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生徒会の女王様  作者: 沙伊
激動の文化祭!
29/29

異常者の異能




「『殺したがりの死体(アンデット)』? 随分なネーミングだね」

 キリナはふんと鼻を鳴らした。

「何だい? 殺しても死なない……もしくは殺されてるのに殺したいって意味か?」

「当たらずとも遠からず……と言っておきましょう」

 身加島季流亜はそう言って構えた。

 明らかに素人の構え。武道をたしなんでいるわけではないらしい。ただじっと、キリナの動きを観察するように見つめるだけだ。

 だが、この自信を持った態度は何だ? ただのこけおどしではあるまい。

「ふ……ん。じゃ、ボクの方から行かせてもらうかな!」

 キリナは一メートル以上ある棒を創り出し、季流亜に突き出した。

 季流亜は避けない。今のはあまりスピードを乗せていないのに、ただこちらを見るだけで微動だしない。そのまま、棒が腹を直撃するまで動かなかった。

「……う゛っ」

 そして吹っ飛ぶ季流亜。しかし痛みに呻いたのは、キリナの方だった。

 腹を抱え、うずくまりかける。何とか体勢を立て直したものの、痛みと驚きは引かなかった。

「……どういうこと?」

 攻撃を受けた覚えは無い。なぜなら季流亜は、キリナに攻撃される直後までぴくりともしなかったのだから。

 例え攻撃を受ける直前に動いたとしても、あそこからヒットさせるのはほぼ不可能だ。

 ――いや、それより何より気になるのは、攻撃を受けた場所だ。

 腹を攻撃したら、腹に何かに打たれたような痛みが走った――これは偶然か?

(試すかな)

