表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺って詐欺師向き?デタラメ言ってたらハーレムできたんだけど?  作者: 五平
第1部:聖女の羞恥とデタラメな誓い
8/24

第8話 聖女の秘密と揺れる心、そして剣さんの静かな見守り

~今日のでたらめは「秘密を共有すると絆が深まる」ってやつ?~


聖女リリアーナの嫉妬は、

俺の魔力を爆発的に増幅させた。

おかげで魔族との戦闘は、

以前よりも格段に楽になったぜ。

リリアーナはまだ、

自分が嫉妬していたことを認めたがらないが、

その行動や視線は、俺を意識しまくっている。

心拍数は常に高め、羞恥値も居心地悪そうに揺れていた。

可愛いな、ホント。


俺たちは次の街への道を進んでいた。

その日の夜、野営することになったんだ。

焚き火を囲んで、

俺とリリアーナ、そして剣さんが座っていた。

剣さんは俺の魔力の光で、

静かに揺らめき、パチパチと瞬いている。

リリアーナは、疲れたように火を見つめている。

その表情には、昼間の気丈さはなく、

どこか物憂げな影が差していた。

その白い頬に、焚き火のオレンジ色の光が

優しく揺れている。


「聖女様、なんか元気ねぇな。

疲れたか?無理してないか?」

俺は優しく声をかけた。

彼女はハッとしたように顔を上げ、

慌てて笑顔を作ろうとする。

「い、いえ!そんなことはありませんわ!

わたくしは聖女ですから、この程度の疲労、

どうということもありませんわ!っ」

だが、その声はどこか力なく、

無理をしているのが明らかだった。

その瞳の奥には、何か隠しているような

不安と悲しみが垣間見えた。

聖女としての責任感、そして完璧であろうとする

彼女の心の重さが、俺には痛いほど伝わってきた。


(あぁ、また無理してるな……)

彼女はいつもそうだった。

聖女として、常に完璧であろうとする。

弱さを見せまいと必死だ。

だが、その完璧であろうとする強さが、

逆に彼女を孤独に追い込んでいるように見えた。

その孤独が、彼女の心を

蝕んでいるのがわかる。


俺は少し考えた。

どうすれば、彼女の心の壁を崩せるだろうか。

俺は焚き火の枝を一本拾い、

静かに火の中へとくべる。

パチッ、と火花が散った。


「なあ、聖女様ってさ、

聖職者であることに、すごくこだわりがあるんだろ?」

俺はあえて、直球で切り出した。

彼女の聖女としての誇り、

その根源に触れる言葉だった。


リリアーナの体が、ピクッと震えた。

その瞳が、大きく見開かれる。

そして、一瞬にして、警戒の色が宿った。

心拍数は跳ね上がり、羞恥値が赤色に点滅する。

「なっ……な、何を、突然……っ!

そ、そのような個人的なこと……」

声が上擦っている。

明らかに動揺している。

図星だな。


「いや、だって、いつも『聖女だから』って言うじゃん。

清廉潔白でなきゃいけない、

とか、聖なる力を使わなきゃいけない、とか。

そういうの、なんか、

すごく自分を律してるなって思ってさ。

その分、一人で抱え込んでることも多いだろ?」

俺は、まっすぐ彼女の目を見て言った。

彼女の抱える、

その聖職者としての重圧に、少しだけ触れてみた。

彼女の心の奥深くに隠された、

秘めたる感情に、そっと手を伸ばすように。


リリアーナは、俺の言葉に、

言葉を詰まらせた。

その瞳は、俺の視線から逃れようと、

忙しなく揺れている。

白い頬が、さらに赤みを帯びた。

「それは……聖女として、当然の務めですわ……」

そう言いながらも、

その表情は苦しそうだった。

彼女の口から出る言葉と、

心の奥底にある本音の乖離。

それが、俺には手に取るようにわかる。


俺は剣さんをそっと撫でる。

剣さんは俺の手に触れられ、

満足げに光を揺らしている。

「聖女様も人間なんだろ?

完璧じゃなくてもいいんだぜ。

誰だって、弱音を吐くことはある。

俺は、どんなお前でも、受け止めるからさ。

お前の全てを、な」

俺はあえて、優しく、

そして少しだけ踏み込んだ言葉を紡ぐ。

その言葉には、彼女の心の壁を

少しでも溶かしたい、という俺の願いが込められていた。


リリアーナの肩が、微かに震えた。

彼女は、内心、俺にその秘密や過去を

知られることを恐れているのだろう。

聖女としての過去の過ちや、

誰にも言えない苦悩が、

彼女の中に澱のように溜まっているのかもしれない。

だが、同時に、彼になら打ち明けたい、

という気持ちも芽生え始めているのが、

俺には手に取るようにわかった。

その心の揺れ動きが、

魔力となって俺に伝わってくる。

心拍数は平時の1.8倍、羞恥値はオレンジ。

だが、その羞恥の中には、

信頼という新たな感情が混じり始めている。


その間、剣さんは、

二人の間に漂う緊張感や親密な雰囲気を

察するかのように、

静かに俺の傍で光を放っていた。

その光は、まるで二人の会話を

「見守る」かのように、優しく、

そして意味深に揺らめいている。

時に、リリアーナの顔を、

時に俺の顔を、

交互に照らすように光を揺らす。

剣さんの存在が、リリアーナにとって、

どこか安心感を与えているようだった。

聖女が視線を剣さんに向け、

僅かに口元を緩める。


「聖女様……俺たちは、仲間だろ?

それだけじゃない、だろ?

秘密を共有すると、絆が深まるんだぜ?

本当の仲間になれるんだ」

俺はまた、デタラメをぶっこんだ。

もちろん、彼女の心を開かせるための、

優しい詐欺だ。

「俺は、お前の全てを受け入れる覚悟がある。

だから、お前の心も、俺に預けてくれよ」

俺は、彼女の手をそっと握ろうとした。


リリアーナは、俺の言葉に、

ゆっくりと顔を上げた。

その瞳は、まだ潤んでいたが、

さっきまでの警戒の色は薄れ、

わずかながらも信頼が宿っていた。

彼女の白い肌が、焚き火の光に照らされ、

微かに揺れる。

「……き、絆が……深まる……?」

彼女は、その言葉を反芻するように呟いた。

羞恥値はさらに下がり、信頼値が上昇。

俺に握られた手のひらが、

ほんのり温かくなった気がした。


(よし、一歩前進だ!)

俺は内心でほくそ笑む。

聖女の秘めたる心に触れる瞬間は、

もうすぐそこまで来ている。

彼女の心の奥に眠る真実に、

俺は確かに手を伸ばしている。

これが、運命のデタラメ理論だ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