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生徒会の女王様  作者: 沙伊
生徒会の夏期合宿!
24/29

生徒会の夏期合宿!―最終日―<後半>





 祭りというものを、実は生徒会メンバーはあまり経験したことがない。

 なので、こういう場は際限無くテンションが上がるのである。


「たこ焼き! たこ焼き買おっ」

「焼きそばもあるよ!」

「ね、金魚すくいしない?」

「くじ引きもありますよ」

「俺型抜きやりたい!」

「射的か……燃えるな」

「リンゴあめ買いたい俺!」

「私はわたあめがいいな」

「輪投げやるー!」

「……人混み……怖い……」

 あれ? 一人だけテンション駄々下がり?


 ――とまあ一人の例外を除いて。

 小学生並にはしゃぐ中学生と高校生を、雪彦と邦久はまぶしげに見つめていた。

「いいなー、学生って。こう、何ての? 場の不思議な魔力に惑えるっつー」

「大人になると冷めた目でしか見れねーっつうか?」

 二人の笑顔は生暖かい。というか、大人二人が祭りではしゃぎまくる様は端から見ればキモい以外の何でもないだろう。

「つうか年がいもなくはしゃいじゃって、まあ」

「あれ? 秋人十八だよな。自信無くなってきた」

 二人は道の端で祭りの様子を眺めながら缶ビールをあおっていた。

 ひしめくようにして立ち並ぶ屋台。店数が多いため、同じ店種のものが横ならびになっているが、誰も気にしない。気にしたら負け、という気もする。

 そしてそれを順に回っていく人々。大多数が家族かアベックだ。

「あれー? 俺ら相当寂しくない?」

「男二人とか……哀しすぎるよな」

 気付くのが遅い。

「おいおい、二人してしけた面して」

 時雨が戻ってきた。手に三本のリンゴあめが握られている。

 中等部の女子二人は浴衣だが、彼女と茉莉もまた、キリナの能力で浴衣を着ていた。

 時雨が着ているのは青い浴衣である。白百合が描かれており、結い上げられた長い髪は銀細工の花の髪留めで留められていた。

 いつもの印象と違って見え、思わずまじまじと見てしまう。それに気付いた時雨が首を傾げた。

「どうした? 雪彦先生」

「いや……大人っぽいなぁってな」

 素直にほめれば、時雨は頬を少し赤くした。

「おい、雪彦」

「ん? 何だよ邦久」

「親友だからって妹はやらんぞ」

「何でそうなる! このシスコンっ」

 雪彦はあきれて邦久を怒鳴り付けた。

「何喧嘩してんだ? まあいいや。はい、二人の分のリンゴあめ」

 時雨は意味が解らないというような顔をしつつ、手にしたリンゴあめを渡してきた。

「さ、サンキュー」

 雪彦は苦笑しながらそれを受け取った。リンゴあめは正直、ビールに合わない気もするが。

 それにいまいち気付いてないだろう時雨は、「ところで」と切り出した。

「雄一、知らねぇか?」

「え、いや……。その辺にいるんじゃ……って、いない」

 邦久は目をぱちぱちさせた。

 雪彦も辺りを見渡してみる。……確かにいない。

「あれ……さっきまで路地の端でうずくまって地面にのの字書いてたのに」

「ありがちだな! つうか声かけてやれよ」

 雪彦は邦久の言葉に頭を押さえた。

「一人にしとくと心配だな……色んな意味で」

 時雨は顔をしかめた。

「俺その辺探して……ん?」

 ふと、向こうから騒がしい声が聞こえてきた。

「雄一かな」

「とりあえず見に行こう」

 三人は顔を見合わせた後、声の方へ歩み寄った。

 結果としてはその中心にいたのは雄一ではなかったのだが……まぁ知った顔であるのには間違い無かった。

「何やってんだ、あの二人。いや、予想つくけど」

 雪彦はそう呟いた。

 騒ぎと野次馬の中心にいたのは、なんとキリナと秋人だった。二人して射的用の銃を構えている。で、その隣には山積みになった商品が。

「店の人……泣いてるんだけど」

 時雨の言う通り、次々商品を撃たれて奪われていく様を見て、射的屋の店主らしきオヤジがうちひしがれていた。

 更に近付くと、ののしり合う声まで聞こえてきた。

