日記帳~目次~
好きな人ってどんな人?
そう聞かれても、私はきっとトップランカーのイケメン冒険者の名前を適当に答えていただろう。あるいは、思いついた好みのイメージを漠然と口にしていたか。
遠い話だと思っていた。いつか自分も恋をして、素敵な家庭を持つのだろうかと夢想することは多々あっても、リアルな面を想像するとどうにも現実味がわかない話になってしまう。
そもそも。恋という甘酸っぱい味のするものなんぞ味わったことは一度もない。
何事も経験だというが、どうやら自分は愚かにもロマンを求めるような性であり、そういった物事に関してはある種の聖域にあるものと信仰していたのだ。
例えば、そう。
運命の人だとか。
赤い糸で結ばれた人だとか。
白馬の王子様だとか。
ゴッテゴテのハリボテめいた表現ではあるが、そういった言葉で表現できる人と結ばれたら、と思わないこともない。実際、父と母は運命だったと自分では思う。
それゆえに、自分の妄想とその現実には差が生まれ、それは誤差では済まされない。
その差をどうにかしない限り、自分は恋など出来はしないのだろう、と思っていた。思わざるを得なかった。
―――――あいつと、出会うまでは。
これは、そんな私とあいつとの、ただの日常を綴った旅日記。