はなことば
笑顔って難しい。
体育館でピンクと赤色のグラデーションがデザインされているリボンが滑らかに舞っている。
今日も、朝早くから練習をしており、朝日が彼女を輝かしく照らしていた。
その少女は、佐藤結衣。新体操全国トップクラスの高校生選手である。
彼女は、演技中の笑顔をうまく作ることが出来ないことが唯一の悩みであった。
とある日。
「結衣ちゃん、今日の新入生歓迎会の演技、すごく上手だったね!感動!」
私の肩をたたきながら笑顔を見せてくれるクラスメイト。
「おつかれさま~」
と、他のクラスメイトも褒めてくれた。
今日は、新入生歓迎会として、全校生徒が集まり、部活の紹介や委員会の紹介などが行われた。
その中の「部活動紹介」で、私が所属している新体操部では、私の個人演技を発表することとなった。
最初は恥ずかしい気持ちもあったが、部員が少なく、後輩の念押しもあった為、引き受けることとなった。
演技自体は上手くいき、沢山の拍手をもらうことが出来、嬉しかった。
ただ、私の中で、「笑顔」に自信がなかった。
朝練をし、身体を整え、教室に行き、軽く英単語を覚えていく。
これが私の日課だ。
この日課にプラスして、毎日日替わりで変わる花をみて、挨拶をすることが私の楽しみであった。
そう。この日までは、この「花」を誰が毎日持ってきてくれているのか知らなかった。
ちょっと変な人と思われてもかまわない。朝早いし。誰もいないんだ。私は、いつも通りに「花」に
「おはよう」
と声をかけた。その時だ。
「おはよう」
と、返事が返ってきたのだ。
私はあわてて振り返った。そこには、クラスメイトの一人である栗田君の姿があった。
「く、栗田君…。何故ここに。」
私は赤面しながら、彼に聞く。
そしたら彼は、嬉しそうに私をみながらこう答えたのだ。
「佐藤さん、新体操の時、すごく素敵な笑顔だったね。」
予想外の言葉だった。質問の答えになっていないのもあるが、今までそんな言葉を人からかけられたことがなかったからだ。
そして彼は続ける。
「僕の家が花屋さんでね、担任の鈴木先生から、もし良かったら、毎日花を一輪持ってきてくれないか、と、お願いされていたんだ。先生も花が好きみたいでさ。僕も毎日花選ぶの楽しいし。」
私は、この花は先生のためだったのか、と改めて恥ずかしくなる。
だが、彼は続けた。
「でもね、この花を毎日見つけた時の佐藤さんの表情が、一番輝いて見えるんだよ。」
「え…?」
私は思わず顔をあげる。この私が?表情が輝いている?そう思った。疑った。
「だから僕は毎日、佐藤さんより先に学校来るようになっちゃった。」
と、彼は照れながら続けた。そして最後に、
「佐藤さんの笑顔、素敵だからさ。そのありのままの笑顔を新体操で見せれば良いんじゃないかな。何か悩んでいるようにも見えたけど、やっぱり、佐藤さんのその持ち前の笑顔が、見ている人を楽しませてくれる気がする。」
と言った。
何だろう。こころがすーっと軽くなっていく。心の糸がほどけていく。
私は、私のままでいいんだ。
「そっか…ありがとう。なんだかすごくうれしい言葉だなぁ」
と、私は栗田君にお礼を言った。
私と彼の横で、朝日に照らされているスミレが咲いていた。
それから毎日、変わらず彼は花を持ってきてくれる。
そして私は、毎朝、朝練をし、教室へ向かう。
花にも挨拶をする。もちろん、栗田君にも。
それからの新体操の演技は、みるみる上達していった。
自然な笑顔も増え、クラスメイトから、「前より明るくなったね!」とも言われるようになった。
そして、そんな自分を好きになることが出来た。
今日も舞い、花をみる。笑顔になる。
そんな幸せな日々を過ごしていく。ずっと続いて欲しいな。
本日の花は、ハナミズキ。
彼の思いが、いつか彼女に届きますように。
はじめまして。すーです。
初めて物語(?)を書かせて頂きました。
少しでも皆様の心がほっこりしますように。




