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生徒会の女王様  作者: 沙伊
生徒会の夏期合宿!
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生徒会の夏期合宿!―四日目―<前編>


 長くなりそうなので今回は分けます。







「肝試し始めよっか!」


 キリナの発言に逃げ出したのは、鷹雄、薙切、雄一の三人である。

 逃走者は速やかにキリナによって捕縛されたが。


 いきなり夜中に全員を芽衣との相部屋に呼び出したかと思えば、これである。いつまでたっても、彼女の行動パターンは読めない。

「つぅか何でまた肝試し? 理由でもあるのか?」

 雪彦が尋ねると、キリナは満面の笑みを浮かべて一言。

「無い!」


『……』


 これには全員黙るしかなかった。

「あの……とりあえず早くすまそうぜ。秋人の顔がヤバイ」

 時雨の言う通り、さっきから秋人の表情が大変なことになっていた。怒り爆発三秒前と言ったところか。

 ……隣にいた茉莉がそそくさと離れた。

「はっ。短気だね。そんなに怖いわけ?」

 キリナが馬鹿にしたように鼻を鳴らすと、秋人は「なんだと……!」とひくっと青筋を立てた。

「てめえ……もっかい言ってみやがれ!」

「あぁ、何度でも行ってやるよ。怖がり怖がり怖がり!」

「あ゛ぁ!?」


『だぁぁ! ストォップ!』


 ヒートアップしそうになった二人を、雪彦と時雨が止めに入った。

「キリナ、つっかかり過ぎだ! 少し抑えろっ」

「てめえもだ秋人! 年下相手に熱くなるんじゃねぇっ」

 二人の叱責に、しぶしぶ矛先を収める二人。まだ火花が散ったりしていたが。

「どうでもいいけどさぁ、部屋が半壊するようなことは止めてよねー」

 芽衣が不安げに呟いた。

「やっだ、ボクが芽衣を傷付けるようなことすると思う!?」

 本気で傷付いたような顔のキリナに、芽衣はにこっと笑いかけた。

「思わないよ! キリリン優しいもん」


 優しい人間は高笑いしながら武器を向けねぇよ。


 雪彦は反射的にそう思った。

「で、肝試しって何するんですか?」

 炎神が首を傾げて尋ねた。

「近くに墓地とかそういうものはありませんよ」

「ふっふっふっ。副会長、忘れてない? ボクの能力」

 キリナはにやりんと不敵に笑った。

「何のために全員をここに集めたと思ってんの?」

「え……。肝試しするって話すためじゃないの?」

 茉莉はびびりまくる薙切をうざったそうに眺めながら言った。

「だったら口伝いに言えばいいでしょ?」

 確かにその通りだ。では、目的は一体何か?

「風間。ちょっと部屋の外を覗いてみなよ」

「ん? おう」

 硝哉は部屋のドアに手をかけ、ゆっくり開けてみた。

 が、開けたとたんにのけぞる。

「な、何だこれ!?」

 硝哉の叫び声に、キリナ以外全員驚いて顔を上げた。

「え、どうし……ええぇ!?」

 硝哉の脇から外を覗き見た炎神は目を丸くした。

「これ、外……お化け屋敷じゃないですか!」

 全員目を剥いた。鷹雄、薙切、雄一以外がドアへ向かう。

 廊下を見たとたん、雪彦はめまいがした。

 外の電気が全部消えている。それだけならまだいいが、壁がおどろおどろしい黒と紫を混ぜたような色に変わっているのだ。おまけにごていねいに、血のりまで付けている。

 百人中百人が、お化け屋敷と認識するであろう内装をしていた。

「き、キリナ……確か他の客もいたよな」

 雪彦はぎぎぎっと振り返り、キリナを見た。

「ん? まぁ、いたね」

「そいつらどうした?」

「放置プレイ♪」

「プレイいらん、プレイは!」

 雪彦はかっと怒鳴った。

(つぅかさっきから叫び声が……気のせいだよな、うん気のせいだ。気のせいにしておこう)

