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生徒会の女王様  作者: 沙伊
春の球技大会!
10/29

春の球技大会!―試合編―3


更新遅れてスミマセン。






 最初にサーブ権があったのは、二年だった。

 ゆっくり、ゆるやかなカーブを描くボールを見て、キリナが前に出る。

 コートを越える、と思った瞬間、バシィィンッ! と二年のコートに打ち込まれた。

「またやりやがった!」

 雪彦は顔を歪め、キリナを見た。

「あんなの打ち返せるわけ……!」

 雪彦は言葉を失った。


 芽衣が、キリナのサーブを受け止めたのだ!


 芽衣は顔を少し歪め、ボールを打ち上げる。

「そこ! ボール上げてっ」

「あっ、うん!」

 クラスメイトの一人がすぐさま反応した。

 落ちてきたボールを打ち上げ、もう一人のクラスメイトが打ち込もうとする。

「ブロック!」

 キリナが鋭く言い放ったとたん、三年女子が動き出した。

 二人の女子が前に出てきて、打ち込まれたボールを防ぐ。

 二年はそれを拾うことができずに、三年側に点が入った。

「あー! 今のうまく言ったと思ったのにぃぃっ」

 本気でショックを受けた顔をする芽衣に、キリナは胸の前で腕を組んで見せた。

「ふふん。なかなかやるようになったみたいだけど、まだまだだな」

 まるで格下扱いしているライバルに対しての言葉だ。

「……あいつら、親友同士だよな」

「そのはずですけど……」

 雪彦と炎神は軽く引いた。

 何か宿命のライバルみたいになってる。そんな関係ではなかったはずだが。

「うぅ……でもでも! 負けないんだからっ」

 芽衣はぐっと両拳を握り締めた。

 今度は三年のサーブだ。ボールがスローペースでネットを越える。

 二年の一人がボールを打ち上げた。もう一人も同じように。

「私に任せて!」

 芽衣が周りに声をかけて跳躍した。


 バシイィィィィンッ


 ボールが三年コートに打ち込まれた。

 ど真ん中になら、キリナがすぐさま反応したろう。

 しかし、ボールはコートぎりぎりの隅に入れられたのだ。取れるわけない。

「やった! 作戦どーり♪」

 芽衣は二年メンバーに向かってVサインを向けた。

 三年が失点したのは、実は初めてだったりする。

 初の失点。これは、確実にキリナに火を付ける。

「ふぅん。さすがボクが同格と認めただけある。でも、勝つのはボクだよ!」

「私だって負けないもん! 絶対に!!」

 睨み合う両者。これでも、試合が終わったらまたいつも通りに戻るのである。

 そしてなぜだか、頂上決戦にしか見えない。やってることは、ただのバレーボールなのに。

(あえてツッコまないでおこう、うん)