「中心に撃ててないじゃないか。腕悪いね」

「てめぇこそ狙いと違う標的撃ってんじゃねぇか」

「おあいにくさま。ちゃんと狙い通り撃ててるよ。ズレぎみの君と違ってね」

「ハッ。中心に撃てたからって倒されるとは限らねぇんだよ。これだから素人は……」

「素人はそっちだろ。中心に撃ててこそ真のガンマンさ」

「中心が有効とは限らねぇんだ。昨日今日銃を取った奴に何が解る」

「……」

「……」

 弾が放たれる音が止まった。代わりに、周囲のざわめき。

「今日こそその口閉ざしてやる」

「今日こそ叩きのめしてやる」

 ハンマーとビーズ。ついにそれが放たれ――


「こんの阿呆が!」


 ――なかった。時雨のハリセンがキリナと秋人の頭に炸裂しただけだった。

「周りを考えろ! 一般人だぞ。おまえらが本気出したら怪我だけですまねぇんだよ」

 時雨はうずくまる会長二人をぎろりと睨み下ろした。

「やるんだったら人のいないところ行け! 山、森、いやいっそ辺境の地で頭冷やしてこい!」

 反論も許さない時雨の怒鳴りに、キリナと秋人はだんまり、野次馬達は拍手喝采だ。

 雪彦と邦久だけは、ただ呆然とその様子を見ていただけだが。

「全く。二人そろうとろくなことになんねぇな」

「それには同意するな」

「だろだろ……って、風間!?」

 ため息をついていた時雨は飛び上がりそうになった。

 気付いたら隣に硝哉が立っていたのである。誰だって驚くだろう。

「し、硝哉。いきなり現れてどうした?」

 雪彦は目を瞬いて進み出た。

「いや、炎神さんが見あたらないから探してたんだよ」

 硝哉は顔をしかめて前髪をかき上げた。

「炎神が……?」

 雄一に続き炎神もいなくなった。どういうことだ、これは。

「もし一緒にいなくなったなら安心だけど……そうじゃなかったらまずいな」

 雪彦は顔をしかめた。

「俺も一緒に探すよ」

「雪彦、俺もいく」

 邦久も表情を引き締めて頷いた。

「俺も手伝うよ。おら、二人も」

「えっ、ボクらも?」

「お、おい時雨。襟を引っ張るな!」

 会長達の悲鳴などどこ吹く風で、時雨は二人を引っ張ってどこかへ行ってしまった。

「さすが……」

 雪彦は思わずそう呟いたのだった。


   ―――


 危機的状況、というのはこういうことを指すんだろうか。炎神はのんびり考える。

 背後にいるのは雄一。年上だというのに自分と大差無い体格は、小型犬のように震えている。

 そして目の前には……

「ほらほら、痛い目見ない内に財布出しちゃいなよー」

 多数の不良がいた。


 ふらふらと路地を外れ、暗い場所へと進む雄一を心配して追いかけたのが運の尽きだったのだろう。二人して不良に絡まれてしまった。

 別に一般人の不良など墨原学園の不良に比べれば可愛いものだが、かと言って積極的に関わりたいわけでもない。

 向こうからすれば、小柄な少年二人など格好の餌食なのかもしれないが。


 で、この状況をどう打破すべきか、炎神は考えていた。

 能力で返り討ちにするのが手っ取り早いが、一般人に異能を使うのは気が引ける。

 が、平和的に済ますために財布を渡すのは、どうも癪だった。

 逃げるのが一番いいが、それを防ぐためか完全に取り囲まれている。

 一人なら強行突破もあったかもしれないが、万が一、雄一が捕まる可能性が無いわけでもない。

 考えてる間にも、不良達の顔は不機嫌になっていく。

 反応が薄いことにいらだっているのか早く財布をよこせと思っているのか。それは解らないが、あまり流れはよくない。

「えっと……その、財布は正直渡せないというか」

「はぁ? 俺らに逆らうのかよ」

「俺達この辺りじゃ最強のチームだぜ」


 知るか、んなもん。


 反射的にそう言いそうになった。

 だいたいあくまでこの辺りだけだろう。井の中の蛙とはよく言ったものだ。

 相手もよく見ず偉そうな口を……まぁ見ても解んないだろうけど。

 炎神はしょうがないと、半ば諦め気味に拳を持ち上げ――


 ゴオォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!