 雪彦は聞こえてくる断末魔のような叫びを耳に入れないことにした。

 しかし、ホテルの様子で大まかなところは理解できた。つまり、キリナはこのホテル内を歩き回れと言うのだろう。まさに、お化け屋敷のように。

「これ……肝試しって言わねぇよな」

 硝哉の呟きをスルーし、キリナは指を二本、ぴっと立てた。

「ルールは簡単。二人一組でこのホテル内全てを回ってもらいまーす。全部行ったかどうかは監視カメラで確かめるから、ズルは無しね」

「確かめるって……キリナは行かねぇのか?」

 雪彦は首を傾げた。

「行くわけないだろ、めんどくさい」

「めんどくさいんかい」

 だんだんツッコミが弱くなる雪彦である。もう諦めだしている。

「……行かなかったらどうなるだ?」

 鷹雄が炎神と硝哉の後ろで尋ねた。完全にガタブルである。

「アハハハハ。逃亡者逃がすと思う?」

「……思いません。むしろ逃げた方が怖そうだし」

 危険を感じたのか、鷹雄はでかい図体を縮こませた。

「全員強制参加か……。疲れる」

 邦久が本当に疲れたようにため息をついた。

「ちなみに芽衣もここに残るよ。私と一緒に監視」

「じゃぁ俺も……」

「つるし上げようか、桐島」

「すんませんでしたあぁ!」

 縄を見せつけられ、鷹雄はスライディング土下座をした。

 それを見て、男共は思う。あぁ、逆らえば死ぬんだと。

 秋人ですら諦めたぐらいである。もはや対抗しようと思う馬鹿はいなかった。

「じゃ、チーム組んで。さっきも言ったけど、二人一組だから」

 行動が早かったのは秋人と茉莉だった。二人して、時雨の手を取ろうとする。

 が、近くにいた秋人の方が一歩速かった。しぶしぶという顔で、薙切と組む茉莉。

「……前々から思ってたけどさ、どういう関係だ?」

「……好きな子取り合うの図」

 雪彦と硝哉は呟くように会話した。

「まぁ俺には関係無い。炎神さん、組みましょうか」

 硝哉は早々に切り替えて炎神に声をかけた。

「うん。ただ、鷹雄はどうしよう……」

 部屋の隅で雄一と一緒に震えている鷹雄を、炎神は心配そうに見つめた。

「嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌もう無理、ほんっと無理」

「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬショック死するぅぅぅぅ」

 ……哀しいぐらいに情けない中高庶務組である。

「お、おい鷹雄? 俺が組んでやるから元気出せ。なっ」

 雪彦が声をかけると、鷹雄は涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を上げた。

「マジっすか。一緒にいてくださいよ、離れないでくださいよ、いなくならないでくださいよおぉぉぉぉぉ!」

「だあぁぁ! 解ったから顔ふけっ。汚ぇよ!」

 雪彦は抱き付いてきた鷹雄を剥がした。

「ったく。邦久、おまえは犬塚と組んでやれよ」

「解ってる」

 邦久は苦笑しながら雄一に近付いた。

「ってわけで雄一。俺と組もう」

「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死死死死……」


 うわっまだ言ってる、ってか病んでる!


 邦久以外の全員がずざざっと離れた。

「出た……雄一のマイナス思考」

「あれ、マイナス思考ってレベル!?」

 茉莉の言葉に雪彦は思わず反応してしまった。

 マイナスっていうか負のオーラ放出しているんだが。

「あれを柱に縛り付けてホテル内に設置したら今以上に面白いことに……」

「何考えてんだ! つうか物扱い!?」

 雪彦はキリナの方へ振り返った。

「ねぇ、いっそのことビビリー三人衆で肝試しに」

「本人達が大変なことになるから止めろ」

 雪彦は暴走寸前のキリナを止めた。

「と、とにかく。これ以上ややこしくなる前に出発するぞ!」


『お、おお~……』


 やる気の無い声が部屋一般に響いた。

(まぁ、そんな怖い目に合わないだろ)

 雪彦はそうたかをくくったのである。

   ―――


「俺のアホオォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」

 雪彦、絶賛後悔中。

 ホテルの二階だか三階だか解らない場所で、思いっきり迷ったのである。

 どうやらキリナは構造まで変えてしまったようで、階段や部屋の場所まで全然前と違ったのである。

「マジでここどこ!? つか二十三にして迷うとか! うわーうわーうわー!」

「あ゛あ゛あぁぁぁ! やっぱ吊し上げ覚悟で残ればよかったあぁぁぁぁぁ!!」

 隣では鷹雄が泣き叫んでいた。

 喚く雪彦も充分情けないが、人目もはばからずぎゃんぎゃん泣き続ける鷹雄は情けない通り越して気持ち悪かった。

 しかし、お互いそんなこと気にしてはいられない。

 さっきからゾンビやらミイラやら狼男やらが襲いかかってくるのである。

 さっきも頭に斧や包丁や針が突き刺さった、モザイクをかけたくなるような怪物に出会ったのである。もう、勇気とか格好よさとかくそくらえだった。

「先生ぇ、俺死んでいいですか? ていうか死にそう。頭変になりそう。アハハハハハハハハ……」

「鷹雄、しっかりしろぉ! もう頭おかしくなってるしぃ!!」

 雪彦はゆっさゆっさと鷹雄を揺さぶった。

 しばらく狂ったような笑いを浮かべていた鷹雄だが、急にさぁっと青くなった。

「せ、せせせせせせせせせせせんせ……」

「ん?」

「うううううううううううしうしししししし」

「笑ってんのか?」

「後ろぉ!」

 鷹雄が背後を指差したので、雪彦は首だけを後ろに向けた。

「あ゛あぁぁぁぁぁぁあ」

 這ってた。目の無いゾンビが、這ってた。


『……ぎぃやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』


 雪彦と鷹雄は全速力でその場から走り去った。


   ―――


「ったく。何でこの俺があの女の言うことを聞かなきゃならねぇんだか」

 秋人はいらいらしながら薄暗い廊下をずんずん進んでいった。

「でも、それに屈するおまえもどうなんだろうな」

 一方時雨は冷めた言い方だ。どうでもいいという体にも見える。

 それに少し――いやかなり傷付きながらも、秋人は周りに目をやった。

「しかしさっきからゾンビが出るわ出るわ……薙切がこういうゲームしてたな」

「あー、あれ」

 バイオ何とか、と返した時雨は、背後に現れた吸血鬼に肘鉄を喰らわせた。

「ていうかさ……こうやって倒していったらいいって、他の奴ら気付いてるかな」

「……気付いて無ぇだろうな」

「だよなー」

 あははー、と笑い合う秋人と時雨。笑うのを止めると、どよぉんと空気が重くなった。

「ヤバくねぇ? 他のチーム。ビビリが入ってるよな」

「大丈夫だろ。……多分」

 不安げな時雨に、いつもは無駄に自信満々な秋人も断定できなかった。


 どうなる!? 墨原学園生徒会!






 久しぶりの投稿です。長く間を開けてすみませんでした。

 今回は一話では収まりそうになかったので前後編といたします。場合によっては中編もあるかもしれませんが……

 とりあえず今回は雪彦と鷹雄に怖がってもらいました。秋人、時雨コンビは幽霊信じてない派なのでお化け屋敷とか全然平気なたちです。

 沙伊は幽霊とか平気なのか駄目なのか解らない感じですが……ビビリではないと思います。


 では、感想などお待ちしております!



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