詩: 琥珀色の噓
掲載日:2026/03/07
朝いちばんの台所で豆を挽きます
昨日まで胸に残っていた言い訳を
そっと粉にしていきます
お気に入りの縁が欠けたカップ
捨てられないのは
そこに残された誰かの記憶のせい
熱い湯を 細く ゆっくり落とします
ふくらむ粉は 落ち着いた香りを広げ
胸の奥のざらつきをそっと撫でていきます
コーヒーという飲み物は不思議です
黒いのに 心の奥をそっと照らし
苦いのに 孤独を少しだけ甘くしてくれます
向かいの席が空いているのは
自由を手に入れた証なのでしょうか
それとも
最後の一口を飲み干して
私はそっと
カップのふちに残った未練を拭い去ります
嘘も 後悔も
琥珀色の中に静かに沈めながら