 ――る前に不良がまとめてぶっ飛んだ。

「は……?」

 炎神と雄一は目を瞬く。そして目線を下に下ろした。

「大丈夫? 怪我無イ?」

「エ、エアル?」

 エアルがいた。芽衣の操る人形の、エアルが。

「二人共、いないと思ったらこんなところに~」

 そして予想していた声も。

「芽衣……何でいるの?」

「エンちゃん探しに~。ショウちゃん心配してたよぉ」

 それにしても、と芽衣は人形を使って吹っ飛ばした不良達を眺めた。

「いるもんだねぇ。どんなとこにもあーゆーの」

「そうだね……とりあえず」

 炎神は芽衣と雄一の手を取った。

「逃げよう!」

「ふえ?」

「わ……」

 呆然としたままの二人を連れ、炎神はその場を離れたのである。



 随分走った。屋台群からも離れたが、まぁいいだろう。

「もぉ……何で逃げたのさぁ~」

 芽衣はぷくっと頬を膨らませた。

「あのね……こんなところで騒いだら、また春樹先生達に迷惑かけるじゃないか。おまけに能力使って……」

「帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい……」

「ほら、こんなんになってる人いるし」

 炎神は完全に怯えてしまっている雄一に哀れみの視線を向けた。

 隙を作って逃げるつもりが、あれでは恨みを買ったかもしれない。

「はぁ……追いかけてきたらどうし……」

 炎神は言葉を切った。

「……遅かった」

 そう呟く他無かった。


 周りは、すでに不良達に囲まれていたのだ!


 遅れて気付いた芽衣も「あちゃー」と顔をしかめた。

「失敗しちゃったね、エンちゃん」

「俺じゃなくて芽衣のせい……もういいや」

 だんだん投げやりになってる炎神である。

「さっき仲間から連絡があってよぉ。おまえらぶちのめせってさ」

 不良の一人が顔をにやつかせながら前に出た。

 目線は芽衣。狙いは明白である。

「エンちゃん、どうする?」

「どうするも何も……『ファースト』使って何とかやり過ごさないと」

 炎神は少しだけ身を低くして拳を持ち上げた。

 と。


 ドガアァァァァァァァォォォォォォォォォォ!


