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生徒会の女王様  作者: 沙伊
生徒会の日常
15/29

クラス会議




 墨原学園は、学校関係者以外立ち入り禁止となっている。

 入るには手続きが必要だし、それにしたって半日かかることがざらにある。

 異能者を生徒として扱う以上、それだけ厳重にしなければならないのだ。

 しかし、少なからず例外がある。

 学校関係者でなくとも学園内を行き来できる日が、二つ存在した。

 その一つは……



「今から文化祭についてのクラス会議を行う!」


『イエェー!』


 雪彦が言ったとたん、クラスの生徒達は盛り上がりを見せた。

 もっとも、このクラスは基本的に乗りがいいのだが。

「つっても、まだクラスでやること決めるだけだぞ。行動は九月から。さ、何やりたい?」

 雪彦がそう言うと、男子が一人手を上げた。

「ん、何だ?」

「先生、メイド喫茶とかやりたい!」

 次の瞬間に来た女子のブーイングは半端無かった。

 その男子は小さくなって、椅子の上で三角座りになる。

「そういうのは風紀を乱すのでやめてください」

 陸が風紀委員長らしい発言をした。変態であることを除けば、彼は意外に常識人なのである。

「あー……じゃあ普通の喫茶店としてなら一応採用な」

 雪彦は微妙な顔で黒板に『喫茶店』と書いた。

「先生! コスプレ喫茶とかありですか!?」

「頼むからオタク染みた発言やめろ!」

 復活した先程の男子を、雪彦は一喝した。

「ったく。他無いか?」

 雪彦が問えば、女子の一人が手を上げた。

「先生、この教室でライブとかは? 結構広いしさ」

「構わねぇけど……誰が歌うんだ?」

 沈黙。誰も歌いたいと思う人物はいないらしい。何で提案したんだ。

「ハァ……とりあえず却下な。他は? 屋台とかもありだぞ」

 そう言うと、タコ焼きとか焼きそばとかフランクフルトとかお祭りで出てきそうなものが上げられた。

 中には金魚すくいとかがあったが、それは却下した。さすがに生き物は扱えない。

 しばらくして、すっと手が上がった。

「……何だ、キリナ」

 雪彦は冷や汗をかいて彼女を見た。

 珍しくずっと黙っていたキリナは唇を動かす。

「お化け屋敷」

「お、お化け屋敷? 何だ、意外と普通なの提案したな」

 ほっとする雪彦に、キリナはにっこり笑って頷く。

「うん。だって、恐怖におののく人間が見れるじゃないか♪」

「却下あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 雪彦は全力で絶叫した。

「なんちゅう動機だ! このドS!!」

「はっ、今更」

「鼻で笑うなあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 雪彦の怒声も意に介さず、キリナはスッと右手を振った。

