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四章(1):ET

 広い、部屋だった。

 さっきの倉庫よりは狭いが、それでも、一室にしては十分、広い方だろう。

 部屋に入ってすぐに、巨大なディスプレイがある。傍には、機材。

 コンピュータ機材のようだ。この規模だと、スパコンだろう。なかなか見ることは出来ない規模だ。

「ここが、わいらに見せたい言うてた部屋か?」

 後から入ってきた聖はんが、ドアを閉める。三重にしてあるドアだった。

 ロックを解除するのに、かなり手こずった。それだけで、この部屋の重要性がわかる。

「……そうだ。だが、この部屋を見せるためだけに、連れてきたのではない」

「ま、そうやろな」

 追っ手が来ても、入り口でしばらくは止められる。

 扉は分厚く、わいのニトロでも簡単には破壊できない。

 そして、新しくプログラムを組んでロックした。他に、出入り口になるものは見当たらない。

「輝はん達は、もうすぐ来るみたいやで。さっき、センタービルの監視カメラに姿が映っとった」

(ふむ、合流というわけだな)

 確かに、そうだ。

 だが、これから何をするのかは、全く読めない。

 気になったが、聖はんは何も言う気は無いようだった。おそらく、全員揃ってから説明するのだろう。

 外を見た。

 高層ビルが立ち並んでいる。

 いつの間にか、外の色彩は、赤から黒へと変わっている。

 外の夜景は、星屑をばら撒いた様だ。

 それだけ見ると、こんな風に戦っているのが、嘘のように思える。

 世界は平和だ。そんな風にも、思えてくる。

 だが、何か違う。数日で、確実に何かが変わったのだ。

 少年の、統制。

 アホか。

 何でそんなんアホなこと、考えんねん。

 家族を殺された親父の悲しみがどれほどのものだったかは、わいにはわからん。

 そやけど。

「他に、やりよう、あったやろ……」

 イラついていた。

 親父にや、ない。

 親父を止められなかったわい自身に、イラついていた。

「………汝の力は、まだ完全に覚醒していない」

 気づくと、聖はんが後ろに立っていた。

 窓に、ぼんやりその姿が映る。夕凪はんが、自由に飛び回っているのが見えた。

「力?」

「ETが宿す、『力』だ」

「わいで言うたら、射撃の腕、みたいなモンやな。あんま意識したことないんやけど」

「汝の力は、徐々に覚醒した。魔旋風、調律士の覚醒は、突然だった」

 振り返る。言った聖はんの顔に、やはり表情は無い。

「ええと、二つ、質問ええか?」

「……構わん」

「何で、あの二人が覚醒したときのこと知ってるんや? それと、何で覚醒が不完全だってわかるんや?」

 しばらく、聖はんは黙っていた。言うべき言葉を、選んでいるのだろう。

「……まず、初めの質問だが、二人の覚醒を知っているのは、我の能力によるものだ」

「聖はんの、能力?」

「……全てを見通す、力」

「なるほど。合点がいったわ」

 全てを見通せる。

 だから、遠くのことでも、その力があれば見通せるのだろう。

「それで納得いったで。眼で、全てを見通す。眼を隠してるのは、見えないようにするためやな」

「……そうだ」

 全てを見通せるのは確かに良いだろう。

 だがその弊害は、わいでも簡単に想像できる。

 もし、物事の本質が全てわかったら?

 他人の心や、過去や未来が見えたら?