 キリナは数秒でそこまで考え、ようやく立ち上がった季流亜との間合いを詰めた。

 そのまま、あまり力を入れずに、彼の右肩を殴る。

 季流亜は悲鳴も上げずに壁に激突した。

「っ……!」

 瞬間、キリナの身体に痛みが走る。痛みがあったのは、右肩と背中。

 季流亜が打った場所と同じだった。

「っ……はぁん。なるほど」

 痛みに顔をしかめながらも、キリナは紫の瞳を細めた。

「なるほどなるほど。解ったよ、君の能力がどういうものか」

「……」

「君の異能は……自分の痛みを攻撃した相手に与える異能だ」

 視界の端で、(リク)薙切(ナギリ)が目を見開いていた。しかし季流亜の方は、無表情のまま何も言わない。こちらを見るだけだ。

「君が受けた攻撃と同じ場所に、ボクも痛みを感じたからね。まさに痛み分けというわけか」

「……当たりです」

 季流亜はゆらりと、おぼつかない足取りで一歩踏み出した。視線だけが、キリナに固定されている。

「まぁこれにはまず、僕自身が痛い思いをしなくちゃいけないんですけどね。傷を相手に転移させる異能じゃないし……まさに痛み分けなんですよ」

 そう言って、両手を広げる。

「さぁ、攻撃を続けてください。ただ、攻撃をすればするほど、貴女は負けていくんです」

「どうだろうねぇ。体力や耐久力はボクの方が上だろうし、例え体力耐久力が同じでも、結局引き分けに終わっちゃうんじゃない?」

 キリナの言葉に、季流亜は「そうですね」とあっさり前言をひるがえす。

「でも、それでも僕が負けることはありませんよ」

「どうかな。見付けちゃったんだよね、ボク」

 キリナが含み笑いを浮かべると、季流亜の表情がぴくりと動いた。

 無表情だったのが、初めてほころんだ。

「見付けたって……何をです?」

「さぁ? 知りたければ来なよ」

 おいでおいでをするように手招きすると、逆に季流亜は後ろへ下がった。警戒しているらしい。

 だが、それでもキリナのスピードについていけるような戦闘力を持ち合わせていない季流亜である。彼女のやることに、身体は反応できなかった。

 つまりは。


 ヒュゥンッ


 キリナの創り出した鞭が目にも止まらぬ速さで身体に絡み付くのを、季流亜は避けられなかったというわけだ。

「っ、え……」

「君は最初の時も二度目の時も、ずっとボクのことをじっと見ていた! つまり君は、対象を見ていなければ異能を使えない!!」

 どうやら図星のようだった。目を見開く季流亜を、空中に放り投げる。

 墨原学園校舎の廊下は広い。当然のように、天井もやたらに高かった。

 その半ばの高さまで上がった季流亜の身体より高い場所に、キリナは跳躍する。

 季流亜から見て背後――つまりは、死角に当たる場所に。

「こんな風に、見えない場所に相手がいたら、『殺したがりの死体』とやらは発動できない!」

「く、うぅ……!」

 それでも季流亜は、悪あがきのように首を巡らそうとした。

 しかしキリナは、その首――正確にはうなじ部分に、踵落としを炸裂させる。

 容赦無い蹴りだった。結果は考えるまでもない。

 季流亜は床へと墜落し、そのまま起き上がらなかった。ぴくりともしなかった。

 白目を剥いてるが、まぁ死んではいないだろう。

 キリナは季流亜の横に降り立ち、笑った。

 勝利による喜びや余裕の笑み――ではない。

 悪魔と形容されてもおかしくないような、それはもう、悪い笑みだった。

「生徒会の女王なめんな、ばーか」

 キリナはすでに聞こえていないだろう相手に対し、親指を下に向けた。


   ―――


 何でキャラが被ってるという理由で、自分は同級生(?)に絡まれなければならないのだろうか。

 時雨は顔をしかめて相対する少女を見つめた。とにかく嫌われていることは解るが。

「……あのさ、意味解んないんだけど?」

「あんたが解らなくてもあたしが解ってりゃいいんだよ」

「……」

 何だろう。予測だが、自分と彼女は相性が悪い気がする。

 時雨は何と反応したらよいか解らず、口を閉ざした。

 本当にこの少女は何者なんだろう。自分が何かしたろうか。

「……一体、おまえは誰なんだよ」

 時雨はげんなりとした声を出した。それに対し、少女はこう答える。

「高等部二年、Z組の身加島季安羅(ミカシマ キアラ)だ!」

「Z組……?」

 時雨は眉をひそめた。

「そんなクラス、聞いたことないぞ」

「当たり前だ。新設されたクラスだからな」

「だが……」

 おかしい。そういうクラスを作るのなら、事前に生徒会に話が入ってくるものなのに。

 新設されたどころか、新設されるとも聞いたことがない。

 例の能力同好会といい、一体この学園で何が起きていると言うんだ?

「まぁとりあえずそれはそれとして」

 少女――季安羅はにたり、と笑った。

「ここでおまえに会えたのは幸運だぜ、鮫島時雨ぇ……! キャラ被り、及び生徒会所属の罪で断罪して」

「はい、ストォップ」

「あだっ!?」

 突然、季安羅の頭に手刀が叩き込まれた。

 実に容赦無い一撃だった。

「全く何をやってるんだ、君は。まぁ予想していたことだがね」

 季安羅の脳天を攻撃した青年は、彼女を押しのけて前に出た。

 制服からして高等部のようであるが、しかし、見たことの無い顔だ。

 時雨は警戒心を強めながら、少しだけ後ろに下がった。

「あぁ、驚かせてすまないね。僕は蘭湯根(アララギ ユネ)。彼女と同じ、Z組の生徒だ。まぁ学年は違うが」

「……」

「そんな顔しなくても、僕は君に敵意は無いよ。それどころか」

 青年――蘭湯根は、時雨の手を取った。

 そっと。まるで令嬢に対してするかのように。

「好意すら抱いている」

「……は?」

「鮫島時雨さん……僕は君に、恋をしてしまったようだ」

「……」

 この青年、顔立ちは悪くない。むしろ、整っている部類に入るだろう。普通なら、ここで頬を染めるべきかもしれない。

 しかし時雨は、そんな当たり前の反応をしなかった。ただあきれ、閉口したのみである。

 まずいきなり会って恋をしたとかそれはないだろうと思ったし、一目惚れにしたって展開急すぎるとも思ったし、何より誰だこいつと思った。

 それらの理由で固まって早十数秒。時雨は背後から、何かが近付いてくるのを感じた。

 驚いて振り返ると、見覚えのある人物が怒涛の勢いで走ってくるのが見えた。

 一瞬他人の振りをしようかと思うぐらいの突進に時雨が顔をひきつらせていると、彼はすぐ近くに急停止した。

 彼――十間秋人は、時雨の腕を引っ張り、湯根から引き離した。

「てめぇ……時雨に何触ってんだ」

「なぜだい? 僕は彼女のことが好きなのに」

「てめぇの意見なんざ聞いちゃいねぇ。重要なのは時雨の意見だ」

 珍しく正論を言う秋人に、時雨は目を丸くする。その後、首を傾げた。

「秋人、こいつらのこと知ってるのか?」

「……男の方はな。女子は知らん」

 しかめられた顔からして、あまりいい出会い方をしていないようだ。時雨は秋人と湯根を見比べた。

 湯根の方は、なぜふむ、と唸り、いきなりとんでもないことを言い出した。

「そんなに気に入らないなら、僕と勝負するかい?」

「何……」

「鮫島さんをかけての勝負だ。君が勝ったら僕は彼女を諦める。僕が勝ったら、彼女を恋人にする」

「な!? んな勝手に」

「いいだろう」

「ってうおい、秋人!」

 抗議の声を上げかけた時雨を遮り、秋人が承諾する。思わず時雨が睨むと、秋人は湯根を睨み続けながら低い声を出した。

「心配すんな。この頭のイカれたむかつく野郎は、俺の異能でぶっとばす」

 どうやら本気モードに入ったようである。理由は解らないが。

 時雨が気迫に圧されて黙り込んでいると、湯根がいきなり笑い出した。

「はっはっはっ。それは怖いねぇ。だから僕も本気を出そう」

「本気だと? てめぇ異能は使えねぇんじゃねぇのか」

「使えないよ。僕らは君達みたいに天然物の異能は使えない」

 湯根の不気味な笑みに、時雨はぞっとした。

 こんな笑い方ができる奴、見たことない。

「だからぼくは、人工の異能を使う」

 そう言ったとたん、湯根の姿が消えた。






 気が付けば一ヶ月以上投稿していませんでした……

 すみません、本っ当に申しわけ無いです! 続きを楽しみにしている(いないかもだけど)に全力で頭を下げたいです。

 しかも短くてぐだぐた。最近迷走気味です。多分次も一ヶ月以上かかると思います。

 では!



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