 また吹っ飛んだ。不良がひとかたまりに。

「あれ、デジャヴ? ……ていうか、女王降臨?」

 視線を動かし、映ったその姿に、炎神の頬がひくついた。

「ふふふふふ……いじめがいありそうな雑魚共がいっぱい♪」

 そんなことを言うのは一人しかいない。

 キリナである。

 更に更に……

「ふん。弱い奴らが群れを成しやがって……ヘドが出る」

 ――暴君まで参上してしまった。無論、秋人のことだ。

 気分はこの世の終わりである。

「え……俺達助けに来たの? それとも一緒くたに倒しに来たの?」

 炎神は少し混乱してわけの解らないことを言った。

 その間に、キリナと秋人の会話は進む。

「こいつら倒した数が多い方が勝ちってことにしない?」

「いいだろう。実力差を思い知らせてやる」

「ふん。それはこっちのセリフだよ」

 会話終わり。


『おとなしくやられろ、クズ共ぉ!』


 ドS女王と暴君王は不良を狩り始めた。

 キリナが長い棒で不良をまとめて凪ぎ払えば、秋人は銃並の威力で放たれるビーズを不良達の手足に撃ち込む。

 秋人が『セカンド』の念動力で不良達をぶっ飛ばせば、キリナも『セカンド』で不良達を打ち倒す。

 SF映画のような光景に、炎神は閉口した。

 もはや何も言えない。放っておいてもことは終わりそうだった。

 しかしである。現実がそんな甘いはずがない。

「っ、くそが!」

 完全に油断していた。

 不良の一人が、まさかナイフを持ち、自分を人質に取ろうとは。

 炎神はいきなりのことに対応しきれなかった。勿論、すぐ抜け出そうしたのである。

 あの言葉を聞くまでは。

「おい、てめーら! このチビの命が惜しかったら妙な技使うのやめろ!」

 キリナと秋人の動きが止まった。

 ……一瞬だけ。申しわけ程度に。

 その後は何ごとも無かったように戦闘に励む。

「っの、聞けー!」

「……が」

 叫ぶ不良の腕を、炎神はガッと掴んだ。

 抵抗ではない。それは。

「誰がチビだって?」


 攻撃の合図だった。


 不良Aに待ち受けていたのは、悲惨な結果である。

「へぶっ!」

 鼻先に叩き込まれる拳。不良は放射線を描いて茂みの中に消える。

「すっごぉい」

 芽衣は感嘆の声と拍手を炎神に送った。

 キリナと秋人も、図ったように不良達を倒し終わっている。

「ん~? 最後の一人、副会長が倒しちゃったわけ?」

「ちっ……となると引き分けか」

 二人の恨めしそうな目に顔をひきつらせることは無かったものの、炎神はすぐさま冷静に戻った。

「どっちが勝っても争いの種になるだけじゃないですか」

 そういわれれば二人も押し黙るしかなかった。

 炎神はため息をついて辺りを見渡した。

「はぁ……そろそろ帰りましょう……」


「帰らせるかよぉ」


 ぴた、と全員が止まった。

「よくも俺の子分達をこんなにしちゃって、まぁ」

 まぁどこにでも間が悪い奴とか空気読めない奴はいるよな。

 炎神は一人納得しながら振り返る。

 先程より大量の不良共を従えた、リーダー格らしき男を。

 なぜか顔中にピアスを付けた、何というか痛々しい見た目の男である。

 耳だけでなく、鼻や唇にも大量に付けているのだから驚きだ。この様子だと、舌にピアスが付けられていても驚かない。

「あ゛ぁ? どう落とし前つけてくれるんだ? 身体で払うか? ん?」

「?が多いよ。後ついでに言えば、出方三流、見た目も三流だね」

「あー、群れてる群れてる。大勢の人間後ろに置いてるだけで頂点に立ってる気の奴の底が知れるぜ」

 登場十数秒にして酷いこと言われております。

「んだとこのクソアマにヤサ男!」

 当然キレる不良だが、キリナと秋人は相手にしない。

「ねぇ、さっきの射的のとこで決着つけようよ」

「だな」

「聞けえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 不良の咆哮と同時にその部下達が二人に向かっていった。

 襲いかかる数人の不良!

「……う」

 しかしである。

「う、うぅ」

 その攻撃は、二人には届かなかった。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 いきなりの叫び声。

 音源は、雄一だった。頭を抱えて身を絞るように叫んでる。

 それに不良達は気を取られ――たわけではない。

 それどころではない。その程度ではない。

「や、やばい……!」

 炎神は今度こそ顔をひきつらせた。


 雄一の『セカンド』が発動したからだ。


 不良達がまとめて空中に浮かんだ。それこそ一塊にだ。

「ゆっちー先輩がキレたぁ」

「芽衣、のんきなこと言ってる場合じゃないよ!」

 炎神は芽衣の手を掴んだ。

「巻き込まれるよ、逃げないと」

 そしてキリナと秋人の方を見る。

「二人も早くここから離れましょう!」

「その必要は無いな」

 しかしキリナは、余裕たっぷりに笑っていた。

「全て丸く収まるから」

「は……?」

 わけが解らず顔をしかめた炎神だったが――


「またややこしいことを……!」


 聞き覚えのある声に顔を上げた。

 不良の塊が地に落ちていく。その下にいるのはリーダーのピアス男である。

 不良達の悲鳴が響く――

「手間かけさせんじゃ――ねぇよ!」

 そんな中で、目の前をきらきらした糸が舞った。

 そして地面とピアス男に不良達がぶつかる――


 ドサアァァァァァァァァァァァァァァァァァ!