 どこまで見通せるのかはわからない。

 ただ、少しでも見通せるならば、それによる苦痛は容易に想像できる。

 これから起こることが、全てわかる。

 この戦いの結末も、死んでいく者も。

 人の心が、全てわかる。

 その人が自分に対してどう思っているのかも、全てわかる。

 そしてそれは、決して良い感情だけとは言えないだろう。

「……あんさん、苦労したんやな」

 多分、言葉にしたところで軽いものだろう。

 それでも何故か、言わずにはいられなかった。

「………」

 しばらく、無言でいた。

 たまに、夕凪はんが鳴いた。

「……二つ目の質問だが」

 夕凪はんを見ながら、聖はんが口を開く。

「何で、わいの覚醒が不完全かってことやな。それも、何でも見通せる能力だから、わかるんやろ?」

 夕凪はんを見ながら、わいも言う。

「……それも、ある。しかし、もっと簡単に、判別はできる」

 そう言うと、聖はんは目を覆っていた布の結びを解いた。

 布が、ゆっくりと床に落ちる。

「!?」

 銀の瞳。

 眼球の中央。金属を照り返したような光を宿している。

 人種によって眼の色が異なるのは、知っていた。

 だが、銀の眼を持つ人種は思い浮かばない。

「これが、完全に覚醒したETの姿だ」

 壮絶な、眼をしていた。

 見ているだけで、圧倒されそうだ。

 聖はんは床に落ちた布を拾い、それでまた眼を覆った。

 窓に映った自分の眼を見た。

 外の闇と、同じ色だ。

「完全に能力に覚醒したETは、眼が銀色になるんやな」

「………ET因子の働きが活発化することによって、眼色が変化する」

「ET因子?」

「………魔旋風と調律士が来た時に、話す」

「そうやな。わいも、まだ驚いとるし。::能力に完全覚醒すると、どうなるんや?」

「完全に、人では無くなる」

「?」

 どういうことや。

 人では、無くなる?

 人では無いような力を手にするから、そう言うんか?

