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生徒会の女王様  作者: 沙伊
激動の文化祭!
28/29

異能者と異常者




「よかったんですかねぇ、学園長」

 十間秋人(トウマ シュウト)が退出した学園長室。蘭湯根(アララギ ユネ)月陰玄英(ツキカゲ ゲンエイ)に話しかけた。

「何がかね?」

「僕達のことを詳しく言わなくていいのかってことですよ」

 湯根は肩をすくめ、部屋の二つあるソファーの内一つに座った。

 秋人がいない今、この部屋にいるのは二人だけである。秋人は他に誰かいるのではないかと警戒していたが、別に湯根以外に誰かが隠れてはいなかった。

 もっとも、そもそも湯根は隠れてはいなかったが。

「僕達が人工的(・・・)に得た異能のこと――『フォース』のこと、知らないままになっちゃうんですけど」

「いっこうにかまわんよ。むしろその方がいい」

 玄英はぎぃ、と笑った。

 それは人格破綻者である湯根でさえ共感しがたい、端的に言えば嫌悪感を抱かせる笑みだった。

「厳しい状況下に置いてこそ、彼らの研究がはかどるというものだからね」

「……そうですか。しかし、生きてられますかね」

 湯根はくすくす笑った。

「Z組には、中高に大問題ありな姉弟がいますからね」


   ―――


 薙切(ナギリ)(リク)は放課後で誰もいない廊下を走っていた。

 全力で。全速力で。

「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 恥も外聞もかなぐり捨て、悲鳴混じりの叫び声を上げながら。

 それははたから見れば引いてしまい、更にはその人間性さえ疑いたくなるような様だが、しかし今の二人にそんなことを気にする余裕があるわけない。

「ちょ、待って待って待って待って、本当に待って! 僕完全巻き込まれじゃないですか!? 巻きぞいじゃないですか!? 確かにいじめられるの好きですけど死にたくはありません死ぬならキリナさんに踏まれて死にたいです!」

