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オンラインRPG「ファンタシースペースオンライン2」略してPSO2。 無料で始められる、と聞いて自分のキャラを作って始めてみた。  作者: 阿月
第一章 ナンパされて入ったチームの中で出会った人たちと、いろいろあったお話。2019-2021
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第4話 私のお仕事のお話

 昨夜、みんなで行ったクエストは楽しかったなあ……。

 やっぱり、固定って楽しい。

 昨日は、チームの新人歓迎のための固定でのクエストだった。

 りぼんも、先輩になったと思うと、ちょっと気合いが入る。

 うん。一回しか落ちなかったし。

 

 そんなことをぼーっと考えていたら、神崎チーフが声をかけてきた。

「この方、お願い」

 そんな言葉とともに、ファイルが一冊回ってきた。

 六十八歳。要介護2。

 ただし、がんの治療中。

 奥様はなし。子どももいない。係累は、兄とその妻のみ。

 独居。

「引継ぎですか?」

「いえ。新規。大学病院のワーカーさんからよ」

「同行訪問からですかね」

「そうね。樋口さん、知ってるでしょ」

 樋口さんというのは、大学病院地域連携科に所属するソーシャルワーカーさんだ。

 何人かの利用者さんを紹介してもらっている。

「はい、アポを取ります。でも……、何で私に?」

「特記事項ね。この方、いい歳して、ゲームとか好きなのよ。あなた、ゲーム好きでしょ」

 いや、まあ、嫌いじゃないけど……。


 私の仕事はケアマネージャー。

 高齢者の介護プランを造るのが仕事だ。

 ついでに独身。

 年齢はノーコメント。


 古い軽自動車を駆って訪問したのは、築40年くらいたつような古い一軒家。

 ご両親と暮らしていて、最後に残ったのが、この方。

 山崎孝則さん。

 普段、担当している方々に比べると、格段にお若い。

 まあ、六十代ですしね。

 ご本人とはリビングでお会いすることになった。

 洗いざらしのシャツにスラックス。靴下もはいているし、ひげもきちんとそられている。

 当たり前の身だしなみはきちんとされている。


「お願いしたいのは、病院との行きかえりの送迎。タクシーはサポートしてもらえる、と聞いてます。あとは、週一でもかまわないので、生活援助を。ゴミ捨てとか、そのあたりがとてもキツいです」

「承知しました。食事とかは困ってませんか?」

「樋口さんから紹介してもらった配食サービスを使っていて、あまり不満はない」

「食べれてます?」

「食べれないときもあるよ。正直、抗がん剤治療を始めて以来、食事がまずい」


 抗がん剤で味覚異常が起こるのは、よく聞く事例だった。

 体力をつけなければいけない人に限って、こういうことが起こる。


「山崎さん、趣味は何かあります? 楽しんでること」

「うん? 樋口さんには話したがゲームかな」

「どんなゲームです?」

「PS4。知ってるかい?」

「ゲーム機ですね。どんなゲームを?」

「そうだなあ、最近だと十三騎兵防衛軍とか対馬攻防戦とかもやったが、メインはファンタシースペースオンライン、かな」


 ぎく。

 え?


「趣味がお若いですね」

「いや、そうでもないよ。俺たちは、昔からゲームやってきたからね。それが好きで続けているだけだ。新作が出ると、今でもわくわくするからな」

「でも、ファンタシースペースって、結構サービス長いですよね」

「おっ、ケアマネさん、そこわかるのか」

「まあ、ゲーマーですからね」


 同じゲームをやっている、とは言わない。

 共通の話題は欲しいが、依存させるわけにはいかない、という職業倫理故だ。

 ぶっちゃけ、ゲーム内で「きゃほーーー」とか言った後に、まじめな話はしにくい。


「じゃあ、山崎さんのQOLはゲームを楽しむことができる、としましょうか」

「QOL?」

「Quality of Lifeですね。我々がつくるケアプランは、目標を立てるんですよ。生活の価値を高めるための。病気が治っても、生活が楽しめなければ、何の意味もありません。だから、山崎さんの場合は、ゲームを楽しむこと、らなります」

「面白いな、あなたは。今まで、ゲームを楽しめ、と言われたことはなかった。いつまでも子どもみたいなことを、みたいな話ばかりだったからな」


「ケアマネの仕事は、その方の人生に寄り添うことですからね」



 とは言ったものの、山崎さんのケアプランは、とにかく手間がかかった。

 ゲームを楽しむ、という定義って、意外と難しいし、何より先例がなかった。


 ちょっと軽い発言を後悔しつつ……。



 私はその日の仕事を終えた。


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