 二人が来たら、詳しく話すのだろう。まだ、色々と考えが整理できていない。

 少し、自分なりに考えたかった。



「戻りました、お父さん」

「奏か」

 センタービル七十八階。

 スーパーコンピューターがある。

 お父さんがいて、本部と言ってよかった。

「ずいぶん、早かったのですね」

「エレベーターを、使いましたから」

 阿武隈さんが、馬鹿にしたような笑いを浮べる。この人の笑い方はいつもそうで、慣れていた。

「沼丘を、消したのか」

 おそらく、監視カメラを使って見ていたのだろう。パソコンと向かい合っている玄蔵さんが、こちらを見ずに聞いてきた。

 その間も、指は忙しく動いている。

「はい。お父さんの命令を無視したのです。だから、殺しました」

「そうか」

「ヒヒ、虫を殺すことすら出来なかった、あの奏お坊っちゃんがねえ。考えられませんねえ」

 皮肉を言われている。

 慣れていたが、何故か腹が立った。

 能力に覚醒してから、こういうことが多い。

 手に、力を込める。闇が、手の中に生まれた。

「止めろ、奏」

 お父さんの声。はっと、我に返った。

「……はい」

 ブゥンと、電子音がなる。

 大きなディスプレイに、地図が映された。この建物の地図のようだ。

 玄蔵さんが手を止め、こちらを向く。

「現状は、最悪だ」

 会議が始まるようだ。

 僕を待っていたのだとわかった。喜びが少し、胸を走った。

「倉庫は突破、武器は取り返され、戦力は増強された。それで、奏も追撃を止めざるを得無かった。状況からすると、仕方のないことだったが」

「ヒヒ。やはり、役立たずですねえ」

 責められている。また、殺意を覚えた。

「だが、奏の能力もわかった。それに、まだ強護も巧もいる。戦力的には、まだ、こちらの方が優勢だな」

「奏坊ちゃんがどこまで使えるかは、謎ですがね」

 玄蔵さんが、ちらと阿武隈さんを見た。何も言わず、言葉を続ける。

「現在、少年たちは六十二階の機械室に立てこもっている。扉に電子ロックがかかっている。外部からの進入は、今のところ不可能だな」

「玄蔵さんが、ロックを解除できないのですか?」

 玄蔵さんが、苦虫を噛み潰したような顔をした。

「さっき、試してみた。かなり、時間がかかる。合流するために、時を稼いでいるな」

「お前でも、時間がかかるのだな」

 黙って聞いていた、お父さんが口を開く。

「ああ」

「息子に、手こずっているのか?」

 お父さんが、皮肉な笑いを浮べる。

「そう言われると、何も言えんな」

「クク、やはり、捕えた時に、殺しておくべきだったかもしれんな」

「あの扉は、外部からの衝撃にもかなり強い。物理的に、容易に破壊は困難だ」

 ふと、思いつくことがあった。

「僕の能力なら、可能ではないでしょうか?」

 全てを無に返す、この力なら。

「ふむ。それなら、出来るかもしれん。やらせてみる価値はあるだろう、鬼村?」

「奏などに期待はしないほうがいいぞ、玄蔵。コイツが役に立ったことなど、一度も無いのだからな」

「……お父さん」

「まあ、やらせてみませんか、先生。死んだら、そこまでだったということですし」

「クク、そうだな。では、行け。奏」

「ありがとうございます」

 礼をして、部屋を出た。

「待て、奏」

 玄蔵さんが追いかけてきた。

「何でしょうか?」

「お前が一人であの四人に対するのは、正直言って厳しい。それに、少年達は、電磁波のシステムを潰そうとしてくるはずだ。七十五階の制御室への攻撃、もしくは屋上のアンテナへの攻撃が予測できる。そこならば、こちらも戦力を整えて正面からぶつかることも出来る」

「無理するな、ということですね?」

「そうだ。ここでお前が欠けると、厳しくなる」

 涙が出そうだった。視界が少し、歪んだ。

「お気遣い、ありがとうございます。ですが、僕はお父さんのために、何か役に立ちたいのです。役立たずだと、言われないように」

「それも、わかる。おそらく、少年たちは夜半に行動を始めるだろう。まだ、時間はある。お前に、何が出来るか見せてみろ。だが、もし無理な場合は、引き返してこい。お前をアンテナの警備にあたらせる。アレが潰されれば、この計画は終わってしまうからな」

