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プロローグ

 城に反乱の悲鳴と剣の音が響き渡る。


 

「ハァハァ……」

「お急ぎください!父上、母上!!出口はすぐそこです!」



 皇帝・皇后・皇子の三人は、皇族だけが知る緊急時の通路をわずかな護衛を連れて走っていた。


 やっとのことで辿り着いた出口の先。剣を持って待ち構えている者達がいた。


 

「……テオドア? なぜ、君がここに……?」



 城で反逆者達と戦っているはずの騎士団長であるテオドアが、こんな所にいるはずがない。

 皇子の瞳はそう物語っている。



「よくここまで来た!我々を反逆者達から守ってくれ!!」



 皇帝は仰々しく手を大きく開き、テオドアの登場を歓迎する。


 驚く皇子と皇帝を無視して、テオドアは皇子の後ろに立つ護衛を見た。



「ご苦労だった」

「ハッ」


 テオドアの言葉に、皇族をここまで守っていた護衛達はテオドアの後ろへと整列した。


 守るべき皇族から離れる護衛達に、皇子は全てを理解した。

 


「全てお前の仕業なのか?」

「皇子殿下。私の大切な人がそう望まれたからです」

「大切な人??……っまさか!!」

「あの方が幸せになるためには、あなたは必要ない」



 テオドアは刃の切っ先を躊躇うことなく、皇子へと向けた。


「テオドア、やめてくれ!!僕と君の仲じゃないか!!」



幼馴染として、かつて護衛していた皇子の懇願にも、テオドアは冷たい目を向けた。

 皇子が少しでも変な動きをすれば、切り捨てる。一触即発の空気に、清らかな声が割って入る。

 


「無様な姿ですね……。皇子殿下」



 騎士たちの列の奥――そこからゆっくりと現れたのは、国を繁栄に導くために召喚された聖女だった。



「……ハル? 君……どうして、ここに……?」

「テオドア様ありがとうございます」


 

 皇子の言葉を無視して、ハルと呼ばれた聖女は皇子へと刃を向けるテオドアの腕に触れ、腕を下ろさせた。


 聖女は前に出ると、沈黙する皇帝へと視線を向けた。


「陛下に聞きたいことがあります」


「私は……、何番目ですか?」



 聖女――ハルの言葉に皇帝は口角を吊り上げて、不気味な笑顔を浮かべた。


――――


 私はこの世界に国を繁栄へと導く聖女として召喚されてから、あらゆることを学んだ。

 帝国と聖女の関係もその時に学んだ。


 帝国に聖女が召喚される周期は、他の国に比べて変則的だった。


 他の国では、聖女が命を落とせば、十年以内には次の聖女が召喚される。

 

 けれど、この帝国では……数年で召喚されたこともあれば、数十年経っても現れないことがある。


 それでも、帝国の聖女は常に“強い力”を持っていた。


 不思議に思った私は、城の地下にある“あるもの”を発見した。


 城の地下にある聖女の紋が刻まれた棺達。

 眠っているのは、“選ばれなかった聖女たち”。


 私はある仮定に辿り着いた。

 帝国が聖女を選別していたら?


 この身体は金髪碧眼で、元の私の身体の黒髪に茶色い目とは程遠い容姿をしている。


 辿り着いた答えは、帝国が禁忌を犯しているということ。

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