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生徒会の女王様  作者: 沙伊
春の球技大会!
7/29

春の球技大会!―練習編―

 更新遅れてしまいました……

 一週間以内にするつもりだったのに……




 墨原学園の制服について説明すると、墨原学園の制服は他校と違い、ブレザーでもなければ学ランとセーラー服でもない。

 正確に言えば幼等部と初等部は学ランとセーラー服服であるが、中等部と高等部は別である。

 中等部と高等部は色以外では同じで、細部も同一だ。

 中は白いシャツで、男子はネクタイ、女子は細いリボンで首元を飾っている。

 上着は詰襟で、前を少し開ける形で首元をベルト一本で留めており、左二の腕に墨原学園の校章が描かれていた。

 下はズボンとスカートだが、どちらもすそにラインが一本入っている。ちなみに中等部は銀、高等部は金だ。

 生徒会役員はさらに肩に金色の紐をかけており、中等部高等部共に生徒会長は二本かかっていた。

 しかし、体操服は他校と変わらない。むしろ、古いタイプかもしれない。

 何しろ……



「何でうちの体操服は女子ブルマなわけ?」

 キリナはさらされた素足を組ながら呟いた。

「……その質問に俺は答えられないが、一つ言っとく」

 雪彦はキリナを見上げた。


「いい加減……木から降りてこおぉぉぉい!」


「え~」

 木の枝に小さなヒップを乗せたキリナは唇を尖らせた。

「人を見下ろすのって気分いいのに」

「アホかあぁぁぁ!」

 あいかわらずのドS発言に、雪彦はツッコまずにはいられない。

「だいたいおまえ、どうやってそこまで登ったんだよ!」

「ハシゴ創った」

「創んな、んなもんっ」

 雪彦が叫ぶと、キリナははぁ、とため息をついて立ち上がった。

「せんせー、どくなよー」

「は? ……ってうおぉぉぉ!?」

 いきなりキリナが飛び降りた。しかも、雪彦めがけて。

 当然ながら、雪彦はべしゃっと下敷きになる。

「うん。着地成功」

「俺はマットじゃねぇよ!」

 下敷きになりながらも雪彦は叫ぶ。いい加減喉が痛くなってきた。

「ったく。どけって! 練習行くぞっ」

「はぁい」

 素直に降りてくれたので、雪彦はさっさと立ち上がった。



 中等部の競技はバレーボールだ。なので、練習は中等部用の体育館ですることになる。

 現在は放課後なので部活動をする生徒もいる。なので、練習は反対側ですることになった。

 とりあえず今日は女子だけで、雪彦が担任の一組と、毒島美和子(ブスジマ ミワコ)が担任の二組の合同練習だ。

「悪ぃ、毒島。こっちに合わせてもらって」

 雪彦が言うと、毒島はクスッと笑った。

「いいわよ、別に。こっちも練習したかったしね」

 茶色のロングストレートヘア、目鼻立ちがくっきりした顔、女性として完璧なスタイル……厳めしい名字のわりには、目を見張るほどの美人だった。

 名字のせいで妙なイメージを持たれがちの毒島だが、本人はクールだが優しい女性である。

「それにしても、まさか黒鳥さんを参加させるとはね。やるじゃない」

「いやー、その代わり一ヶ月間メシおごることになってさ」

 雪彦はため息をついた。もう今月、いや今日で何度目か。

 コートの中で少女達はボールを追いかけ、打ち上げる。その中にはキリナもおり、ちょうどスパイクを決めたところだった。

「やっぱり『ファースト』を抜きにしても凄い運動神経よね」

「だよな。あれがもっとまともな方向に向いてくれればなぁ」

「そんなことありません! キリナさんはあれでいいんですっ」

「そうかなぁ……ん?」

 雪彦は毒島と顔を見合わせ、右手側に目をやった。

「……何でいるんだ、階堂(カイドウ)

