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2-6 想い出のウサギ

前話を読んで下さった方に感謝です

今話も引き続き温かい目で目を通していただけると嬉しいです

 新入生歓迎登山を翌日に控えた夜。

 自分の勉強部屋で、机の向こう側、窓の外に広がる夜空をボーッと眺めていると…… (行った事ないなぁ……お母さんは行った事あるのかなぁ……) ふと、神尾渓谷の事が気になりだすひむか。 

 「お母さん、ちょっとい~~い?」 ひむかは部屋を出てリビングを横切り、対角線上に位置する明美の書斎の前に立ち、ドアをノックする。

 「はーーい! どうぞ、ひむか」 ひむかが入ると、 明美は窓の前に(しつら)えられた、高級感漂う机で読書をしていた。

 「お母さん、神尾渓谷って行った事、ある? 明日、学校の行事で行くところなんだけど……」

 「もちろん! だって、お母さんも古河(ふるかわ)高校に通ってたんだもん。 歓迎登山に神尾渓谷……そこはお母さんの頃と変わってないのね~~、懐かしいなぁ~~」 明美は椅子の向きをひむかの方へ変え、昔を懐かしむように回想している。

 「そう言えば、お母さんの高校、初めて聞いたよ。 ずーーっと同じ家に住んでるんだもんね。 そりゃ、そうか」 ひむかは自分の頭をちょんとたたいて納得している。

 「お母さん、あの場所にはちょっとした想い出があるの。 聞きたい?」

 (なんか、身体が前のめりになってるよ?! 聞いて欲しいオーラ満開だよ、あはは) 明美の期待に応えるべく、 「うん! 聞きたい」 とちょっとだけ前のめりの姿勢をとるひむか。

 「じゃぁ……高校のあの時以来行ってないから、今もあるかは知らないけど……黄色いポストの近くに、お土産屋さんがあったの」 昔のことを思い出そうと、視線を左上に泳がせながら話す明美。

 「友達が()()()()から戻ってくるのを待とうと、そのお土産屋さんの奥にあるログハウス調の建物に入ったら……」

 「入ったら?」 ついつい、明美の話術につられるひむか。

 「突き当りに、かわいくデフォルメされたウサギのオブジェがあったの!! きゃ~~!!」 

 「きゃ~~!!」 親子揃って、テンションMAX。

 「もう、頭から身体から撫でまくっちゃったよ。 それが一番の想い出……あははーっ!!」

 (お母さんに聞くんじゃなかった……撤退しよ) 結局、役に立つ情報は得られず。

 「ありがとう、お母さん……明日、見に行ってみるよ、ウサギのオブジェが今もいるかどうか」 と言い残し、ドアに向かうひむか。

 「あれっ?! 友達って誰だったっけ? ん?! どんな顔だったっけ……」 何か、ぶつぶつ独り言をつぶやいている明美を尻目に、そっと書斎のドアを閉める。


 翌朝、ひむかは6時に目を覚ます。

 日の出から30分……窓の向こうから、穏やかな光を届けてくれている……目覚めはバッチリ。

 今日は制服ではなく、ジャージに着替えて、寝室を後にする。

 「お母さん、おはよーー! 今日は登山、頑張ってくるよ!」

 「しっかり朝ごはん、食べていってね。 ちゃんと食べないと、ガス欠でたどり着けないかもよ」

 「お母さ~~ん、大げさな事言って……びびっちゃうよ」 明美流の励ましに、ひむかはおどけて答える。

 明美特製モーニングセットを平らげ、弁当と水筒をリュックに入れて、玄関に立つひむか。

 「朝ごはんもだけど、お弁当も作ってくれて……お母さん、ひむかのために、すごく早起きして頑張ってくれたんだよね。 その気持ちに応えて、頑張って登ってくるよ」

 「頑張ってきてね、ひむか。 じゃぁ、いつもの朝の儀式、やりますか!!」 


 途中、ひいかと合流し、学校に着く頃には辺りはすっかり明るくなり、春のそよ風が心地よく身体を吹き抜けていく。

 保体委員の事前指示通り、直接、集合場所の運動場に向かう。

 「いい天気だね~~。 絶好の登山日和だよ」 腰に手を当てて、少し反り気味に空を見上げながら、ひむかがつぶやく。

 「うん。 でも、ひいか、ちゃんとたどり着けるかな……途中でギブアップしないかなぁ……」 ちょっと悩みかけているひいかに対して、 「大丈夫、大丈夫。 歓迎する側の立場に立って考えたら、そんな無茶なところ、選ぶはずないよ」 と、よく分からない理論を展開して緊張をほぐそうとするひむか。

 「それもそっかぁ~~。 歓迎会、だもんね。 しごき会、じゃないもんね」 ま、効果はあったようだ。

 「みんな、揃ってるね。 はい、こっち注目!!」 冴先生がマイク無しで声を張り上げる。

 「1年生が出発した後、遅れて2年生、3年生が出発します。 歩くペースがあまり遅いと、先輩たちのペースを乱すことになるから。 しっかりまとまって、()()()()歩きましょう」

 「えぇ~~っ。 やっぱ、しごき会だよ~~」 ひいかの反応に、クラスメイトたちから笑いが起こる。

 「今日はこの行事のために、神尾渓谷は一般観光客の立入が制限されてるそうだ。 人混みに煩わされることなく、思う存分、自然を感じながら歩けるな。 じゃ、出発するぞ!」 そう気合いを入れたきゆりが1年生を先導し、最後尾には冴先生がバックアップしながら詰め……いよいよ登山が始まる。

今回はコミカルな会話を書く練習をしました。

親子の仲の良さを上手く表現できてるでしょうか。

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