッと騎士が持つ槍が拒絶される。
「なっ!?」
それでも攻撃をやめないあたり、王への忠誠が強く出ている。
「……マティルダ、おいで」
「え、はい!」
マティルダが歓喜の声を上げてフリュウにお姫様抱っこされる。
彼女は暖かい拒絶に包まれた。
「任務の邪魔してごめんね」
そういうと二人の姿は霧のように消えた
「……消えた、探せ!どこかにいるはずだ!」
フリュウが認識拒絶を発動した。
フリュウとマティルダの姿、二人によって起こされる震動は誰にも認識されない。
騎士を余裕で振り切って二人は王の間についた。
ここは王の私室だ。
認識拒絶を消してからコンコンとドアをノックする。
「何か用ですか?」
「失礼します」
「……失礼します」
王はすぐに気づいた。
「フリュウさん、どうしました」
「ちょっとしたお願いです」
アストラル国王は青髪を短くまとめた20代の青年だ。
彼は並外れた才能を持ち、若くして国王の座を譲られた天才だ。
無論、フリュウと比べたら劣るのは仕方ない。
「衛兵が騒いでましたが、あなたでしたか」
「はは、申し訳ない」
「安心しましたよ、後で衛兵には伝えておきましょう、友人が遊びにきただけだとね」
「それはありがたい」
フリュウとアストラル国王は師弟関係だ。
アストラル国王は彼の後ろにぴったりとついてくる小さな少女に目をやった。
「フリュウさん、結婚したんですか?なら教えてくだされば僕も出席したのに」
「結婚って、私とフリュウさんはそんな関係では……」
マティルダが顔を真っ赤にしてワタワタと手を動かす。恥ずかしいよアピールだ。
だが、二人の認識には違いがあった。
「いや、娘さんなのかと……」
「……」
こんどはマティルダがプシューと湯気を出してオーバーヒートした。
フリュウloveが一人で爆発したのだから仕方ない。
「まぁ、娘だが、結婚してない」
「……ダメですよフリュウさん、デキてしまったのなら女性には責任をとらなければなりません。誰ですか、ミコトさんかレイティアさんか」
「いや、俺の娘ではないから……」
「……そうなんですか」
残念そうな顔でアストラル王はイスに座った。
「どうぞ、お二人も座ってください」
「ふふ、そういう王こそ女の一人もいないようじゃないか」
フリュウは高級そうなイスに座り反撃を開始した。
「いや、なかなか好みの女性がいなくてですね」
「この国の貴族どもは変態だからなぁ」
「はは、どうりで風俗が発展するわけですよ」
アスト王国は平和な国だ、それゆえに貴族の男は刺激を求めている。酷い例としては、開拓者としてお忍びで依頼を受けて死亡したという事例もある。名無しへの差別もその刺激の1つになっていた。
そして一番人気なのは普通では考えられないようなプレイである。
そのせいで貴族に嫁入りしたい女性が減ったという大問題だった。
「お前のしたいプレイの話は置いといて」
「置いとくんですか、何ならフリュウさんの好みの女性を紹介しようと思ってたんですが」
「大きなお世話だ」
そしてフリュウはようやく気がついた。娘が真っ赤な顔でうつむいてることに。
マティルダを普通の少女として扱っているのなら絶対に聞かせてはいけない会話になっていたが、彼女も興味津々なのでセーフだ。
「……ごめんねマティルダ、聞かなかったことに」
「フリュウさん」
「はい」
「フリュウさんの好みのプレイって何なんですか」
「……え」
好奇心は身を滅ぼす。今の状況で滅ぶのはフリュウのほうだが。
「ふふふ、愛されてますね」
「悪いな、それはマティルダが大人になっても興味があったら話すよ……」
フリュウは娘の頭をなでる。
マティルダはなでれば解決するということを知ってしまった。
「それで、ここからが本題だからな」
「だいぶ前置きが長いですね」
「明日、学校のほうで名無しのクーデターが起きるかもしれない」
「ほう」
興味津々といった顔でアストラル王はフリュウを見た。
「それを鎮圧してくれと?」
「いや、逆だ」
「……どういうことです?」
アストラル王の目が鋭く光る。
「国、及び騎士団は邪魔をするな」
「……理由を聞かせてもらえますか」
「チャンスだと思わないか?差別を根絶するための」
「チャンスですか?」
「ああ、名無し達がようやく意思表示をしようって言ってんだ、好きなだけやらせようぜ」
「……名無し達が勝てるとでも?」