 とたん。


『ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』


 教室中に悲鳴が沸き起こった。

 それも当然で――いきなりゾンビが現れたら、よほど肝の座った人物でなければ悲鳴を上げるだろう。

 灰色の肌、濁った目、ボロボロの服。ゲームとかでよく出てくるゾンビよか、よっぽどおぞましい。

 あぁあれはやっぱりゲームだったな、などと雪彦と男子達を悟らせたほどである。

「どう? ボクが創り出したゾンビ人形は」

「フガー」

「そいつ絶対生きてる! 今返事したし!!」

 雪彦はキリナの隣に立つゾンビを、雪彦は指差した。

「え、何? 増やしてほしい?」

「どういう耳してんだ!」

「じゃあご要望にお答えして~」

「聞けえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 雪彦の絶叫も虚しく――


 数秒後には教室中にゾンビが溢れ返っていた。


   ―――


「……えー、時間も無いので、早々に体育祭の出場者を決めたいと思います……」

 三十分後、雪彦はボロボロな上にやつれた状態で教卓にもたれかかっていた。

 自力で立てる力は残っていない。なにせ、さっきまでゾンビ共に囲まれていたのだから。

 ちなみに文化祭はお化け屋敷に決定である(強制)。

「希望者は手を上げろよー……無理にしなくてもいいからな」

 ボロボロでやつれいるのは雪彦だけではない。クラスの生徒全員が、雪彦と同じ状態だ。

 元凶であるキリナだけがぴんしゃんしてる。にくったらしいほど血色もいい。

 他の奴らは気絶までしてるのに……特に陸が。

 能力がある意味オカルト染みているのに、幽霊やそのたぐいは駄目らしかった。

 で、生徒達は早く終わらせたかったのか、次々出場する種目が決まっていった。譲り合いも言い争いも無い。単に疲れていたからなのだが。

 が、一つだけはなかなかきまらなかった。

 というのは……

「何でリレーだけ誰も手ぇ上げねぇんだよ」

 決まらねぇだろうが、と雪彦はため息をついた。

 クラス対抗リレー。出場者は五人で、一人五十メートル走る。

 このクラスで(『ファースト』を抜きにして)一番早いのは、キリナと陸だ。他はほぼ五分五分である。

 生徒会役員と委員会幹部は参加できないので、二人は除外。あとは、平凡な異能者である。

 異能者である時点で平凡じゃないじゃないか、というツッコミはとりあえず無視するとして。

 本当にどうしたものか。

(教師の言うことじゃねぇが……正直めんどくせぇ……)

 ぐだぐだ考えている内に、気分がずんずん沈んでくる。

「あぁ、もう……体育の足の速い順でいいかな。うん、いいよな。それで決定」


 最後投げ遣りー!?


 生徒は内心で絶叫した。しかし雪彦は意に介さず、教卓の上で沈む。

「先生、適当過ぎー。教師失格ー」

「誰のせいだくるあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 キリナの一言だけはきっちりツッコむ雪彦であった。


   ―――


「おまえさぁ、もうちょっとそのワガママ抑えらんねぇ?」

「先生、人間は欲深い生き物だよ」

「悟るな!」

 生徒会室にて、雪彦の説教をキリナはことごとく流していた。

「いい加減諦めりゃいいのに、あんた」

 硝哉があきれたように言いながら資料整理をしている。

「諦めてキリナを野放しにしてみろ。学園がめちゃくちゃになる」

 雪彦の言葉は正論であるが、誰もそれに答えない。

 常識が通じる相手なら、とっくに通じている。

「とにかく、文化祭や体育祭ではおとなしくしとけよ」

「約束しかねるな」

「しろっての!!」

「落ち着いてくださいよ、先生」

 炎神がやれやれと首を振った。

「説教が通じた試しが無いんだから、もうそのへんで」

「……そうだな」

 炎神の言葉はもっともなので、それに従うことにする。

「うぅ……テストもまだ作ってる途中なのに、俺倒れねぇかな」


『……テスト!?』


 生徒会役員達は目を見開いた。

「ど、どうした?」

 雪彦が驚いて尋ねると、全員顔を見合わせる。鷹雄だけ顔色が悪い。

 この様子から察すると……

「……忘れてたな、おまえら」


『うん』


 素直に頷く五人。タイミングまでばっちりだった。

「勉強は?」

「ボクは普段から復習してるから問題無い」

「俺も……」

 キリナと炎神がまっさきに答えた。

「テストって、十日後だっけ?」

「それくらいあれば充分だろ」

 芽衣と硝哉はまぁ大丈夫だろう。

 問題はだ。

「鷹雄……元気出して」

「絶対無理ぃぃぃぃ。今まで赤点ぎりぎりアウトだったのに、絶対今回零点取るぅぅぅぅぅぅ」

「タカタカが壊れた……」

 頭を抱える鷹雄の背を、炎神が撫でる。その様子を、芽衣は引いた顔で見つめていた。

「……大丈夫か、あいつ」

 雪彦は不安げに呟いたのであった。






 ということで、次回はテスト勉強編です。

 沙伊はテストは嫌いです。めんどくさいので(おい

 テスト好きな学生っているんだろうか……いたらちょっと会ってみたいかも。


 感想などお待ちしております!!



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