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5-13 ラスボスⅢ

前話を読んで下さった方に感謝です

今話も引き続き温かい目で目を通していただけると嬉しいです

 [神になった直後の話より先に、貴女に話しておきたい事があるのです。 五芒転生の秘術を応用し、五次元の世界でこうして顔を合わせる為に貴女に課した制約についてです]

 ((さっき解いてもらった検閲の呪法と、前代日向に先んじて話し掛けるのを禁ずる呪法だよね))

 [そうです。 現世の日向の行動に影響を及ぼすのは前代の日向に委ね、貴女にはひたすら傍観者になってもらう。 さきほど解いた二つの呪法は、数々の世界線で経験的に得た解決法を繋ぎ合わせ、いとも容易く転生の輪廻から抜けられるのを防ぐための足枷(あしかせ)。 貴女の経験と思慮を豊かにし、十分な成長を促す為に課したもの]

 ((その足枷のために私、何度も何度も心を痛めつけられた……何て思いやりのないやり方なの……))

 [過酷な時間の旅になってしまった事を、心から詫びます。 しかし貴女は、些細な物事ではぶれない心の強さを、その体験から得たのです]

 ((運命を捻じ曲げられ、翻弄された私の人生……心が強くなったのは確かかもしれないけど……))

 [貴女の成長を促す為に転生システムの構築を検討した結果、神社が寄贈したウサギのオブジェを安置している神尾渓谷の休憩所が、世界線的にも、時空的にも一番親和性が高い事が分かったのです。 そこで因果律を調整し、そこに貴女が死後、転生するように設定しました。 言い換えれば、セーブポイントのようなものです]

 ((なるほど……それで毎回、その時空からリスタートしてたんだね))

 [システムの核である星月の体内で、前代の日向との共存が始まった貴女は、経験的に得た解決法を繋ぎ合わせてアドバイスする事を封じられ、ただただ傍観者として輪廻を繰り返す事になりました。 私は生前の私物を適切な場所に再配置し、貴女の到着をここで待ちました。 しかし、当初数回は、長森島にすら辿り着けない……その様子を見た私は、前代の日向にひらめきを与えるヒントが少な過ぎると感じたのです]

 ((それで、試練を乗り越えさせる素因を持つ人々の名前を、途中の世界線から、目立ちにくい漢字から目立ちやすい平仮名に変えてみたり、それらの人々が、長森島に渡るのに必要なスキルを日向に与え、役目を終えたタイミングで地震を起こしてみたり、日向が死を迎える直前に7体の石像を出現させ、地震の回数分、後ろを向かせたりしたんだね))

 [さすがに貴女は気付いたのですね、それらの事に。 さぞかし、前代の日向に伝えられなくて、もどかしく思った事でしょう]

 ((一つ言わせてもらうけど、何度も経験させられる私ならともかく、一度しかチャンスがない前代の日向に、地震とか石像とかの意味を検討させるのは無理があるでしょ。 教えたくても呪法で封じられるし))

 [確かにそうですね……今更ですけど、ヒントの構築が甘かった事を認め、お詫びします。 他にも、生前の私の浦安舞を舞う姿を日向の本能に伝承し、舞を観る事によってそれが呼び起こされ、通常の数倍の速度で習得できる能力も、因果律の操作で与えたものなのです]

 ((なるほど、それで歴代の日向が皆、初見で踊れそうな気がするって言ってたのか。 習得の速さもあり得なかったし、上達後の動きも申し分ないレベルだった……自分にも同じ能力が備わってたとはいえ、そこまでは勘づけなかったよ))


 [では、神になった直後の話に移りましょう。 自然界の様々な雑念を受け入れ、そのコアとなった私は神となり、雑念の集まりは思考を得る事になりました。 ここ五次元の世界から、その能力で様々な世界線の、様々な時空の地球の姿を見て回りました。 すると未来では、自然界の節度を超えた人間の生命活動が気候を狂わせ、環境を破壊して、空、陸、海……あらゆる場所の生態系を荒らし、地球に息づく他の生命体の悲鳴が聞こえてくるほどの、心苦しくなる光景が展開されていました。 それを見た時、怨念側からの視点で、人間を恨む気持ちへとすり替えつつも完全には割り切れていなかった私の迷いが晴れ、強く決心したのです。 諸悪の根源である人間を滅ぼし、傷めつけられた地球や、他の生命体を解放しようと]

