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生徒会の女王様  作者: 沙伊
生徒会の夏期合宿!
18/29

生徒会の夏期合宿!―初日―


 遅くなって申しわけありません。

 とりあえず、夏休み編スタートです。







「あー、今回の合宿は会議を行なって今後の予定を立て、中高生徒会の交流を深めるためのものだ。決してふざけたり羽目を外したりしないように。……っつうのは建前で」

 雪彦はニヤッと笑い、邦久と視線を合わせた。邦久もにやりと口を歪ませ、頷く。雪彦はぐっと拳を作った。

「夏休みフルに使って遊んじゃおーぜ!」


『おぉぉぉ!!』


 答えたのはいつものメンバー。つまり、中高生徒会役員である。


 彼らがいるのは、無人の砂浜だった。

 青い空に青い海、太陽はギラギラ輝いていて……などとありがちな表現はさておき。

 合宿とは銘打ってはいるが、ようは生徒会の旅行である。

 しかも顧問の教師が若いため、余計内容が軽い。

 つまりは、『遊びまくろうぜ合宿』なのである。おそらく、会議など内容が無いまま終わらせてしまうだろう。

 とりあえず、初日は貸し切りの海で遊びまくることになった。ちなみに貸し切ったのは炎神の父親である。

 雪彦と邦久は一度会っただけだが……あの親子は随分似てない。親父の方はかなり豪快なのだ。


「さてと、確認するけど全員いるよな」

「先生ぇ、犬塚(イヌヅカ)先輩いないんスけど」

 赤井薙切(アカイ ナギリ)が挙手した。

 くせの強い薄茶色の髪に黒い瞳、少し大きい口が特徴の、高等部生徒会書記である。

 邦久は薙切の言葉に、頭を押さえた。

「あいつは……またか!」

 邦久は辺りを見渡し、ある一点につかつか近付いた。

「何してるんだ、雄一(ユウイチ)!」

「わ」

 小さい声を上げて犬塚 雄一が引っ張ってられてきた。

 赤がかった黒髪に高校生にしては幼い顔立ち、右目の下には昔付けたという傷がある。おどおどした態度に違わず臆病な性格の高等部生徒会庶務だった。

「何でまた岩陰に……」

「人……多かったから……」

 邦久の質問に対する答えは、引きこもりのようなものだった。

 小柄なせいも相まって、余計弱々しい。なんせ背丈は中学生の炎神と変わらないのである。

「ふふん。弱いな、犬塚先輩」

 キリナはニヤリと笑った。

 海なので当然水着だ。白いビキニを着ている。ビキニと言っても、布の面積はけっこう広い。

「そう言わないでよ、キリリン。ゆっちー先輩は単なる人見知り!」

 芽衣が割って入ってきた。

 あだ名のことはもうツッコまないが……こいつもビキニだ。

 しかも上下共にピンクのフリフリレースが付いている。似合っているので文句は無いが。

 と、雄一がぽつりと一言。

「……人、怖い」


 対人恐怖症か!?


 雪彦は愕然とした。よくそれで生徒会に入れたものだと思う。

「全く情けないね。それでよく生徒会に入れたものだよ」

 一番小柄な影が言った。

 霧崎茉莉(キリサキ マツリ)だ。セミロングの黒髪に藍色の目をした、生徒会女子の中でも一番幼い顔立ちの少女である。水着も、女子の中で唯一ワンピース型だった。色は薄紫である。

