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5-12 ラスボスⅡ

前話を読んで下さった方に感謝です

今話も引き続き温かい目で目を通していただけると嬉しいです

 [私が神になるに至った経緯をお話ししましょう。 月宮神社で宮司の父、禰宜(ねぎ)の母の間に生まれた私は、物心つく前から自宅が神社という特殊な環境で育ったため、将来は神職に就く事を運命付けられたようなものでした]

 「ちょ、ちょっと待って。 のっけから確認したい事があるんだけど、月宮神社の宮司って、あづちさん、なの?」

 [その通りです。 父は安土です]

 それを聞いた現世の日向は、驚きで言葉を失っている。

 ((おおよそ予想はついてたけど、やっぱり……。 とは言え、彼は娘の存在について、一度も口にした事が無いどころか、記憶にすら無いみたいだけど……))

 [それは、ある因果によるもので、話を進めるうちに明かします。 二人の毎日のお勤めを見て、小さいながらも出来る事は手伝い、自然に心構えというか、将来に対する覚悟も芽生えてきました。 そんな中、小学校を卒業する頃に、母を病気で亡くしました]

 「可哀想……まだまだ甘えたい年頃なのに……同情するよ」

 [それを機に、一人娘である私は、母の跡を継ごうと決心し、神職の親が亡くなったという事で、特例で本職巫女になりました。 とは言え、学校がある間は学業を優先しました。 その分、普段から恥ずかしくない立ち振る舞いを心掛けようと心に決めました。 その頃あたりからです、父に門外不出の資料を見せてもらうようになったのは]

 「その年齢で……覚悟を決め、並々ならぬ努力をされたんだね。 強いなぁ」 

 ((仕事に生真面目な父も、娘には甘かったって事かな。 それとも将来、自分の跡継ぎになると見込んでの事、なのかな……))

 [両方かもしれませんね。 様々な知識を身に付けて、立派な神職者を目指さなければ、という気持ちで、学校の勉強との両立は大変でしたが、夢中になって読み漁りました。 そんな生活を送っていたものだから、学校では少し浮いた存在になってしまい……それでも、不満は無かったのです]

 「青春の全てを、そこに費やした、って事? それって、充実してたでしょうけど、寂しさを感じるよ」

 [高校を卒業すると、神職の資格試験の勉強に集中して頑張り、直階の階位に合格しました。 父の計らいで、特例で月宮神社の禰宜になったのです。 母の跡を継げて、凄く嬉しく思いました。 そして、それから間もなく、見合いで出会った神職経験者の男性と結婚し、婿養子として迎え入れました]

 「本当に努力家だったんだね。 その姿勢には心から尊敬できるよ。 でも、全力で突き進んで、凄く人生を急いでる、そんな感じがするなぁ」

 [その頃はただただ、がむしゃらでした。 その後、順調に夫との子供を身籠り、全てが順風満帆(じゅんぷうまんぱん)だったのですが、そんなある日、事件が起こったのです]

 「事件?」

 [その日、夫は奥宮がある長森島ヘ、お勤めを果たしに向かいました。 しかし、いくら待っても帰って来ませんでした。 翌日、父と私が長森島に渡って夫を捜索したところ、山の中腹で、両腕と両脚にツタが絡まり、熊に襲われたのか、全身を引っかかれ、噛みつかれた姿で亡くなっていました。 小さな頃から同じ参道を何百回と通った私も、何千回と通った父も、獣に出くわした事すらなかったのに]

 「凄く不幸な事件……無名神さまの心中、痛まし過ぎて想像できないよ」

 ((奥宮、長森島……その頃は現存してたのね、この世界に))

 [それについては後ほど語ります。 それからというもの、私は心を病み始めて……ある日、妙にリアルな夢を見ました。 人間の独り善がりな生命活動によって、本来の自然の摂理、つまり弱肉強食ではない理不尽な要因で、次々と存亡の危機に追い込まれていった動物や植物の思念が集まって怨念となり、見せしめとして夫を死に至らしめたのだと]

 「それはあくまで夢の中……それだけで自然界からの復讐(ふくしゅう)を受けたって考えるなんて、短絡的過ぎるよ」

 [冷静な貴女にはそう思えるかもしれませんが、あの頃は冷静さを欠く様々な要因が重なっていたのです。 私は迷う事無く、それを怨念が起こした復讐だと決めつけました。 そうする事で心の安定を図るかのように。 日に日に心の闇は深くなり、モヤッとしたものが心の中に流れ込んでくるような感覚を覚えました。 そしていつの日からか、怨念を恨んでいた気持ちが、人間を恨む気持ちへとすり替わっていったのです]