 雪彦は隣で当たり前のように立つ少年――階堂 (リク)を見つめた。

 長い黒髪を首の後ろで束ね、藍色の瞳を半眼にしている。人形のように整った顔に今はうっとりとした表情を浮かべていた。

 陸は雪彦の声など聞こえてないようで、一心不乱にキリナを見つめている。

 気のせいか……鼻息が荒いような。

「……あんたのとこの美形君よね。何あれ?」

「うん、まぁ……あれだ。キリナが原因でな、それで……その……」

 何と言えばいいのやら。なんせ陸は……


「キリナさぁぁぁん! 愛してますーーー!!」


 雪彦は前めのりに倒れかかった。

 コート内の女子の動きが止まる。全員の目がキリナに向いた。

「……何でいる? 階堂 陸」

 キリナの声がマイナス十度ぐらいになった。

「いやですねぇ、キリナさん。僕はキリナさんのいるところ、例え火の中水の中……ガハァッ!」

 陸の顔面にキリナの飛び膝蹴りがクリーンヒットした。

 向こうで練習していたバスケ部員の間を通り抜け、向こう側の壁まで飛ばされる。

 壁に激突して倒れた陸を、全員が青ざめた顔で見、次いでキリナを見た。

「お、おいキリナ! 何もそこまでしなくても……」

 雪彦がいさめると、キリナはふんっと鼻を鳴らした。

「どうせ大したダメージ受けてないよ。あれで『サード』なんだから」

「そうだけど……いやだがな」

「……フ、フフフフ」

 陸が起き上がった。不気味な笑い声付きで。

「フフフフフ……この程度で僕は諦めませんよ」

 誰もが陸に不快なものを見るかのような目を向けた。

 鼻にモロだったために鼻血を出し、気持ち悪い笑みを浮かべる姿は見るものを恐怖させる。顔がイケメンなだけに色々残念だった。

「この蹴りで……僕は諦めません。むしろ!」

 ぐっと陸の拳に力が込もった。


「もっと蹴られたい!」


『……』

 全員陸からできる限り離れた。

「何かもう……あいつ末期だな」

 雪彦はそう言うしかない。

 ふと視界の隅にキリナを見付け、そっちを見ると。

「ボクは嫌がる相手をいじめるのが好きなんだよな」


 両手にマシンガンを持っていた。


「な、なん、何でっ」

「能力で創った」

「だから創んなぁぁ!」

 雪彦の絶叫も届かず、キリナは引き金を引いた。


 ドパパパパパパパパッ


 鉛弾――ではなく、BB弾が発射される。

「痛っ。いたたた!」

 陸は頭を抱えた。弾の軌道から外れればいいのに、それをしないのは彼の性質ゆえか。

「……めちゃくちゃだな、もう」

 雪彦は疲れたように呟いた。


   ―――


「アハハハハ! 何だよそれ」

 雪彦の向かい側に座った青年教師、鮫島邦久(サメジマ クニヒサ)は笑い声を上げた。

 艶やかな黒い髪に灰色の瞳、白過ぎる肌は彼が純粋な日本人ではないことをしめしている。顔も鼻筋が通った美形だ。

「それでバレーの練習はほとんどできず、おまけに黒鳥を連れてきたと」

 雪彦の隣に座ってハンバーグを食べるキリナを見て、おかしそうに片目をつむった。

 学園都市内にあるファミレス。そこで雪彦、キリナ、邦久は夕飯を取っていた。

 何で学園内にファミレスが? と最初は疑問だったが、今では慣れてしまっている。

「そうなんだよなぁ……。つうかキリナ、おごりだからって高いもん頼むな!」

「追加しようかなー」

「だぁぁ! 止めろっ」

 まるでコントのようなやりとりに、邦久はまた笑った。

「ハハ。ところで、バレーの試合、勝てそうか?」

「こいつががんばってくれたら女子はな」

「報酬分は働くよ」

「おごりって報酬なのかよ!」

 雪彦はツッコミつつも話を元に戻す。

「ただ男子はなぁ……二年の三組には炎神達がいるし」

「あぁ。副会長達か」

 邦久は納得したように頷く。

「うちには階堂がいるが……一人だからなぁ。それに信用できるかどうか」

 雪彦は額を押さえてため息をついた。

「そっちはどうだ? 高校はバスケだろ」

「ん? あぁ。男子は無理だな。三年には秋人(シュウト)がいるから」

「あぁ……高等部生徒会長か」

 雪彦は高等部生徒会長、十間(トオマ)秋人の顔を思い浮かべた。

 ……できれば思い出したくない。

 雪彦は頭をぶんぶん振って「女子は?」と尋ねた。

「女子はおまえのクラス楽勝だろ? おまえの妹いるし」

時雨(シグレ)のことか」

 邦久はふっと笑った。

「あいつはよくクラスを引っ張ってくれてる。副会長なのは伊達じゃないからな」

「おい自慢になってる、自慢にっ」

 教師二人が話に盛り上がっていると、キリナは突然立ち上がった。

 無視されてキレたか!? と雪彦は身構えたが、どうやら違ったらしい。

「ごちそうさま、先生。勘定、よろしく♪」

 鞄を取り、颯爽と店を後にする。堂々とした態度に圧倒されてしまう。

「……はぁぁ。嵐が去った……」

 雪彦がため息をついていると、邦久は「ん?」と声を上げた。

「どうしたんだよ」

「いや……皿が増えてねーか?」

「は……?」

 雪彦は机の上を見た。

 雪彦と邦久が食べていたパスタの皿、キリナが食べていたハンバーグの鉄板、そしてクリームやフルーツソースがついたガラスのグラス。


 ……ガラスのグラス?


「あ、あいつ追加しやがったな!?」

 雪彦は思わず立ち上がった。

「あ……これ、一番高いスペシャルパフェ。千円する」

 メニューを確認した邦久が呟く。

「……っ」

「落ち込むな。割り勘してやるから」

 邦久は雪彦の肩をぽんと叩いた。


 そして四月が終わり――

 球技大会が始まる。





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