表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「なろう」の閉塞感への意見書  作者: 泳げない魚
1/1

本文

『「なろう」における一部特定ジャンルによる寡占化を政治学を用いた小考察』


【序論】


 何故、「なろう」は自由で公平なはずのWEB小説サイトでありながら、一部特定ジャンルの偏りにより機能不全に陥ったのかを、政治学をちょっとだけ用いて考察するものである。結論から言うと「マニア層」がもつ政党的役割とそれに追随する「ミーハー層」の行動原理によって特定ジャンルの勃興する現象と、それを固定化してししまった「なろう」システム機能不全への改革案である。暇だったら読んでね♡


【読者の定義】


 ことに、この考察をするにはWEB小説サイトの主役の1つである読者を定義せねばなるまい。

 まず、読者とは「面白い小説を読みたいという利益意識を持つ者」と定義する。かなり幅の広い定義だと思われれるであろうが、この読者は主に2つに分類することができる。「マニア層の読者」と「ミーハー層の読者」だ。


 「マニア層の読者」は、面白い小説を隅々から探し出し読み漁る者、つまり〈読書による利益を積極的に獲得しようとする者〉と考えられる。例えば、SFマニア、ファンタジーマニアなどと言えばわかりやすいだろう。書店にて、ハヤカワ文庫の薄青い背表紙を舐めるように見つめている様な奴らだ。


 次に、「ミーハー層の読者」は、有名な本、何とか賞を獲っただの、巷で大人気とラベルのついた本を読む者、つまり、〈消極的ながらも面白い小説を読む利益を獲得しようとする者〉と考えられる。言い方を変えれば、一般読者とも言えるだろう。ミーハーはとか、悪い意味じゃないよ、ごめんね。


 この2つの分類で読者は、幅の広い二重丸の様に、内側に少数の「マニア層」、外側に多数の「ミーハー層」で構成されることになる。彼ら、良い読書の利益を得ようとする者たちが、「なろう」のメインプレイヤーである読者だ。

 だが、「マニア層」は単純に積極的に読書する者と定義づけるには少し簡易すぎる。そのため、「マニア層」の行動原理をより深く考察をする必要がある。


 「マニア層」は積極的に読書をするものとしながらも、〈ある特定分野〉において、その行動を行う者と考えられる。

 例えば、同人誌の祭典コミケットにおける島の分類が例に挙げられる。東方の同人誌、艦これの同人誌をクソ暑い中や、正月のくせに売っている人達だ。彼らは自身の嗜好に基づき、積極的に創作活動を行う。その嗜好には振れが存在するが、ある程度は固定されているものと思われる。筆者も、型月厨だが東方だって好きだし、艦これも、まぁ好きだ。しかし、タイプムーンが何か作品を発表すれば、我先に虎の穴へ飛んでいく。

 この様に「マニア層」には、〈ある特定分野における積極的に活動をする者〉とより定義づけられる。けれども、この「マニア層」は一個としての集団では無いということが重要な点である。彼らは、複数個できるあり互いに隣接しあう場合もある、薄くて幅広い集団はなのだ。もし、iOSをお持ちならば写真のアイコンを見て欲しい、あの幾何学模様の有色部分が「マニア層」で、白い部分が「ミーハー層」となる。


 この2つの読者の定義に基づいて、「マニア層」と「ミーハー層」の相互の関係と利益獲得の行動がもたらした「なろう」システムの機能不全を考察しよう。


【本題:「なろう」の特定ジャンルの一党優位状態への変移】


 てめぇ、全然政治学の使ってねぇじゃねぇか!と思いの皆さん、ご安心ください。こんな感じで続きます。


 まず、WEB小説サイトの原初状態を考えてみる。これはホッブスの言う『自然状態』、てんでバラバラなジャンルの小説が投稿されている状態と仮定する。なお、これはかなり理想的な仮定だ。「なろう」成立年代を見るに、ライトノベル全盛期に近く、この旋風を受けたラノベ読者又は作者達が海を越える様に「なろう」に移住して来たと考える方が相応しい。

 この原初状態において執筆活動をするのは「マニア層」である。彼らは自己の嗜好に基づき創作活動を行い、同「マニア層」で評価を受ける。Pixivやノクターンなどアダルト分野においてのよく見られる内輪形成が生じる。いわゆる、駄サイクルってやつだ。

 しかし、偶々創作活動の才能を持った者又は技能を習得した者が創作した優秀な作品が生まれる。これは皆さんもよくお分かりでしょう、異世界転生ものやVRMMOとかの作品群である。

 この傑出した作品を「マニア層」は内輪だけではなく外側に宣伝し、評価を高めようとする活動をする。例えば、口コミ、2chのスレの書き込み、まとめサイトなどでその片鱗が見受けられる。

