ふしぎな世界の真実
✣
ゲーム中に前触れもなく差し込まれる動画広告。
長いものだと90秒、それ以上のまである。
「あ、ハズレ動画にあたった」
動画自体クズなんだけど、表示される×マークが小さかったり、タップしてもブラウザが開いたり。
酷い広告になると、×マークや矢印とブラウザを数回往復してから静止画に移ってから『もっと知る』と『閉じる』の画面に進む。
閉じるを押しても同じ静止画面が表示されるだけでなく、5回目あたりになると『買わないなら殺すぞ』『殺されたくなければ有料会員になれ!』という脅しが表示される。
そんな広告を流しながら健全を謳うサイトやアプリも問題なんだけどね。
その広告が流れると不快だから削除してログインし直す。
ログアウトして違うアプリにログイン。
投稿サイトを梯子している途中で、静止広告に小指が触れた。
…………ところまでは覚えていた。
「あれ?」
寝落ちしたのだろうか。
スマホを握りしめたまま、ベッドで横になっていた。
「うわっ、さっむー」
慌てて暖房のリモコンを入れて室内を暖める。
時間を確認するついでに充電しようとスマホに目を向けた。
「ありゃ、充電切れてんじゃん」
動画をみていないのに充電が切れるのも珍しい。
バッテリーが悪くなってきたのかも。
スリープに差し込んでから、ホットドリンクを飲んで身体を温めるために電気ポットのスイッチを入れる。
クッキーの残りがあるからそれも一緒に。
「朝のニュースでもみるか」
休日だというのに、いつもより早い時間に目が覚めてしまった。
いつもの朝食時間まであと2時間ちょっと。
ニュースでは『おかしな事件が起きている』と伝えていた。
女性がほとんどだけど、その誰もが充電の切れたスマホを握りしめて死んでいるらしい。
「って、さっきまでの私じゃん」
とりあえずSNSで生存確認をしておこう。
そう思いながら充電中のスマホを持ってくると電源を押す。
普通に起動するのを待っていると、真っ暗な画面に知らない文字が表示された。
スクショで保存して、ついでにカメラでも文章を撮影する。
あとから翻訳アプリで読もうと思ったからだ。
少し待っていると、文章は日本語訳された。
"マドンナ様
このたびは『闇堕ち令嬢救済ツアー』への参加、誠にありがとうございました。
あなたが令嬢を救ってくださったおかげで、世界が滅びる闇堕ちエンドを回避することができました。
よって成功報酬を上乗せして支払わせていただきました。
一生に一度の強制参加、いかがでしたでしょうか。
お楽しみいただけたのでしたら幸いです。"
参加……強制参加…………?
混乱したままでもスクショとカメラで撮影保存。
冷静になってくると、少しずつ思い出してきた。
異世界の『公爵令嬢マドンナ』が断罪されていたところに私(の意識)が乱入。
マドンナを救って、断罪参加者をコテンパンにやっつけてきたんだった。
それにしても……マドンナが闇落ち?
うん、あの状態で断罪が成功していたなら当然だろうね。
言霊に近い魔法で操られた状態で出荷されていたらさ。
もしかすると、父親やあの青年も一緒に闇堕ちしていた可能性はあるかも。
国内だけでなく、出荷先を滅ぼしてでもマドンナを救うだろう。
たとえあのまま自我を失っていたとしても、あの2人なら無限の愛を注ぎ続けていただろう。
「幸せになってね」
奪われかけた華の人生。
最難関を乗り切ったんだ。
邪魔をする連中はすべて片付いた。
……もう、誰にも邪魔出来ない王族という立場まで与えたんだ。
これからは、その立場が邪魔するかもしれないけど。
でも、あのような『一方的に踏み躙られる』ことは二度とない。
そう信じている。