「わかりました。無理はしません」

 玄蔵さんが頷き、背を向ける。

「あ、あのっ!」

 玄蔵さんの足が止まる。

「どうして僕に、ここまで良くしてくれるんですか?」

 振り向かず、玄蔵さんは言った。

「……わしにも、出来損ないの息子がいて、な」

 それだけ言うと、玄蔵さんは闇の中に消えた。



「ようやく、着きましたか」

「ああ。あの二人は、先に着いてるみたいだな」

「でしょうね。二人の音がします」

 眼の前に、扉があった。分厚い扉だ。

 だが、斬魔刀の前では、ただのモノにしかすぎない。

 斬ろうと思った時、ピピッという音と共に、扉が開いた。

「開いたな」

「ええ」

 少し、入るのをためらう。都合が良すぎるからだ。

「罠って事は?」

「あの二人が裏切っていれば、そうなりますね」

「わからないのか?」

「ノイズが酷いのです。屋上からの、ね。それに、音が聞こえるからといって、私が何でもわかる、というわけではありませんよ」

「俺の刀は、何でも斬れる」

「貴方の馬鹿力と、比べないでください」

「お前から入れよ」

「中から、輝君の妹さんの音が聞こえます」

「なら、俺から入る」

「クス、単純ですね。嘘ですよ」

「……ふん、わかってる」

 部屋に入った。

 がらんとした部屋に思えた。

 しかしよく見ると、中央にモニターがある。近くに、大きな電子機器もあった。

 そしてそこに、尚人と聖がいた。

「よう」

 尚人が少し驚いた顔をし、すぐに笑顔になる。

「初めの輝はんに、戻ったようやな」

 そういえば、最後に会った時は何も話していない気がする。

「あの時のことは、よく覚えてないな」

「そか。……まあ、思い出すようなもんでも、あらへんと思うで」

「クス、残念です。あの時の輝君は、見ていて、面白かったですから」

「ふん。勝手に言ってろ」

 聖を見た。夕凪という鷹を肩に乗せていた。

「……まだ、揺れている、か」

 驚きはしなかった。司が、心を読むと言っていたからだ。

「ああ」

「………まあ、いい。今は、話さねばならぬことが、多くある」

 そう言うと、聖は近くにあったパソコンに向かった。

「まだ、お二人さんも、完全には覚醒しておらへんようやな」

 それを見ながら、尚人が話しかけてくる。

「覚醒?」

「聖はん曰く、能力が完全になることらしいで。そうなると、完全に人間ではなくなるらしいんや」

ということは。

「まだ、強くなれるのか?」

「そうみたいやな」

「私は、完全に、というところが気になりますね」

「多分、それも、これから話すんやろ」

「色々知ってるな、アイツは」

「クス。心が、読めるようですからね」

 司が、皮肉交じりに言う。

「それどころか、全てが見通せる言うてたで」

「……本当かよ」

「なるほど。だから、私がどうなるか、読めたというわけですか」

「つまらなそうな能力だな」

 三人で聖の様子を窺う。

 聖に、表情は無かった。

 聖が立ち上がる。

「……魔旋風」

「聞きたかったんだが、それ、俺のことだよな?」

「……そうだ」

「もう少し、何かないのか? 何かこう、もう少し、わかりやすいの」

 聖は無言で、何か考えているようだった。

「………魔旋風」

「……おい」

 考えつかなかったな。

「……で、何だよ?」

「このパソコンに向かって、何か話せ」

「何だそりゃ? まあ、いいか。何でも良いのか?」

 聖が無言で頷く。

「名取、輝だ」

 言うと、何かが動き出した音がした。

 部屋全体。多分、機材全てが、一つのパソコンに繋がっているのだろう。

 目の前の巨大なモニター。

 何かが、映った。

 研究室のようだった。白衣を着た男が、中央に立っていた。

「久しぶりだね、輝。いや、初めまして、と言った方がいいのかな?」

「!?」

 この声。

 ひどく懐かしい声。

 知っている。

 俺は、この声を知っている。

(大丈夫。きっと君はまた、私に会うだろう)

 そうか。

 この声だったのか。

「……あんた、誰だ?」

「覚えていないのも、無理はない。君を、八年間、育てた。そして、記憶のほとんどを消して、捨てたのだから」

 捨てた。俺を。

「……っ! 俺は、てめえが誰かって聞いてるんだ!!」

「まあ、輝はん。少し、落ち着こうや」

 尚人が間に入る。

 その間も、俺は画面の男を睨み続けた。

「杉原京治。一応、国立電子工学研究所、元所長かな」

「その元所長さんが、何なんや? わいらは、聖はんに話がある言われて、ここにおるんや」

「君達が聞きたいのは、ETの事だろう?」

「これは、驚きですね。貴方は、ETについて、何か知っているというわけですか」

 杉原が聖の方を見る。聖は、気にした風でもない。

 杉原が少し苦笑して、また俺達に向き直った。

「知っているも何も、ETを創ったのは、この私だ」

「「「!?」」」

 一瞬、何を言われたのかわからなかった。

 それほど、驚いた。

 尚人は、考え込むような顔をしている。司は、薄い笑いを浮べていた。

「創ったって、どういうことだ?」

「文字通りの意味なのだが。そんなに驚かれるとは、思ってもみなかったな」

「クス。何にせよ、悪い冗談ですね」

 そうとも言い切れないのが、嫌だった。

 実際、俺には八歳までの記憶がほとんど無い。

 それが、事実を物語っているように思えたからだ。

「どうやって、創ったんや?」

 恐る恐る、尚人が聞く。

 自分の出生のことだ。怖いが、気にもなる。

「形式は、人工受精とほぼ同じだよ。ただ、元となる精子と卵子の遺伝子を少し変えて、そこに他の遺伝子を組み込む。私がET因子と名づけたものだが。そうして、君達が生まれた」

