第5話 聖女のデレと料理の誘惑、そして剣さんの食欲?
~今日のでたらめは「おむねプリン」?~
翌朝、宿の食堂は朝の光に満ちていた。
リリアーナは窓際の席に座り、
淹れたての紅茶を一口含んだ。
まだ頬にはうっすらと赤みが残っていたが、
いつもよりずっと落ち着いているように見えた。
昨夜の「お風呂デタラメ理論」が、
しっかり彼女の心に作用したようだ。
心拍数は平時の1.1倍、羞恥値は薄い黄色。
少しずつ、俺へのデレが顔を出し始めている。
これは、かなり良い傾向だ。
「勇者様、魔力は……その、回復されましたか?」
リリアーナが、ちらりと俺の顔を伺う。
その視線には、かすかな期待と、
それでいて少しの照れが混じっていた。
「ああ、聖女様のお陰でバッチリだぜ!
おかげで、最高の料理のインスピレーションが
脳内に降り注いできたな!」
俺は満面の笑みで言い放った。
もちろん、デタラメだけどな。
「りょ、料理のインスピレーション……?」
リリアーナは眉をひそめ、首を傾げた。
その仕草すら、俺には愛おしく見える。
「そうだ!今日は聖女様のために、
特別な朝食を作ってやるよ。
とっておきの、とびきり甘い奴をな!」
俺は意気揚々と立ち上がった。
俺が料理をすると知って、
リリアーナは「えっ……!?」と驚いた顔をする。
だが、その瞳の奥には、
どこか好奇心と、嬉しそうな光が揺れていた。
その表情の変化に、俺は心の中で小さくガッツポーズ。
可愛いな、聖女様!
俺は宿の調理場へと向かった。
扉を開けると、そこは早朝から
宿の従業員が忙しなく立ち働いている。
(よし、聖女様の冷たく柔らかいおむねをイメージして……)
俺は脳内で、リリアーナの美しい胸の輪郭を思い浮かべた。
その滑らかな肌の感触、ひんやりとした触れ心地。
すると、アイテムボックスからプリンの材料、
新鮮な卵と、濃厚な牛乳、上質な砂糖、
そして純白の生クリームが浮かび上がってきた。
「シュポンッ!キラーン!」
よし、ちゃんとイメージ通りの材料が出てきたな!
完璧だぜ。
俺は手際よく、プリンの生地を混ぜ合わせる。
滑らかになるまで、丁寧に、心を込めて。
そして、小さな耐熱容器にそれを流し込み、
湯煎にかけ、じっくりと蒸し器で加熱していく。
数分後、透明な蓋の向こうで、
生地がゆっくりと固まっていくのが見えた。
(よし、いい感じだ……)
完璧な火加減で蒸し上がったプリンは、
熱気を帯びながらも、ひんやりとした感触を予感させる。
粗熱を取り、冷蔵庫でしっかりと冷やす。
この待つ時間が、またたまらないんだよな。
完全に冷え固まったプリンは、
まるで聖女の肌のようにプルプルと揺れていた。
その質感に、俺は思わず頬が緩む。
仕上げだ。俺は純白のホイップクリームを、
惜しみなくプリンの上にたっぷりと盛った。
(聖女様の白くて甘い肌をイメージして……)
クリームがプリンの上に、まるで雪のように積もっていく。
そして、そのクリームの上に、
真っ赤なベリーをちょこんと一つ乗せる。
聖女の心臓のドキドキ、羞恥心の象徴だ。
「ひんやりプリン(おむね)+ベリー1粒+クリームたっぷり」の完成だ。
見た目も、味も、そして「えちち度」も、最高だぜ!
俺はそれを、食堂で待つリリアーナの前に差し出した。
白い陶器の器に盛られた、
揺れるようなプリンと、真っ白なクリーム、
そして鮮やかな赤いベリー。
「さあ、聖女様、召し上がれ!」
リリアーナは目の前のプリンを見て、固まった。
その青い瞳が、大きく見開かれる。
そして、みるみるうちに顔が真っ赤に染まっていく。
「なっ……ななななな……」
心拍数は平時の2.3倍、羞恥値は赤色。
完全に俺の意図を察したな。
この反応、たまらないぜ!
「な、なんでこんな……クリーム……多いのよ……っ」
彼女は震える声で呟いた。
顔は真っ赤なのに、
視線はプリンから一瞬も離れない。
その視線が、まるで俺の意図を
全て見透かしているかのように感じられた。
「ははっ、俺の愛情表現ってやつだ!
多ければ多いほど、俺の愛が詰まってるってことだよ!」
俺は悪びれもせずに言い放つ。
リリアーナの顔が、さらに赤く、耳まで真っ赤になった。
リリアーナは、ためらいがちにスプーンを手に取った。
その手は小刻みに震えている。
そして、恐る恐る、プルプルと揺れるプリンを一口食べる。
「んぐっ……!?」
その瞬間、彼女の瞳が大きく見開かれた。
目に見えて分かるほど、その体がビクッと跳ねる。
口いっぱいに広がる、ひんやりとした甘さ。
そして、舌の上でとろけるような滑らかな感触。
「お、美味しい……」
小声でそう呟くと、
彼女の頬は、さらに深く赤く染まった。
まるで、プリンの甘さと、俺の込められた意図が、
聖女の心を絡め取り、羞恥と快感に震えているかのようだ。
その間、剣さんがひょいっと俺の傍に現れた。
俺の魔力から実体化した光の剣は、
俺の傍でゆらゆらと光り、
リリアーナがプリンを食べる様子をじっと見つめている。
剣さんの光は、まるで「うまそう!」とでも言いたげに、
ぴょんぴょんと跳ねているように見えた。
その光の動きは、まるで口元を拭っているかのようにさえ見える。
リリアーナがプリンを食べ終える。
器は綺麗に空になっていた。
「ご、ごちそうさまでした……」
そう言って、視線をそらす。
まだ顔は真っ赤だ。
剣さんは満足げに光を揺らし、
まるで「傑作だ!」と俺を褒め称えるかのようだ。
その様子を見たリリアーナは、
「剣さんまで……!?」
と恥ずかしそうに顔を覆った。
剣さんの存在が、彼女の羞恥心をさらに煽る。
俺は椅子に座り直し、リリアーナの潤んだ瞳を覗き込む。
そして、自然な口調で、甘く囁いた。
「可愛すぎて我慢できねぇな…」
リリアーナの肩がピクッと震え、
顔がさらに赤くなる。
心拍数は再び跳ね上がり、羞恥値は最高潮の赤色。
「なっ……へ、変態……!」
口ではそう言いながらも、
その瞳の奥には、どこか嬉しそうな光が宿っていた。
その反応に、俺の胸は高鳴る。
よし、聖女のデレと羞恥の快感変換、
俺の「おむねプリン」は大成功だ!
これが、運命のデタラメ理論だ!