雨の日は誰だってだらける
今回短いです。
「暇」
雪彦は肩を震わせた。
キリナがそんなことを言うと、ろくなことが無い。
(あれ、このくだり前もあったな。あれ、デジャヴ?)
雪彦は頭を抱えながら気にしないことにした。
「暇、暇、暇ったら暇!」
生徒会室に設置されたソファーの上で、キリナはバタバタ暴れた。
「外は雨。湿気てるから何か肌がべたつくし、やること無いし、梅雨なんて嫌い」
「あー、はいはい。好きな奴なんていないっての」
資料整理しながら、雪彦は適当に相槌を打った。
「春樹先生」
「あん?」
「椅子になって」
「なるかあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
雪彦は全力で拒否した。
「そこはオッケーするとこだろ。空気読めないなぁ」
「読みたくないわ、そんな空気!」
雪彦が肩を怒らせていると、芽衣がくるくる回りながら生徒会室に入ってきた。
なかなか面白い登場方法である。必要性は解らないが。
「キリリィン♪ 頼まれた雑誌、買ってきたよん」
「……っておまえ、親友パシったのかよ」
雪彦が非難を込めて言えば、キリナはむっと表情を歪ませた。
「芽衣をパシリに使うわけ無いだろ。お金はボクが出したし、芽衣が忘れ物取りに行くついでにって」
「そう! 思いやりによる結果だよっ」
芽衣は胸を張った。
「にしても、雑誌校内に持ち込むなよな」
「一応許可されたものだよ」
キリナは芽衣から雑誌を受け取った。
「あ! ボク一位だ」
「え! マジマジ? あーん、私は五位かぁ」
ぷく、と芽衣の頬が膨らんだ。
「何だ? 一位とか五位とか」
雪彦は興味を抱いて雑誌を覗き見た。
「……星座占い?」
「そうだよ。ほら、さそり座一位でしょ? ボクさそり座だもん」
キリナが指差す一位のところには、確かに可愛らしいさそりの絵が描かれている。
「……つうかおまえ、さそり座だったのか」
「え? うん」
頷くキリナに、雪彦は考え込む。
(何か……ぴったりだな。こう毒つうか針つうもの持ってるところが)
深く納得してしまう。
「つうかよ、それ当たるのか?」
雪彦が尋ねると、キリナは肩をすくめた。
「当たるも八卦、当たらぬも八卦だよ」
「そーそー」
芽衣も賛同する。
「当たらなくても信じるのがオトメゴコロだよっ。心しておくよーに!」
「お、おう」
芽衣に諭されてしまった。
「はー、疲れたー」
「本当に……」
きゃいきゃい言う芽衣に付き合っていると、炎神と硝哉が入ってきた。
「あれ? 鷹雄は?」
雪彦が尋ねると、炎神は疲れ切った顔でため息をついた。
「追試ですよ。ほら、この間中間テストあったじゃないですか」
「おう」
「鷹雄、ものの見事に全科目赤点取っちゃって。さっきまで勉強手伝いしてたんですけど、当事者は先生に引っ張られて行きました」
「なるほど……」
そういえば自分のテストでも、マイナスを付けたくなるような酷い解答をしていた。
「あいつ高校上がれるのかなぁ」
「会長関連付けたら頑張るんじゃね?」
硝哉の提案に、キリナ以外納得する。
あいつはキリナをえさにしたら、実力以上の力をはっきするのだ(立証済み)。
「キリリン、タカタカ応援してあげてよ」
「やだ(即答)」
「断り早っ」
硝哉が思わずそう呟いてしまうほどのスピードだった。
哀れ鷹雄、彼はこれからも赤点を取り続けるだろう。
「はぁ……それにしても雨の日ってなぁんにもやる気おきないですねー」
炎神はソファーに座って頭をかいた。
「そ-だねー。それにエンちゃん、雨の日とかは能力使えないしぃ」
炎神の能力は『炎帝』。炎を操る能力だ。
つまり、炎が使えない場所では無力なのである。
『ファースト』や『セカンド』が無くなるわけじゃないので、彼自身が弱くなるわけじゃないが。
「そうなんだよね。まぁ普段使わないんだけどさ」
炎神はハァとまたため息をついた。
「ショウちゃんもいつも以上にテンション低いね」
芽衣に言われ、硝哉はけだるげな顔で前髪をかき上げた。
「雨の日にテンション上がるのはカエルとカタツムリぐらいだろ」
「まぁねぇ~。私も気分はぐっだぐだぁ」
硝哉は炎神の、芽衣はキリナの隣に座る。
『雨の日は何もやりたくない~』
生徒会役員はだら~っとした声で合唱した。
「おまえら……暇なのは解った」
雪彦は、肩を震わせた。
「だったら……だったらなぁ」
びしぃっ、とばかりに事務机を指差す。
そこには、積み重なった紙の束が。
「仕事しろおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
『いや~』
またもや合唱する生徒会であった。
―――
その頃――
「全然解んねぇ~」
「そこ! 喋るな!」
鷹雄は数学の追試を受けていた。
梅雨の生徒会でした。
雨の日にやる気出ないのは皆共通かと思うのですが、どうなんでしょう。
雨の日能力使えないって、某錬金術漫画の焔の大佐とかぶってしまった……(汗)
次は何書こうかな~。