「……おいおい、本当の話かよ」

 尚人が考える顔をしながら、言う。

「なるほど、な。そのET因子が電磁波を無効化し、さらには、通常、人間には持ちえない能力を発現させる。そういうわけやな」

「ご名答。さすがだね。冷静に状況を分析し、物事を処理する。私が望んだ通りに、育ったのだね」

「そりゃ、おおきに。となると、あんさんは、わいの産みの親っちゅーことやな」

「そういうことに、なるのだろうね」

 いくつか、気づいたことがあった。

「……俺達は、人間じゃないのか?」

「姿形は、人間と何も変わらない。まあ、遺伝子学的に言えば、人間では無いだろうけどね」

 杉原が、寂しそうに笑った。

「あんたは、俺の、いや、俺達の父親なのか?」

「ふむ。どうだろうね?」

「ふざけんなっ!!」

「まあまあ。AIに怒ったって、仕方ないで」

「先ほど、輝君を捨てたと聞きましたが、私が孤児だったのも、ETだったから、捨てたのですか?」

「そうだよ。だが、他にも理由がある」

 杉原が、また寂しそうに笑った。

「私は、少年犯罪で、家族を失った。その頃、同じように少年犯罪で、家族を失った者がいた」

「わいの親父と、内閣総理大臣の鬼村。この計画の、首謀者やな」

「私達は、出会い、そして、同じ思想を持った。野望と言っても、いいかもしれないな」

「それが、電磁波で統制された世界、ですか。陳腐なものですね」

「思い返せば、そうかもしれない。だが、あの頃の私達には、理想の世界だった」

「あんた達の思想は、間違ってる。他人を、操って良いわけがない」

 杉原が黙ったまま、頷いた。

「年が経つにつれ、私の憎しみは薄れ、逆に、とんでもない計画をしていると思うようになった。だが、もう後には戻れないところまで、来てしまっていた。何とかしたい、とも思ったよ」

「……それで、杉浦は、我々を創った。電磁波を無効化する存在を」

 話を聞いていた聖が、口を開く。

 皆、顔をそちらに向けた。

「……幾たびかの失敗の末、杉原はついに、電磁波を無効化する遺伝子の組み込みに成功し、始めのETが生まれた。それが、我だ」

「聖を創り、次の年に、双子を創った。それが、輝と司だ」

 マジかよ。

「悪夢ですね」

「それは、俺の台詞だ」

 杉原が一度咳払いをし、続ける。

「輝と司を創った一年後、尚人を創った」

「それが、最後のETなんか?」

 少年の顔が浮かんだ。

 ここに来る前に戦った少年。自分でETだと言っていた。

「いや、違う。尚人のさらに一年後。最後のETである、奏を創った」

「さっき、やりあった少年、ですか」

「ほんまか?」

「ああ、ヤバイ能力だ。再戦は、勘弁だな」

「敵なんか……」

「奏の事は、仕方がなかった。奏を創った時点で、鬼村が、何かかぎつけてきた。それで、孤児にする前に、鬼村に、養子に取られてしまったのだ」

「私達がETとして作られ、孤児となった理由は、そういうわけですか」

「ああ。君達を守るためには、ああするしかなかった。そうでなければ、鬼村に、私の計画の全容がばれただろうし、君達の命も危なかった」

「違うやろ、杉村はん。あんさんはまだ、わいらに大事なことを隠しとる」

 尚人の眼が、細くなった。

 杉原は、少し苦笑した。

「やれやれ、予想した以上に、成長してしまったようだ」

「わいには、わかったで。何であんさんが、わいらを造ったんか」

 尚人が、試すような眼を杉原に向けた。杉原は、動じたようではない。

「止めて、欲しかったんやろ?」

「? どういうことだ?」

 尚人が、悪戯っぽく笑った。

「自分は、人を操ることの出来る電磁波を生み出してしまった。それを、止めたかった。そやけど、自分が動いたら、すぐ消されてしまう。それで、わいらを創って、自分の想いを託したんや。電磁波を、止めて欲しいと」

「貴方の身勝手な想いから、私達が創られた。そういうわけですか」

「弁解はしないよ。それに、どうするかは、君達一人一人が考えることべきだと思っている。強要は、しないよ」

「ちっ。こんな時だけ、父親面しやがって……!」

 聖が歩み出て言った。

「……自分がどうしたいか、考えよ。明刻、七十五階の制御室に向かう。去るものは、それでも良い。それまで、答えを出しておけ」


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