 ((それが貴女が願った()()……。 確かに、私の知る限りでも、人間以外の生命体の多くが、人間の生命活動の巻き添えになった、っていう見方は否定できない。 人間は、他の生命体が遠く及ばない、知恵という優れた武器を使って、自分たちに都合の良い世界を作り上げていった。 だけど、例えば、鳥は空を飛べる能力を、魚は水中で活動できる能力を持ってるのと同様に、人間が知恵という能力を生かして種族の繫栄を目指す事自体は、自然の摂理に叶ってるんじゃないのかなぁ。 節度を超えてる、って判断できるのも、人間が知恵を持ってるからで、それを持たない他の生命体の視点から見たところで、そう判断する事はできないし、当然、批判もできないはず。 そもそも、貴女が語った最初のきっかけって、夢の中の話でしょ? 夢を見るのも人間特有じゃない? 貴女の一方的な思い込みが、そこに思い至るような知恵を持たない他の生命体が人間の生命活動によって存在を脅かされてる、っていうストーリーを生んだんじゃないのかな))

 [なるほど……気候を狂わせているとか、環境を破壊しているとかという判断ができる事自体が、知恵という能力を持った人間にしかできない、と言いたいのですね。 他の生命体がそのような事を考え、主張する事などあり得ないと]

 ((そう。 貴女は、予期せぬ最愛の人の死を目の当たりにして、心への衝撃を何とか和らげようと、深層心理で解釈を捻じ曲げ、自分に言い聞かせようとしたんじゃないのかな))

 [うむ……ではあの日、私が見た夢は、心が破綻しないように起こした防衛反応だと、そう言いたいのですか]

 ((おそらく。 普段の貴女なら、そんな妄想なんて浮かびもしなかったと思う。 でも、貴女は自分に言い聞かせるための拠りどころが欲しかった……それで、自然界の怨念だと思い込んだ思念体にそこを付けこまれ、心を蝕まれる事になった……))

 [妄想……そこまで否定するとは……冷静さを失ったところを突かれて、私は自我を失ったと、そう言うのですね]

 ((ええ。 結局、貴女は強い喪失感を上手く散らす事ができず、打ちのめされた。 そして、そのまま人類を……))

 [滅ぼす事を決心したのです。 ただ、間髪入れずに殲滅するのではなく、時間の猶予を与えてじわじわと追いつめていこう……無名神を形作っている思念体は、その方針に大いに喜びました]

 ((滅ぼすって決めたなら、一刻も早く実行に移して被害の拡大を食い止める方が、自分や思念体にとってより最適な選択じゃない? でも貴女は時間を与えた……そこには迷いがあったんじゃない? そこに猶予を作って、娘が何時か自分を止めに入ってくれる事を期待して……))

 [うぐぐ……貴女の言う事は理にかなっています。 私の覚悟は揺るぎないものだったはずなのに、深層心理では迷いを振り切れていなかった……]

 ((そうよ。 そもそも貴女は生前、私宛の手紙を書き遺した時点で既に迷ってたんだもん。 論破される事を願ってたんだから))

 [ああ……日向よ……やはり貴女は私の望み通りに……。 結局、人間を滅ぼす事を決心した私は、手段として遅効性の、子孫を残せなくなる呪詛を力が及ぶ範囲にかける事にしたのです。 人間に認知されていないからこそ、神性を制限される事無く、人間に強い裁きを与えられる……心を鬼にして決めたのです]

 ((ああ、なるほど! それで、貴女の力が及ぶ範囲内では子供が産まれなくなった、って訳ね。 私が産まれた16年前の5月31日より後には、誰も……あの誕生日会の時に違和感を感じたのは、そういう事だったのか。 何て鬼の所業を……))

 [呪詛をかける直前に、数々の世界線を覗き、一つ誤算に気付いたのです。 それは、貴女にとって最も重要なパートナーになるはずの火雷の誕生が、貴女よりも後だった事。 そのままかけてしまっては産まれなくなり、世界線は私の思惑から外れたものになってしまう……そこで私は夢を使って火雷の母親に神託を与え、出産予定日を日向より前に繰り上げたのです]

 ((火雷まで、本来の運命を捻じ曲げられてたなんて……色んな人々の因果律を改ざんしてまで、この場を作り上げるお膳立てをした……それはもう、力の濫用(らんよう)だわ……))

 [力の濫用……むむむ……確かに、火雷には過酷な定めを与えてしまいました。 しかし、貴女との絆が結果的に強まる事になったのです]

 ((今、それを怪我の功名だ、なんて考えてないでしょうね! 因果律の書き換え……貴女はさっき、人間の生命活動を自然界の節度を超えたもの、って批判したけど、貴女がやった事はそれを遥かに超える、自然の摂理に反した、到底許されないもの。 決めた! 助力で支えてもらい、情の深さで背中を押してくれた皆の為にも、貴女を必ず論破する!!))

これで物語に潜ませた、全ての伏線を回収できたはず、と思ってます。

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