 雪彦はそう心に決めた。


   ―――


 時雨はくすくす笑っていた。

 普段の口調はともかく、笑う声は年相応の少女のような笑い方だった。

「プッ、フフッ……バレーボールでここまで真剣に……プロじゃあるまいし」

「笑い過ぎだぞ、おまえ」

「だってよぉ、おかし過ぎ……」

 一応抑えてはいるのだろう。両手で口元を覆っている。

「確かにタダ券は魅力的だけどさ、あの二人の場合は、頑張る理由違うだろ」

「……確かにな」

 秋人はため息をついた。

 おそらくキリナと芽衣は、負けたくないという意地で挑んでいるんだろう。

 たかがバレーボール。しかしそれに二人はプライドをかけているようだ。

 ……力の向け方を間違っている気がするが。

「……で、秋人。おまえの目から見て、あの応酬はどう思う?」

 まだ唇をけいれんさせてる時雨が、眼下のコートを指差した。

「……こういう戦闘染みたもんは、てめぇの領分だろ」

「んー……やっぱ戦闘に分類されちまうか」

 秋人の言葉に、時雨は苦笑してコートを見下ろした。

 試合は、とんでもないことになっている。

 まず、ボールが落ちない。互いのチームが、常にボールを上げているのだ。

 普通なら疲れてすぐ落ちるはずなのだが、それが無い。多分、キリナと芽衣の勢いに引っ張られているんだろう。

 そして、キリナと芽衣の打ったボールの威力。

 遠目から見ても、常人に取れるものじゃない。能力が使えないチームメイトも例外では無いようだ。

 そのため、キリナと芽衣は互いのボールを互いで受け止めている。

 周りがバテ始めているのに、あの二人が一番動き回ってて、なおも走り回っているのだ。無尽蔵の体力かと思わせる。

 時雨は頬をかいて「バレーボールだけどバレーボールじゃない」と感想を述べた。

「もうボールバトルだ、あれは。つか、そろそろ止めた方がいいって」

 時雨がそう言うと同時に、ホイッスルが秋人の耳に届いた。


   ―――


 試合が終わってないのに、雪彦はホイッスルを吹いた。

 なぜか。それは試合が終わる気配が無いからだ。

 意地と意地のぶつかり合い。止めなければ、体育館がしばらく使い物にならなくなるかもしれない。それだけは避けたい。

「試合終了! これ以上は時間的にも無理だ」

 雪彦がそう言ったとたん、キリナと芽衣は「えぇ!」と不満の声を上げ、クラスメイトはへなへなと座り込んだ。

「何で止めんの! ボクはまだやれるよっ」

「私だって、全然戦えるもん!」

「何だ、そのバトってたっぽいセリフは」

 とりあえずそうツッコんでおき、やれやれと頭をかく。

「おまえらが大丈夫でも他は駄目なの! 同時優勝ってことで優勝商品もやるから落ち着け」

「落ち着けるわけ無いだろ」

 キリナは両手にボールを持ちながら、ギロッと睨み付けた。おそらく、ボールは能力で創り出したものだろう。

「ボク、まだ戦いの余韻が身体に残ってるんだよね。それとも、熱冷ましに殺らせてくれるの?」

「物騒過ぎるわ、そのセリフ!」

 雪彦は後ずさった。

 ていうか、何であんだけ動いたのに、全然息切れしてないんだ、こいつ。

 どうにかしてキリナをなだめようと雪彦が考えあぐねいていると、余計なことを言う奴が。

「キリナさん! 今の発言、何かエロぐはぁっ」

 陸の顔にボールが直撃した。顔が満足そうに見えるのは気のせいか?

「黙れ変態……目障りだ」

 ドスの効いたキリナの声。女子が出す声じゃないとかツッコんでる場合じゃない。

「キ、キリナ……」

 雪彦が声をかけると、キリナはぐるりと顔を向けた。

 ……何だろう、背後に鬼が見える。

「あれ? 修羅降臨?」

 炎神が呟き、硝哉が後ずさる。唯一、阿呆にも恐れてない奴が。

「キリナさん! 俺が落ち着かせてあげふごぉっ」

「あぁ! 鷹雄ぉっ」

 ボールの一撃を受けて吹っ飛んだ鷹雄を見て、炎神が身を乗り出した。

 無論、そんなことをしたのはキリナの他無く、その姿は修羅降臨どころじゃなかった。


 魔王だ。魔王がいる。


「キリリン止めるべき?」

「当たり前だ!」

 芽衣に当然のことを訊かれ、雪彦は思わず怒鳴った。

「キリナ、いい加減に……」

「あ゛?」


『すみませんでした!!』


 生徒会役員と雪彦以外が土下座する勢いで頭を下げた。

「弱っ。そして早っ」

 硝哉が思わずそう言うほどであった。

(あぁもう! 誰か止めろよ、あいつをっ)

 雪彦は切実に思った。

 このままキリナが暴れては、冗談抜きで体育館が半壊してしまう。

 しかし、自分はキリナと同じ『サード』だが、彼女よりレベルが低いために止めるのは難しい。

(炎神と硝哉じゃ傷付けちまうし、芽衣の能力は人間は操れない! 鷹雄は戦力外だし、やっぱここは俺がっ)

