春の球技大会!―会議編―
都合上、短いです。
長く書く気力が無かったとも言う……
四月も終わりに近付いた頃――
中等部生徒会は、生徒会室で現在会議中だった。
普段は遊んでいるが、まがりなしにも生徒会。ちゃんと執務をする。
生徒会会長、黒鳥 キリナは乗り気薄だが。
「球技大会なんてやめない?」
さっそく言い出した。
「おまえ……いきなり何言い出すんだ!」
雪彦が怒鳴ると、キリナは唇をとがらせた。
「一年も二年もサボってたのに、三年で生徒会役員だからって強制参加するの、なんとなくヤダ」
「なんとなくで学校行事潰す気か!?」
雪彦は椅子から立ち上がった。
「まぁまぁ先生、落ち着きなって」
鷹雄は雪彦の肘辺りを軽く叩いた。
「いつものことッスよ。それに」
「それに?」
首を傾げる雪彦に、鷹雄は座ったまま熱弁を振るう。
「キリナさんのあの独裁的な態度! それに合ったあの強気な美貌! どれを取っても完ぺぐはっ」
鷹雄の顔めがけてボールが飛んできた。
鼻にヒットしたせいか、だらだらと鼻血が流れる。
「何か言ったか、変態でくの坊」
「イイエ、ナニモ」
鬼を背負ったキリナに、さしもの鷹雄も青ざめた。
「でもさぁ、キリリンじゃないけど、何で球技大会なんてあるの?」
芽衣がふにゃぁ、と机に上体を投げながら尋ねた。
「ん? それはな……あー……」
雪彦は言葉に詰まってしまった。
実を言うと、雪彦自身もあまり球技大会の意味は知らない。
普通の学校ならクラスの絆を深めるためということなのだが、この学校では違ったはずだ。
「球技大会を行う理由は」
突然炎神が喋り出した。
「俺達異能者が普通の人達と変わらない生活をする訓練なんだ」
「訓練、ですか? それなら普段からしてるんじゃ」
硝哉は首を傾げた。
「うん。確かに体育とかで『ファースト』や『セカンド』能力を使わない訓練をやってるよ。でも、とっさの時にそれが活かせない場合があるでしょ」
炎神の言う通り、訓練は完璧でも、もしもの時にそれが実践できない場合が多い。
「だから、球技大会は応用編の訓練なんだ。ボールがどこから飛んでくるか解らない状態で能力を使わず対応する。実際、共通ルールとして能力は使ってはいけないことになってるだろ?」
「確かに……」
鷹雄はふんふん頷いた。
「異能者として社会出るとしても、常人と同じ生活をしなくちゃいけない。異能者がなる職業には戦闘を主とするものもあるけど、普段は能力は必要無い。だからこういう普通に過ごせるかの実践訓練は必要なんだ」
炎神はそう話をくくった。
フォローありがとう、炎神!!
雪彦が心の中で感謝してるのに対し、キリナはふぅん、と頬杖をついた。
「なるほどねぇ。でもやっぱりやりたくない」
「キリナおまえな!」
雪彦は声を少し荒げて怒鳴った。キリナには通じなかったが。
しかしふと難しい顔をした後、名案を思い付いたとばかりに手をぱん、と叩いた。
「ねぇ先生」
「お、う?」
キリナの声音が甘えるような声になったことに、雪彦は危機感を感じた。
「ボクに参加してほしいんだよね」
「まぁ……おまえ『ファースト』無しでも身体能力ずば抜けてるし、担任としては、勝ってほしいしな」
「じゃ、参加してあげる。ただし」
キリナはにぃ、と悪い笑みを浮かべた。
「一ヶ月間三食ご飯おごって♪」
「……はあぁ!?」
雪彦は目を丸くした。
「ちょっ、何でだよ!?」
「メリットが無いと戦わないよ」
「っ、おまえその唯我独尊キャラなんとかしろ!」
「でもさぁ」
芽衣はだらけたまま、雪彦に瞳を向けた。
「キリリンがいないと、春樹先生のとこ負けちゃうんじゃないの?」
「うぐっ……」
雪彦は再び言葉に詰まった。
キリナを見、芽衣を見る。
芽衣もまた、身体能力がずば抜けてる。さすがキリナの幼馴染みと言うべきか。
つまり……キリナがいないと、勝率はゼロ。
雪彦はがっくり肩を落とす。キリナが勝利の笑みを浮かべたのが見えた。