「勝てるはずないだろ、貴族らも同じだ、名無しを永遠に格下として見下せる未来をつくるチャンス、逃すはずねぇな」
「ならば怪我人を出さないために早めに鎮圧を」
フリュウは右手を大きく前につきだした。待った!のポーズだ。
「待てよアストラル、その暴動は俺がとめる」
「……なら忠告する必要ないでしょう」
「いや、暴動をとめてからだ。国及び騎士団はこの暴動に触れるな」
「それもフリュウさんが?」
「そうだ」
フリュウの太い強い声にアストラルは黙った。肯定しか選択肢がなかった。
「分かりました」
「協力に感謝する」
~~
「フリュウさん」
せっかく城にきたということで再びの庭園デート。マティルダはフリュウを見ずに問いかけた。
マティルダは悔しさでドレスを握りしめていた。
「どうしたの」
フリュウはマティルダの気分が荒れているのに気づかないふりをして優しく返した。
「名無しの人達は……、どうするんですか」
「どうするとは?」
「暴動はたしかにダメですけど、それではかわいそうじゃないですか」
マティルダはフリュウに涙ながらに問いかける。
娘の初めて見せる自分への怒り。
彼は困った顔をして、目の高さをあわせた。
「そう言えば、言ってなかったね」
「なんっ、ですか」
ハァハァと深く息を吸って落ち着こうと努力するマティルダ。
泣き顔を想い人に見せたくない。
「当たって砕けろだよ」
「へイランさんに言った台詞じゃないですか」
「そうだ。当たっていくのは名無し達だ。砕くのは俺。」
「結局砕くんですね」
寂しそうな目をしてマティルダは目をそらした。
「まぁ待て、砕くのが貴族連中だったら、確かに名無しは終わりだ」
「貴族だったら?」
「そうだ、子供は後先考えずにぶつかる、そんな生き方でいい。
上手に砕くのが、できる大人の仕事なんだよ」
フリュウはニカッと男前な笑みを浮かべた。
それにつられてマティルダにも笑みがこぼれる。
「心配するなよ、俺はできる大人だからな」
「うん!」
~~
「はーわわわわわわー」
「きゃぁ!」
ドッシーンと音がしてマティルダがミコトをベッド押し倒した。
マティルダは涙目だ。
「ミゴトォ……」
「……何ですマティルダ、こんな時間に」
「うぐっ……、フリュウさんの隣をレイティアにとられた」
「あー」
状況を察した。
レイティアが報酬として要求したのはフリュウの添い寝だろう。
エロいことは完全に拒絶するフリュウ、彼のギリギリセーフなラインが添い寝なわけで、まぁ、恋する三人に大人気なわけだ。
ちなみにフリュウのほうも仲間思いな優しさを無駄に使って、添い寝には様々なオプションつきである。
ミコトとレイティアが好意を向けていることを最近自覚し始めて、悪ノリしてるわけだ。
拒絶という能力があるからこそ、仲間との時間を大切にしたい。これはフリュウの本心だった。
「じゃあ見てみますか」
「え?」
ミコトはパチンと指を鳴らすと、どこからともなく妖精が……。見たことある……。
「妖精さん、お願いね」
紫の半透明な妖精は少し距離をとると両目を光らせ、目からビームを出した。
ビームは部屋の壁にあたり長方形になり、緊張した面持ちのレイティアが映し出される。
「……ミコトも使い魔をフリュウさんの部屋に?」
「私も?」
「レイティアも同じことしてたよ」
「はははー、皆考えることは同じだねぇ」
もし自分の部屋ができたらフリュウさんの部屋に使い魔を置いておこうとマティルダは強く決心した。
「あ、これ録画機能もあるから、二人が寝たら見る?」
「うん」
衝撃の発言だが、もう神は何でもありなのだ。突っ込んでいるほうが疲れると分かりスルーすることにした。
「私がフリュウさんと添い寝した時のもあるよ?」
「あー、それレイティアの部屋で見てましたよ」
「なっ!?あれ見たの……」
「はい、フリュウさんとキスしてましたね」
「言わないで、あのあとすっごい恥ずかしかったんだから」
「あ、はい」
掛け布団を蹴飛ばして広いベッドの中でグルグルと回転するミコト。
そんな不健全な巫女は無視してマティルダは画面にくぎ付けだ。
「フリュウさんきませんね」
「……ほんとね、フリュウさん人を待たせたりしないんだけど」
「ムラマサのせいでしょ」
「ありえる」
すっかりムラマサは三人から恋の相談相手としての地位を確立させていた。
フリュウに直接聞くのは恥ずかしい、なら同じ男で神のムラマサに頼むのが一番という理由だ。媚薬や変な薬を手にいれるのも彼ならお手の物である。