 雪彦が袖に仕込んだワイヤーを出そうとした時だった。


「はい、そこまで」


 誰かがキリナの肩を叩いた。

 驚いたキリナが睨むその人物は、雪彦がよく知る人物である。

「時雨ちゃん!」

「よっす、雪彦先生」

 キリナを止めた人物――高等部生徒会副会長、鮫島 時雨はニコッと笑いかけた。

 いきなり美人の先輩が現れたため、中等部の野郎共は浮き足立つ。

「びっくりしたぜ。上で見てたら中等部の生徒会長が暴れだしたもんな」

「あ、あはは……」

 雪彦はもう、笑うしかない。というか今気付いたが、邦久はいなくなっていた。一体どこに行ったのか。

「……鮫島、時雨」

 キリナはぎろりと時雨を睨んだ。

「そう怖い顔するなって。気持ちは解るが少し抑えろ」

「……なら君が相手してくれるの?」

 キリナが右時雨に向かって足を蹴り上げた。

 かなりのスピードで、普通なら避けられない。

「っと。危ねーなぁ」

 しかし時雨は、いとも簡単に避けてしまった。

「先輩に暴力振るうんじゃねぇよ。年上は敬え」

 時雨はにかっと笑ってキリナの頭をがしがしと撫でた。

「相手なら今度してやるよ。とりあえず今は抑えな」

「……」

 キリナは無言で構えを解いた。

 周りがほっとすると同時に、驚愕する。キリナが損得無しで相手の言うことを聞くとは思えなかったからだ。

「ホントに今度相手してくれるんだよね」

「勿論♪」

 ……ちゃんと損得あった。

「ただしだ。周りに迷惑がかからない状況でやること! いいな」

「……解った」

 間が気になるが、とりあえず納得したらしい。

「助かったよ、時雨ちゃんー」

「なっさけねぇ声だなぁ」

 雪彦が胸を撫で下ろすと、時雨はふはっと笑った。

「時雨先パァイ! 聞いてくださいよっ」

 いつの間にか鷹雄が復活していた。時雨に泣き付いている。

 実はこの二人、仲がよかったりするのだ。

「キリナさんが……何も顔面狙わなくても……うぅっ」

 赤くなった顔を押さえ、嘆く鷹雄。そんな彼を、時雨は慰めにかかった。

「落ち込むなって。男だったら泣くんじゃねぇよ。ボールの一つや二つ、受け止められねぇでどうする。ん?」

 口調の割に優しく鷹雄の頭を撫でる時雨に、男子のテンションがやたら上がった。

「鮫島先輩! 俺の頭も撫でてくださいっ」

「いや、俺! さっき月陰の攻撃喰らっちまって」

「おまえ無傷じゃねぇか! 俺なんてボールかすめたぞ」

「鮫島先輩、ほっぺでもいいんでキスを!」


『何抜けがけしてんだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』


 いきりたつ野郎共に、時雨はのんびりと「お、元気いいな」などと言っている。

(何かこのパターン……前にもあったような……)

 雪彦が首を傾げていると、時雨の背後から手が伸びてきた。

 その手は時雨の肩を掴むと、ぐいっと引っ張る。

「あっ。十間!」

 手の持ち主は、十間秋人だった。

 思わず声を上げた雪彦を、なぜかもの凄い形相で睨んでくる。自分だけでなく、中等部の生徒まで。

 その目ときたら視殺できるんじゃないかという感じで、その場の全員(キリナと時雨除く)凍り付く。特に鷹雄に向ける目が憎悪に満ち溢れている。

 ひときしり睨んだ後、時雨を見下ろした。

「てめぇ、何他の奴に色目使ってんだ」

「ハァ!? んなことやってねぇよ」

「うるせぇ。とにかく帰るぞ」

「? おう」

 踵を返す秋人に首を傾げながらも「じゃ、また今度!」と手を振って時雨は去っていった。

「……あ、思い出した」

 雪彦はぽつんと呟いた。

 確か前にも、時雨が仲のいい男友達と話していた時、秋人が間に入って彼女を連れ去っていた。

(あの行動……やっぱあの二人、付き合ってんのかな)

 雪彦は首を傾げながらも、このぐだぐたな空気をまとめるために口を開いた。


 春の球技大会。

 とりあえず、終了。






 更新遅れてすみませんでした。

 しかも時間かけたくせに最後ぐだぐだ……ちゃんと書きたかったんですが、実力不足です……

 感想などお待ちしてます!


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