 これら、「マニア層」の持つ、自己利益の積極的に獲得と、外部への宣伝効果、筆者は政党に似ているのではないかと考えるのである。


 政党の持つ役割のとして、社会の様々な利益や意見を集約すること、加えて立法・行政機関の政策形成・決定の活動という、公の場へ活動行為を持つものとされる。


 「マニア層政党論」の立場を考えると、WEB小説サイトは公的な場所、つまりは国家であり、ある意味彼らは政策決定をする知識人層と呼ぶべきであろう。

 一方で、「ミーハー層」は知識人とは異なった立場、一般市民となる。知識人層が発表する政策を見つめて、自分の利益にあったものを選ぶ。「ミーハー層」は「マニア層」に着い付いする形をとるのだ。


 ここからは皆さんも想像しやすく、〇〇党をよろしくっと政党の外部へのキャンペーンを行う様に、「マニア層」は「ミーハー層」へと、自分たちの分野で生まれた作品を外部へと表出しようとする。「ミーハー層」も、その分野をよく知っている人たちがオススメするなら読んでみるかと作品を手に取る。これが連綿と繋がって特定ジャンルが一般的ジャンルへと変貌していくのである。

 だが、WEB小説サイトはこうしたジャンルの勃興は起きるものの、何故か新たなジャンルへは閉塞性を持ってしまっている。これはどうしてか?


 これは政党の持つ利益集約という特性から説明できる。

 例えば、SFファンタジーを書きたいと君は思った。そして、何も考えずに投稿する。あまり読まれない。ならばと奮起して、そのWEB小説サイトではどんなものが読まれるか調査する。なるほど、異世界転生ものが流行っているのか。では、SFファンタジー世界への転生にして投稿してみる。結構読まれた。

 こんな経験、筆者の方々もあるのでは無いだろうか。

 これは上記の作品が異世界転生ものの亜種として認識されるのであって、「マニア層」によって形成されたWEB小説サイト上の「読書の利益」の対象となるからである。利益集約はある特定層の意見にとっては有利に働くだろうが、反面近似した意見をも包括してしまうことになる。SFファンタジーなど知りもしない「ミーハー層」は決して手にとって読もうとはしないが、異世界SFファンタジー転生なら、ああ成る程ねとクリックをする。

 この「読書の利益」の集約こそがWEB小説サイトの閉塞性の答えである。


 では、何故か、書店で並ぶ本達、いわゆるプロ作家の本は多種多様に存在しているのだろうか。

 これは、「権威」と「文庫の創立」という2つのポイントが存在する。


 「権威」とは、何々賞受賞作品など、出版業界が築き挙げてきた「ミーハー層」への宣伝効果である。芥川賞とかね、何かもう色々ありすぎるよね。

 「文庫の創立」とは、不特定だったジャンルを無理やり特定ジャンルとして区分してしまう出版行動である。海外SFと言えばハヤカワ、ホラーと言えば角川ホラー文庫見たいな。


 これらによって出版業界はマンネリを防ぎ、新ジャンルの開拓を置こうなうことになる。だが、これらはある意味権力的で強引な行為だ。

 この2つの機能を持たないWEB小説サイトは、「自由で公平」であるが故、既存の「マニア層」が形成した「読書の利益集約」に逆らえず、閉塞性を持ってしまうのである。


【WEB小説改革案:ジャンル分けの徹底】


 これは簡単に言ってしまえば「文庫の創立」と一緒で、違うジャンルは違うサイトで別個に扱ってしまう。特定のジャンルをより細かく細分化しようと言うものである。現在「なろう」のジャンル分けはされているものの、実質効果がないと思われる。だが、最近登場したミッドナイトノベルスのように、特定ジャンルをサイトごと分化すれば、そこにやって来た何処かにいた「マニア層」が新たな「読書の利益」を形成し、「ミーハー層」が後ろからやって来て、また新しいジャンルが生まれるのでは無いだろうか。例えば、SF小説専用WEB小説サイトとか、ミステリ専といったものもジャンル分けできる。


 この案のデメリットとして、一個集約されていたことによる「なろう」独自の文化を破壊することになること、現在PV数を多加を謳ったプロデビュー通例化しており、その道筋がしづらくなることである。


【末尾に】


 ここまで、この駄文を読んでくれた貴方に感謝を言いたい。アマチュア作家の修練の場として、或いは全く新しい小説を読まんとする読者たちへ、WEB小説サイトは素晴らしいものだと筆者は考えたため、この小論を書いた。

 政治学の「せ」の字くらいしか勉強していない筆者が、回らない頭を持って、暇を持て余して書いた駄文をよく読んでくれた。ありがとう。お前も、随分暇なんだな。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