「そういえばミコト、知ってますか?」
「何を?」
「ミコトと添い寝してから、フリュウさん悪ノリしましてね、「誰かと添い寝するのも悪くないなぁ」って言ってて、オプションとコースがついたんですよ」
「へ?オプション?」
ミコトは首をかしげた。
だがフリュウという人物像からは想像できた。仲間を第一に考え、大切にしてきた彼なら、「仲間の笑顔のためだよ」と言ってどんなことでもやりそうだ。
「ふーん、どんなのがあるの?」
「そうですね、オプションならハグとか、見つめあったりですね。コースは要望ですね」
「は、ハグ?」
「フリュウさんいわく布団の中でならセーフらしいです」
「まぁ、セーフかもね」
ミコトは想像した。フリュウと抱き合ってる自分の姿を。
再び枕を抱き抱えてベッドでグルグル回転しだした。
「ちょ、やめてください」
「……マティルダは普段どんな添い寝を?」
「私ですかぁ」
マティルダは夢見心地といった感じだ。頬の筋肉が緩みきっている。
「私は毎日「甘やかしコース」ですね」
「具体的には?」
「ナデナデしてもらいます」
「……」
「あと耳元で「もっと俺を頼ってくれよ」って言って貰います」
「……」
嫉妬の目を向けている。
「……何ですかミコト、フリュウさんキスはNGなんですからね」
「私も明日添い寝してもらいます」
「ん、私も同伴しますよ」
「マティルダは毎晩寝てるじゃないですか!」
「娘の特権です!あ、入ってきましたね」
危うく喧嘩になりかけた、いいタイミングでフリュウが部屋に入ってくる様子が映し出された。
『フ、フリュウくん』
『ごめんね、待たせた』
『ぜ、全然……、待ってなんかないよ』
布団の中で放心状態だったレイティアだ、確かに全く待っていない。
『そうか?』
『うん。どうぞ』
『ありがと』
レイティアは掛け布団をめくってフリュウを誘うと、頭を枕の端に移動させた。
それを見てフリュウは反対の端に頭を置いた。
『……』
『……あんまり見られると恥ずかしいんだが』
『ごめん』
枕の端どうしで見つめあっている二人。レイティアは視線を下に下げた。
『今日はどんなのにする?』
『え?』
『ああ、レイティアは知らなかったな。マティルダから要望があってだな、添い寝コースをつくれって……』
『コース?』
『ああ、それがわりと楽しくてだな、ついつい悪ノリしてな。何か要望があれば答えるよ』
レイティアは今ものすごい歓喜の顔をしている。
歓喜と共に顔も真っ赤だ、暗くて分からないが。
『マティルダは……、何を頼んでるの……?』
『マティルダはお父さんに甘えたいらしいな』
『……』
レイティアは真面目に考え込んだ、こんなふざけたことでも真剣にさせてしまうのが恋の恐ろしさだ。
「はっはー、マティルダはお父さんに甘えたいんだ」
「いいじゃないですか!フリュウお父さんですよ、最高じゃないですか!」
『じゃ、じゃあ新婚の若妻コースとか……、できないかな』
『ふふふ、レイティアはいいお嫁さんになるよ』
『何を……!?』
フリュウがレイティアを抱き寄せた。
もちろんだが、拒絶の氷に抱き寄せられる形になるが、そんなのは理解者からしたら関係ない。
「あー!ズルいズルい」
「レイティア、明日覚悟してなさい」
「私だってあんな強く抱かれたことないんだぞ!」
抗議の声は除き魔から上げられた。抗議をできる立場にいないと自覚していない。
『レイティア』
『はいっ』
『今日の晩ごはん美味しかったよ』
『へっ、あ、ありがとうございます』
レイティアは口では強気な発言をするが、こういう経験はない。ガチガチに緊張していた。
ちなみに、今日の食事担当はレイティアでした。
『俺のために頑張ってくれたんだよね、ありがとな』
『ぅぅ……』
フリュウの胸の中で泣いてしまった。
『おいおい泣くなよ、レイティアに涙は似合わないよ』
『グスン、フリュウくんのせいだもん……』
フリュウはレイティアの綺麗な金髪をサラリとなでた。
『俺の胸の中でお眠り、俺の婚約者』
『うん!』
フリュウに誘導されるように、レイティアは眠りについた。
「……」
「婚約者は私ですよー!」
「世界線が違うよ……」
呆れるミコトに名案が浮かんだ。
「マティルダ、いいこと考えたんだけど」
「なんですか、言ってみなさい」
「明日の添い寝さ、私が妻役やるから娘役やらない?」
ダメ元での頼みだった。
「……ミコト、あなた天才です」