「一息にドM発言言い切るな! つか黙って! 走る気力無くなるからマジで黙ってえぇぇぇぇぇ!!」

 陸も必死だが薙切も必死だ。

 止まれば死ぬと、本能で悟ってるからである。

「つか何だよあの姉弟! この学園はいつ殺人鬼入学させたんだよっ。危険人物入れんな!」

「先輩、それ今更です」

 それは言ってはいけない。

 ともあれ二人はしゃにむに走っていた。結果、前方を見ずにいた。

 当然誰か、もしくは何かに当たるわけで。


 ドンッ


 容易に想像できたであろう結果が起きてしまった。

「いったぁ……す、すみません……っ!」

「った……ん、何やってんの、君達」

 しかもよりによって、ぶつかったその人物は中等部生徒会会長、黒鳥キリナだった。

 薙切はそのタイミングの悪さに、己の運の無さを恨めしく思った。

 しかし陸は違った。

 むしろ彼にとっては幸運で――いや不幸が彼にとって嬉しいものなのか。

「っっっ……キリナさぁぁぁん!」

 さっきまで低姿勢で頭を下げていたのに、この変わりようである。更にはキリナに抱きつこうとしていた。

 ただ、その後の落ちは見えていた。

「寄るな、虫が」

 キリナは予備動作も無く陸の腹を蹴り飛ばした。

 当然と言えば当然の反応、酷いと言えば酷い反応だった。

 とりあえず薙切の言うことは、

「自業自得だ、つかアホか」

 であった。



 キリナに先ほどまでのことを手短に話すと、彼女は薙切の後ろを見やった。

「いないけど、その殺人鬼もどき」

「え……」

 今すぐにでもその場から立ち去りたかった薙切は、ぐるりと振り返った。

 確かに、いない。さっきのわけの解らない少年も含め、誰も背後の廊下にはいなかった。

「あ、あれ……何で……?」

「振り切ったんじゃない? 残念なことに」

 キリナがつまらなそうに言った。

 言い方が気になるが、彼女の言う通りかもしれない。

 しかし――『ファースト』を使ったとしても、相手も『ファースト』を使えばそうそう振り切れるものじゃない。

 第一そんなに走ってないし、自分達の『ファースト』は大した能力でないはずだが。

「……何かひっかかってそうだね」

「うん、二つ」

「二つ?」

「一つは振り切れた理由。もう一つは」

 薙切は視線を下に向けた。

「何でおまえ踏まれてんの」

 キリナの片足に踏みつけられてる陸を、薙切は冷たい目で見下ろした。

「いえ、せっかくキリナさんに運命的に出会えたので……ぐえっ」

「な・に・が、運命的だ。それを言うなら偶然的だ」

 キリナは笑いながら陸を踏む足に力を込めた。

 めちゃくちゃいい笑顔だ。そしてめちゃくちゃ怖い笑顔だ。

「さて……君にはどういうお仕置きしようかな?」

「俺も対象!?」

 薙切は後ずさった。

 彼までキリナの餌食になるところを、幸運なのか不幸なのか。

「見つけました」

 先程の少年――身加島季流亜(ミカシマ キルア)が、追い付いてきた。

 別に突然現れたわけでなく普通に廊下の向こうから走ってきたのだが、薙切にはのけぞるのに充分要素だった。

「な、あ!?」

「今度こそ、抹殺させてもらいます」

 季流亜はナイフを構え、薙切の頭に振り下ろした。


 ガギイィィィィィィィィィィィンッ


 ――しかし、その攻撃は受け止められる。

 キリナの持つ、大剣によって。

「ふぅん。君が殺人鬼もどき君?」

 キリナはにいぃ、と黒い笑みを浮かべた。

「軽いね」

 大剣でナイフを受け止めたまま、キリナは片足を旋回させる。見事に季流亜の横腹にヒットした。

 たまらず吹っ飛ばされ、倒れる季流亜。その様子に、キリナは片眉を上げた。

「君……何で『ファースト』使わないわけ?」

「……使わないんじゃなく、使えないんですよ」

 季流亜は起き上がろうとしたのか、床に手をついた。

「『ファースト』も『セカンド』も『サード』も。僕は――僕達(・・)は使えません」

 季流亜は驚きの言葉を口にした。

 なら彼は、どうしてこの学校の制服を着ている?

 異能者しかいないこの学校の制服を――どうして着用できる?

 しかし、キリナは驚いたりしなかった。むしろ、納得したように頷く。

「なるほど……君は学園長が言ってた『フォース』か。ふん、だったら負ける気がしないね」

 鼻を鳴らすキリナを、季流亜は冷めた目で見つめた。

「なめないでください……僕は貴女達『天才』に使えない力を持ってるんですから」

「ん?」

「貴女に僕が倒せますかね」

 季流亜はようやく起き上がった。

 ゆらり、と。さながらゾンビのように。

「この『殺したがりの死体(アンデット)』、身加島季流亜に、勝つことができますかね」

 冷めたその目。さながら死んだ人間のようだった。


   ―――


 時雨(シグレ)は能力同好会とやらが気になり、独自に調べていた。

 茉莉(マツリ)は用事があるとかで先に帰っている。どちらにせよ、個人的に気になることなので彼女の手を借りる気は無かった。

 しかし、いくらパソコンで検索しても詳しいことは解らない。詳しいどころか、表面的なことも、全く。

 長い間パソコンとにらめっこしていても何も進展しない。

 そのため、気分転換に学園内を散策することにした。

 あまりきりつめるのもよくない。

それに、意外と外で情報を得られるかもしれないし……

「まぁ都合よく見付かるわけないけど」

 誰に言うでなく、時雨は一人ごちた。

 ただまぁ、見回りぐらいにはなるだろう。そういう仕事は風紀委員の役目だが、しかし何もしないよりいい。

 背筋よく歩く様はモデルのようだが、自分の容姿をいまいち理解してない時雨はそれに気付かない。

 まぁ気付こうが気付くまいが、本人は気にもしていないのでどうでもいいことである。

 ただ、気にしてほしいと思う者がいるのは事実だ。

 例えば彼女にひそかに思いを寄せている秋人とか。例えば親友の茉莉とか。


「……気に入らねー歩き方だなぁ、おい」


 よく解らない他人とか。

 ――いやいやいや待て待て待て。

 時雨はいきなり目の前に現れた同い年らしき少女に、顔をひきつらせた。

 制服がはだけて谷間が見えている。いくら制服をどう着こなしてもいいとはいえ、この着方は無いんじゃないだろうか。

 それに目付きがやたらに悪い。自分を睨んでいるというのもあるだろうが、それを差し引いてもがらが悪過ぎた。

 不良か、と時雨は思わず納得する。彼女はこういう女子生徒に絡まれることが多いので、わりと冷静だった。

 まぁ歩き方が気に入らないなんていうのは、さすがに無かったが。

「えっと……悪ぃんだけど、ケンカ売られても買う気無いんだけど」

「はぁ!? いきがってんじゃねぇよ!」

「いや、いきがってません」

 思わず敬語になる時雨である。

「いきがってる……いきがってるに決まってる……!」

 しかし彼女は聞く耳を持たなかった。

 そして時雨がいきがっていると思う理由は。


「あたしとキャラ被ってんだからなぁ!」


 沈黙。

 痛いぐらいの沈黙。

 哀しいぐらいの沈黙。

 目をそらしたくなるぐらいの沈黙。

「……は?」

 時雨の返答は、それだけだった。






 まずおわびを……

 ……更新遅れてすみませんでしたぁ!!

 一ヶ月近くほっぽってました……しかも短い……

 すみません本当ごめんなさい土下座したいです;;

 これからもこんなペースかと……

 繰り返しますが本当にすみません……;;



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