 ――ことは無かった。

 不良達はピアス男の頭上でびたりと止まっている。

 いや、網で止められている……?

「『操り糸』応用編、『あや取り網(プレイネット)』――てな!」

「は、春樹先生!」

 炎神は目を見開いた。

「よう、炎神。心配したぞ。つうかキリナに秋人」

 雪彦は袖から糸を垂らしながらあきれ顔になった。

「時雨ちゃんから逃げるなんて、何やってんだ」

「……その時雨はどこにいるんだ?」

 秋人の問いに、雪彦はため息をつく。

「おまえらの後ろ」


 バシイィィィィィッ


 言った途端に二人の頭に金属ハリセンがヒットした。

「痛っ」

「でっ」

 頭を押さえる二人の後ろに、ゆらりと時雨が現れた。

「てめぇらぁ……俺の目をかいくぐるとは……」

 怒ってる。めちゃくちゃ怒ってる。

 怒りが向けられているわけでもないのに炎神が青ざめていると、またもや聞き覚えのある声が聞こえてきた。



「炎神さん!」

 遅れてやってきた硝哉、そして鷹雄に目を向けると、彼は心底ほっとしたように息を吐いた。

「よかった……無事だったんですね」

「うん……まぁ、無事かな。あ」

 炎神が雄一の方へ目を向けた。雄一のことが気になったらしい。

 雪彦が彼の方を見ると、邦久や茉莉、薙切が慰めにかかってる。

 気付けば全員そろっていた。別に図ったわけではないが。

「あー、さて。不良達をどうすっかな」

 とりあえず雪彦は糸を引いた。どさっと不良の塊が落ちる。

 ピアス男はさすがにそれは避けた。が、雪彦が近付くと顔をひきつらせる。

「おい、おまえら」

「は、はいぃぃ!?」

「今すぐいなくなれ。さっきは助けたがな、今度は倒すためにこの糸を使うぞ」

 あと、倒れた奴らも連れていけ。

 そう言えば、不良達は慌てたように倒された仲間を抱えて逃げていった。

 思わず瞠目してしまう程の速さだ。少し脅かしすぎたろうか。

「さて……そういやそろそろだな」

 雪彦は首を振って腕時計を確かめた。

「え? 何、が……」

 キリナの声が途切れた。

 彼女だけでなく、全員黙る。

 何かが打ち上げられる音。そして破裂音。

「あ、花火……」

 硝哉が声を上げた。

 いつの間にか、色とりどりの花火が夜空を飾っていた。

「きれー……」

 芽衣がほう、と声を上げた。

「すげ。どこであげてんだろ」

 薙切が興奮したように言った。

 祭りのシメは、やはり花火だ。

 雪彦はふっと笑う。

 とんでもなく疲れた夏期合宿だったが……最後はこれなら、悪くないかな。

 雪彦がそう思っていると、キリナは「くだらない」と切り捨てた。

 にべも無く。とりつくしまも無く。

「儚く消えていく火の花、なんて性に合わないんだよねぇ」

「……人が感動に浸ってる時に」

「だってそう感じるんだもん。しょうがないよ。だって」

 キリナは微笑を浮かべた。

 いつもの不敵な笑いでも、腹黒い笑いでもない。

 綺麗で……そして愛らしい笑顔だった。

「儚いなんて馬鹿馬鹿しい。強い、粘り強いものが好きだもの。そんな人間が、ボクは大好きだもの」

 そんな笑顔に、そんな言葉に。

 雪彦は不覚にもどきりとしてしまった。

「あ、あれ……?」


 俺、ロリコンじゃないよな……?


 少し、自分の感覚に不安を持った雪彦だった。



 そんな感じで。

 生徒会夏期合宿は終わったのである。





 更新遅れた……そして長くなった……なのに最後ぐだぐだ……

 色々……すみませんでした。やっとの更新です。

 次は二学期編に入ります。この調子だと、次の更新は来年になりそう……

 では、感想評価お待ちしております!



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