 「可哀想な無名神さま……あれだけ幸せで充実した日々を送ってたのに……」

 ((つまり、人間側からの視点で怨念を恨んでた気持ちを、怨念側からの視点で人間を恨む気持ちへとすり替えた、って事よね。 夫が殺されたのは自然界の怨念が悪いんじゃなく、自然界に害をもたらした人間が、自然界から怨念を買ったせいだ、というような))

 [その通りです。 巫女は本来、神の意志を受け取り、神託を告げる役割を持っていたと言われます。 私もそれを信じていたのです。 これは神託なんだと。 そして臨月を迎える頃、そのモヤッとしたものと、心の中で契約を交わしたのです。 自然界の怨念は思念体であり、人間に認知されていない不安定な存在だから、私の身を捧げて思念体の核となり、取り込まれて安定した存在にする事を]

 ((なるほど、それが無名神になったいきさつ……自分の身を捧げるのが()()、という訳か))

 [そうです。 その代償の()()()として、お腹の中にいる、愛する夫の忘れ形見……この子が数多くの経験を積んで成長できる環境を作り、何時の日か、私の目の前に、私を咎め得る存在になって現れる事を願ったのです。 秘文書の中に記されていた”五芒転生の秘術”を、お腹にいる我が子に施す事によって]

 ((それが、星月を生み出した、って事か……))

 [そして、自宅に産婆を呼び、日向を無事出産した次の日の早朝、私はこっそりとカヌーで長森島に渡り、奥宮に出向いて、そこで思念体と正式に契約を結んだのです]

 「(((えーーっ!!)))」 3人の日向は同時に驚きの声をあげる。 

 「無名神さまが私のお母さん、って事? そんなはずないよ!! だって、私のお母さんは……お母さんだけだもん!!」

 ((話の途中から、うすうすは勘づいてたけど……本当にそうだったとは……))

 [現世の日向、よく聞きなさい。 私は確かに貴女を産みました。 それはどの世界線でも変わらない真実。 しかし、母親を名乗る資格が無いのは、私が一番承知している事。 ところで、貴女がここにそのウサギのぬいぐるみを持ってくるとは……私の想定を超えた行動でした。 それを見て、生前の懐かしい日々を思い返しました]

 「懐かしい日々……一体、どんな思い出が、このぬいぐるみにはあるって言うの?」

 [それは私が中学生だった頃、何ヶ月も掛けて、大切な親友の為に、神社に祀られている撫でウサギの石像をオマージュして作り上げたもの。 学校で孤独だった私に、いつも彼女は仲良く寄り添ってくれました。 私生活でも、神社にある私の自宅に遊びに来てくれたり、逆に丘の上にある彼女の家に遊びに行ったり……。 そんな彼女に感謝の気持ちを込めて、彼女の誕生日にプレゼントしました。 今でも彼女の大喜びした顔が脳裏に浮かびます。 彼女、ウサギには目がありませんでしたから。 その彼女が……明美が、どの世界線を覗いてみても、日向の母親を願い出るのです。 父に向かって、 『私、この子を育てたい!! 私の手で、私の愛情で、この子を立派に育てたい!!』 と。 これは運命であると。 こういう道を選んだ私に対する、何者かによる強いメッセージであると。 日向、貴女は私の大親友、明美の立派な娘です]

 「そ、そんな……そんな事、嘘だよーー!! お母さんがお母さんじゃなかったなんて、嘘だよーー!!」

 ((日向、落ち着いて思い返してみてほしい。 以前、安土、つまり私たちの祖父と、明美が月宮神社で交わしたやりとりを。 『実は……ひむかさんとも、ほんの小さな頃にお会いした事があるのですよ』 と祖父が言うや否や、 『えっ?! あづちさん、そこまで……』 って、明美が慌てたような反応をした事を。 あの時の前後の会話や、宮司と参拝客の関係にしては凄く親しかった状況を思い返してみると……それと、明美が長年、日向に自宅から月宮神社に続く参道への立入を禁じてた事からしても……そういう事が過去にあった、って事の裏付けになる……私はそう思うんだ))

 「…………」 現世の日向は完全に言葉を失ってしまった。

 [やはり現世の日向には刺激の強い話になりましたか。 貴女と明美の絆は、どの世界線の日向のそれよりも強く結ばれていましたから。 もう冷静な話し合いは出来ないでしょう。 これから先、前代と現世の日向には傍観者となってもらいます。 初代の日向……私が生きたのと同じ世界線の娘よ、これから先は一対一で話し合うとしましょう。 螯ゆス輔↑繧狗匱隧ア繧りィア縺励∪縺帙s !!]

いよいよ日向の出生の秘密を開示しました。

ここから先は、初代日向と無名神との会話のみになります。

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