「君は私より一学年上でしょ。同い年の時雨と何て差だよ」

 茉莉の口撃にしゅんとなる雄一。慌てて炎神と時雨が止めに入った。

「落ち着いてくださいよ、茉莉先輩。雄一先輩は他にいいところあるんですから」

「そうだぜ。まず俺を引き合いに出すこと自体間違いだって」

 炎神は白に赤いラインが入ったボクサーパンツ型の水着、時雨は黒ビキニにデニムのホットパンツをはいていた。

「でも時雨、それに月陰。犬塚の弱気さは目に余るよ」

「そー、そー。俺も茉莉の意見にさんせー」

 薙切は茉莉の肩に腕を回した。その腕は茉莉本人に払われる。

「……冷てー」

「僕と君は付き合ってないんだから当たり前だろ」

 眉尻を下げる薙切を茉莉は淡々と振り払った。

「あー! ひでーひでーひでー!!」

「気持ち、解るッスよ赤井先輩!」

 なぜか鷹雄が入ってきた。水着は青のボクサーパンツだ。

「好きな人に冷たくされるのって哀しいッスよね!!」

「おう同志! 解ってくれるかっ」

 ガシィッと互いの手を握り合う鷹雄と薙切。

「うわっ……ウザい同盟できた」

 硝哉はボソッと呟いた。彼は黒のボクサーパンツ型水着に白いパーカーを着ている。

「……いい加減話進めろよ」

 ずっと黙っていた秋人がイライラと口を開いた。彼は黒一色のボクサーパンツ型の水着である。

 このままほっといたらヤバい。雪彦はあたふたとしきりに入った。

「じゃ、じゃあ海に入っていいぞ。遊び道具は俺と邦久が持ってるからな。じゃ、解散!」

 そう言うと、中高生徒会役員――合計十人は散開した。



「結局鮫島先輩と十間 秋人って付き合ってるの?」

 キリナがそう切り出したとたん、時雨は缶の中身を吹き出した。

 海岸の端にある岩場である。事前に買っておいた缶ジュースを生徒会女子組で飲んでいるところだった。

「い、いきなり何だよ」

 時雨はあわあわと口をぬぐった。相当焦ってるようである。

「だっていつも一緒にいるし。ねぇ?」

「そーそー」

 芽衣もこくこく頷き、ずいっと身を乗り出した。

「どうなんですか時雨先輩! ねぇねぇねぇねぇねぇ!」

「ボク達合宿来たら訊こうと思ってたんだ。別に隠しても悪いもんじゃないでしょ?」

 芽衣も、そしてキリナも年ごろの女子である。恋愛ものとなると、喰い付きがいい。

「え、えぇっと……ま、茉莉ぃ」

 困ったあげく、時雨は親友に助けを求めることにした。

 茉莉はハァッとため息をつくと、はっきり言った。

「時雨と会長は付き合ってないよ。いつもいるのは役職柄!」

 茉莉がそう言ったとたん、キリナと芽衣は「なぁんだ」とつまらなそうにぼやいた。

「てっきり付き合ってるのかと思ったのに……つまんない」

「つ、付き合ってるって……おいおい……」

 時雨は苦笑を漏らした。

「俺みたいな男女に誰が惚れるんだよ」


『……』


 キリナ、芽衣、茉莉はじっと時雨を見つめた。

 雑誌のモデルにでもなれそうな凛とした整った顔立ちに女子の誰もがうらやましがる完璧なスタイル。百人中百人の男が振り返りそうな姿である。

「時雨、一回自分の全身見直した方がいいよ」

「へっ?」

 茉莉の言葉も、時雨はよく解ってないようだった。

 あきれのため息をつくキリナの横で、芽衣が一言。

「あれいつまで出してるの?」

 芽衣の言うあれとは、海にいる。

 さっきから男子陣を追いかけているあれ。

「……何で鮫が」

 時雨の呟く通り、男子陣が必死に逃げてるのは鮫である。

 開けた大口からはぞろりと歯が並び、細い目はギラギラと獲物(男子陣)を睨んでいる。

「ちょぉ、待て! 何でここに鮫!? 兄貴達が危ないって!」

 時雨はわたわたとキリナを振り返った。

「えぇ~。楽しいのにー」

「このドS!? っじゃなくて! 消せよあいつっ」

 時雨はツッコんだ後、鮫をビッと指差した。

「い・や♪」

「可愛く言っても……ああもう!」

 時雨は岩場から飛び降りた。

「俺が何とか……あ」

『セカンド』能力を使おうとした時雨は、砂浜の端っこでうずくまる少年を見付けた。

「雄一! おまえの能力で……って何書いてんだ?」

 時雨は雄一の背中越しに、文字の書かれた砂浜を覗き込んだ。


『世界滅びろ』


「何考えてんだてめぇ!」

 時雨はぱぱっとその文字を消した後、ビッと鮫を指差した。

「あれ! 何とかしろよっ」

「何で僕が……」

「おまえの能力発揮のチャンスだろ!」

 時雨は渋る雄一を海まで押しやった。

「……鮫」

「うん、言われなくてもみんな解ってる。解ってるから急げ!」

 背中を押すと、雄一は無表情でばしゃばしゃ海に入っていった。

「彼の能力って何なの?」

 いつの間にか降りてきたらしいキリナが首を傾げた。

「ん? 知らねぇのか」

「名前しかね。確か『嘆きの百獣(クライビースト)』だっけ?」

「あぁ。名前の通り、生き物に関連がある。まぁ見てろよ」

 時雨が再び海に目をやると、雄一は鮫の近くまで来ていた。

 追いかけられていた男子陣は雄一に気付き、目を見開く。秋人と薙切、邦久だけがほっとしていた。

 鮫は雄一の姿を見ると一瞬大口を開けたが、すぐさま閉じた。何か別の力に閉じられた感じで、口がぶるぶる震えている。

 変化はそれだけではなく、なぜかショーのイルカのように大ジャンプしだした。

 一回、二回、三回……ジャンプするごとに高くなっていく。

「ふぅん? もしかして彼の能力って」

「そ。動物を意のまま操ること。脳に働きかけるらしい。人間の脳は複雑だから、できないらしいがな」

 時雨はジャンプし続ける鮫を見つめた。

 十回目のジャンプをしたところで、その姿が消える。振り返ると、キリナは肩をすくめていた。

「あーあ、つまんない。動物責めはうまくいかないな」

「動物責めって……」

 時雨の顔がひきつった。どうもこの少女のドS思考が理解できないのである。

「まぁいいや。みんな無事だといいけど」

 時雨は海に入って男子陣の元まで泳いでいった。


   ―――


「あー、酷い目にあった」

 雪彦はホテルのベッドの上で呻いた。

「本気で……死ぬかと思ったな」

 邦久も同じようにベッドに倒れ込む。

「つぅか俺が喰われたら共喰いだな。ほら、俺も鮫だし」

「苗字がな」

 雪彦のツッコむ声も弱々しい。

「初日からこれか……覚悟してたけどやっぱりキツイ……主にキリナが」

「……とんでもないみたいだな、普段から」

 雪彦の泣き言に、邦久は同情の声を上げた。

「お疲れ様」

「おう。なぁ、邦久」

「ん?」

 邦久が顔を上げると、やつれて幽鬼みたいになった雪彦の顔が目に入った。

「俺、合宿終わるまで生きててられるかな?」

「……さぁ?」


 そんな合宿初日だった。






 沙伊は海はあんまり好きじゃないです。綺麗なイメージが無いので。

 とりあえず高校生徒会全員出せてよかったです。一人ちょっとマイナス思考過ぎたかなと思いますが……


 ここまで読んでいただき、ありがとうございます! 感想などお待ちしております!!



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